ふと気がついたら芋虫でした~人智之蟲は人間の夢を見るか~

かわくや

文字の大きさ
8 / 15

呆気ない幕切れ

しおりを挟む
 それから少しして。
 俺は頭を抱えていた。
 その理由は勿論……

イィィィィィ

ドォン

 この爆発に他ならない。

 ……と言うのも、俺が奴の足をへし折った後のことだった。
 奴は攻撃を遠隔主体に切り替え、攻撃の手を一層強めてきたのだ。
 いやまぁ、そりゃそうだろうけど。
 なんせ文字通りに足が潰れたのだ。
 そんな身体で下手に動けば自らの隙を晒すことに直結しかねない。
 それを狼も理解しているからこそ、じっとしたまま、例の音で爆破を仕掛けてくるのだ。

 ……とは言ってみたのだが、結果から言ってしまえば、それはなんら俺の脅威には成り得なかった。
 ……いや、確かに最初こそ危なげなかったが、慣れてさえしまえば割りとどうにかなるものだし、こうも連発されると嫌でもその隙や弱点は見えて来る。
 例えば今回のスキル【単振】の場合、それは発生から爆発までの時間と、その予兆に有る。
 先ず爆発の時間についてだが、どうやらこのスキル。
 使用から爆破までに意外と時間を要する物らしい。
 加えて、一度発動してしまえば途中での爆破位置の変更なども出来ないらしく、一度避けてしまえばなんら脅威には成り得ないのだった。
 次にその予兆について。
 音に関しては言うまでも無いだろうが、実はもう一つ致命的な程に分かりやすい予兆が有ったのだ。
 それが攻撃範囲中での微細な振動である。
 最初こそ、焦りが先走って気付けなかったが、余裕が出てくると、爆破の範囲内は、ビリビリと微かに振動が伝わってくることに気が付いたのだ。
 しかも爆発間際になるほどその振動は強くなるおまけ付き。
 それにさえ気付いてしまえば最早イージーモード。
 この勝負は勝ったも同然……


 とか考えてたんだけどなぁ。

 そう思いつつ奴との距離を跳んで縮めた。
 それと同時に感じる振動。
 それは奴に近付く程大きくなっていき……

 チッ……やっぱ厳しいよなぁ。

 そう判断すると同時に地を尻で弾いて大きく右へ進路をずらした。
 その直後……

ドォン

 爆発音。
 その爆風を背に受けつつ、俺は急ブレーキして奴へと向き直った。
 そこにはしたり顔の様に顔を歪めた狼。
 ……まぁ、俺がそう見えるだけで、さっきとなんら変わってないと言われてしまえばそれまでなのだが。

 まぁ、それはそれとして。

 これが俺が頭を抱える羽目になった原因である。
 ……もっと具体的に言えばこの防御性能。
 狼の周囲に近付くと反応する単振による爆発だ。
 自立式だか能動式だか知らねぇがタイミングが良すぎてやりにくいったらありゃしない。
 コレのせいで奴に近付いて攻撃をする前に撤退せざるを得なくなってしまうのだ。
 最初は爆風の中を突っ切ってでも攻撃してやろうとか考えていたんだが、この爆風と衝撃だとロケットの加速も殺されて俺の一方的な食らい損になり兼ねない。

 そんな訳で安定策を取った結果がこの泥仕合なのだった。

 下手に油断さえしなけりゃ死ぬことは無いとは思うんだが、如何せんこちらも決定打に欠けるのが現状だ。
 こんなときに遠距離スキルの一つでも有れば話は別なんだがなぁ……


【恒常スキル フレム:Lv1を入手しました】

【恒常スキル ロケットはLv3~Lv5へ変化しました】


 …………………ん?
 は?え?ちょっと待てよ。
 何だこのタイミング。
 ロケットはともかくこの【フレム】……
 まさか俺が「欲しい」って思ったからってことなのか?
 ということはこのスキル……

―――――――――――――――――――――――
【フレム:Lv1】
 炎を産みだし、操るスキル。
産み出す量によって消費MPは変動し、操作するのにもMPは必要となる。
 このスキルで産み出す炎には、最大量が有り、それを越えるにはより上位のスキルが必要。
 加えて、Lvによってその火力は変動する。
―――――――――――――――――――――――

 ハイ念願の遠隔攻撃キマシタワー
 やった!これで勝つる!
 勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!

 ……なーんて、これだけで調子に乗る程俺も馬鹿じゃない。
 少女の魔法が目の前で打ち消されてたことくらい、未だ記憶に新しいのだ。
 同じ轍を踏まない為にもこれは奴の気を逸らしてから使うとしよう。
 ……いや、なんなら逆に奴の気を逸らす為にこれを切っても良いのかもしれない。
 確か、アイツの耐性には……有った。

 俺が捲った手記には【炎耐性:Lv-3】の文字。

 そりゃ少女の魔法も消す訳だ。
 炎に対しては他より一層警戒しているのだろう。
 これならば囮としてもこれ以上無い働きが期待できそうだ。
 それにしてもなんでいきなりこんなスキルが……

イィィィィィィ

 ってのは後回しか!……っと

ドォン

 爆破を避け、素早く向き直る。

 確かに気になることには気になるが、今ばっかりはこっち優先だ。
 んなモン、コイツさえ殺せれば幾らでも考えられる。

 とは言え……

「グルルルルル」

 未だ殺しまでの目処が立っていないのもまた事実なのだが……

 うーん、どーすっかな。
 さっきみたく股抜けでもできたら隙を突けそうでは有るんだが……
 今のアイツ腹這いだからなぁ……抜ける隙間すらありゃしないのが現状だ。
 飛び越せればワンチャン有るかもしれないが……実は俺のロケット。
 身体を縮めた反動で真っ直ぐに飛ぶという性質上、上方向には飛びにくいという難点が有るのだ。
 事前に身体を斜めに固定できる小さな坂でも用意出来れば話は変わってくるのだが……少なくともこの辺りには見当たらない。

 ……もしかしなくても現状割りと詰んでるのか?

 そんなことを考えていた時だった。

 パシャ

 突然、脳内に幾つかの情景が浮かんだ。

 狼に近づき、防御用の単振を発動させる俺。
 どこからか飛んでくる火球。
 火を消そうともがく狼にロケットでぶつかる俺。

 ……?
 何だこれ。
 一体どーなってんだ?
 もしかして神の啓示的な何か?
 ……んな、いつも覗かれてる様な気味わりぃスキルねぇよな。

 そう思い手記を捲るがそこに有るのはおおよそ見覚えの有るステータス。
 先ほど増えたフレムとロケットのレベル以外に変化は無いようだった。

 ……うん、そんな奴は無いっぽいな。
 それに関しちゃ一先ず安心だが、だったらこれは……まぁ、良いか。
 とりあえずやってみよう。
 やってみて火球が飛んでくればヨシ!
 飛んでこなけりゃ今しがた思い付いた若干捨て身気味の作戦でも決行するとしよう。

 人間なるようにしかならねぇ……ってな!

 俺は身体を縮め、狼の元へ跳んだ。

 再び感じるピリピリとした振動。
 それは奴に近づく程大きくなり……

 ここらが潮時か。

 再び尻で進路を大きくズラした。
 その直後感じる爆風。
 そこで急ブレーキを掛けようとして、ふと気付いた。

 ……あ?この振動……まさか!?

ィィィ

ドォン

 直後に感じる意識の糸すら弾け飛びそうになる程の衝撃。
 俺はそのか細い糸を必死に掴みながら反省した。

 クッソ!やられた!
 一度見せた回避ルートを辿ったせいで先置きされたんだ!
 多重に発動出来ることにも驚きだが、正直コイツにそこまでの脳は無いと侮っていた。
 なんで僕はいつも、こう……クソッ!
 ……いや、落ち着け。
 とりあえず立て直そう。
 残りは……

HP49/152

 後一発……か。
 ……いや!悲観することはない。
 なんとか立て直して逃げられれば……そうか。
 なに考えてんだ俺は。
 何も戦う必要すら無いんだ。
 元々俺が飛び出してきたのはあの少女を救うため。
 気付けば居なくなっていたところを見る限り、ちゃんと逃げられたのだろう。
 それならば俺がここに居る理由も最早見つからない。
 さっさとこんな場を逃げ出して……

イィィィィィィ

 ッ!クソッ!

 最早聞きなれたその音にその場を離れようとした瞬間、俺はとある音を聞いた。
 それは……

イィィィィィィ


イィィィィィィ イィィィィィィ イィィィィィィ

 イィィィィィィ イィィィィィィ

イィィィィィィ イィィィィィィ イィィィィィィ




 幾重にも鳴り響く破滅の音と……自らの心が折れさる音だった。

 あ……え?

 視界が霞む、体が震える。
 未だかつて無い破壊の規模に心までもが凍りつく。

 あぁ、逃げられないな、これは。

 そんな中でも俺の脳は揺るぎ無い一つの答えを出した。

 爆破の予兆だけでこの振動だ。
 本格的に振動を始めてしまえばこの形を維持することすら難しくなるのでは無かろうか。

 それをどこか落ち着いた心境でこの景色を眺める僕が居た。
 それに何故か安堵すると同時に恐怖する。


 何故こんなに心穏やかなのだろうと。


 一段と振動が強くなる。

 あぁ、そうか。

 全身の細胞がシェイクされる中、僕はやっと一つの結論に至った。


 これで僕も還れるんだ。


「ざんねーん、もちっと頑張って貰おうか」

 それを打ち消す様な陽気な女の声が聞こえた次の瞬間。

 ボッ

 そんな音を立てて飛来した何かが狼の頭部を丸ごと消し飛ばした。
 それと同時に鳴り響いていた死の輪唱が途絶える。

 それから咄嗟に身体を声の方へ向けようとしたのだが……

 ……あれ?動かない?

 動こうとしても体が縮まないのだ。
 一体どうして……

 そんなことを考えていると再び声が飛んだ。

「そりゃ下半身が潰れたらねぇ。動ける筈もないでしょ」

 ……え?

 思わず身体を震わす。

 ……ホントだ。
 言われてみたら感覚すらない。
 うわー……これからどうしたら……

「あー、身体に関しては心配ないよ」

 と、女の声。

「私が直しておくからさ。だからほら。今はゆっくりお眠り、お坊ちゃん」

 その声を最後に俺の意識はそこで途絶えた。




【462の経験値を得ました】
【スケイルキャタピラのレベルが5~20へ上昇しました】
【それに伴い進化が可能になります】


【称号スキル 人類の友愛者:Lv―を入手しました】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

悪役令嬢と入れ替えられた村娘の崖っぷち領地再生記

逢神天景
ファンタジー
とある村の平凡な娘に転生した主人公。 「あれ、これって『ダンシング・プリンス』の世界じゃない」 ある意味好きだった乙女ゲームの世界に転生していたと悟るが、特に重要人物でも無かったため平凡にのんびりと過ごしていた。 しかしそんなある日、とある小娘チート魔法使いのせいで日常が一変する。なんと全てのルートで破滅し、死亡する運命にある中ボス悪役令嬢と魂を入れ替えられてしまった! そして小娘チート魔法使いから手渡されたのはでかでかと真っ赤な字で、八桁の数字が並んでいるこの領地収支報告書……! 「さあ、一緒にこの崖っぷちの領地をどうにかしましょう!」 「ふざっけんなぁあああああああ!!!!」 これは豊富とはいえない金融知識と、とんでもチートな能力を活かし、ゲーム本編を成立させれる程度には領地を再生させる、ドSで百合な少女の物語である!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...