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「ぶはぁ!!!」
咄嗟に手をバタつかせながら跳ね起きる。
荒い息を吐き、瞼をぱちくり。
布団を握る手から送られる触覚に脳が震える。
これは……この感覚は……そうだ。
これは紛う事なき……
「…………人間?」
俺の放った一言は、静かな一室に虚しく響くばかりだった……じゃなくてだな。
ちょっと待てよ?ちょーっと落ち着け?
……取り敢えず現状確認と行こう。
先ず、俺の記憶が正しければ俺は元人間の芋虫。
目覚めたら卵の中で、身に付けた物を取っ払ったら、そこはスキルとか言う、お手軽万能キットを使える世界線。そこで毒ネズミとかと戦って強くなったと勘違いした俺は無謀にも人間なんぞを救うため圧倒的強者に挑むも、虚しく返り討ちに。
突然来た姿も見えない陽気な女声の奴に窮地を救われたと思ったら……
「…………気付けばこーなったと。」
やべぇ。まるで意味が分からん。
まさかここまで来て、今までのアレコレが全部夢だったみたいなオチは要らんぞ?
どんだけ死ぬ気でやってたと思ってんだ。
特に最後。
ここまで来て夢オチはあまりに虚し過ぎるだろ……ってそうか!
夢かどうか確かめるってんなら丁度良いモンが有るじゃねぇか。
えーと、使うのは……
「……フレム」
ボッ
そう呟くと、小さく音を立て、指先にマッチ程の火が灯った。
おぉ!初めて使うんだが、わりかし使いやすいんだな、コレ……って確か『糸を吐く』にもこんなん言ってたな……じゃなくて。
俺が証明したかったのはスキルが使えるってことは少なくとも今までのアレコレが夢なんかじゃないってことだ。
まぁ……
「それが分かったところで人間になってる理由までは分からない訳だけど」
いやー、こっからどうしようかなぁ。
そう考えていた時のことだった。
ガチャ
「あ!!良かった!目が覚めたんですね!芋虫さん」
そんな声と共にお盆片手の少女が部屋に入ってきた。
……って「芋虫さん」?
つまり、もしかしなくてもこの子は芋虫の俺を知ってるってことだ。
……女だと言う情報だけなら判断に迷う所だが、相手が少女だと確定しているのならば俺は一人しか知らない。
「君は……」
「えぇ!そうです!あの時助けて頂いた魔術師です!」
……んな鶴の恩返しじゃねぇんだから。
内心、そうツッコミながらも緩む頬を必死に押し上げた。
……え?気持ち悪い?
しょうがねぇだろ!嬉しいんだから!!
「……芋虫さん?」
「ん?あぁ、ごめん。ちょっと……嬉しくて」
……ここまでにちょっとふざけたが、こうも「救おうとした相手が生きている」という自分の努力の結果をまざまざと見せつけられると、今までに頑張ったアレコレが報われた様な気分になった。
そんな内心だったからだろうか。
咄嗟に答えようとすると、思わず最後の方は声が震えた。
それに思うところが有ったのか、少女の怪訝そうに歪められた顔から返事が飛ぶ。
「嬉しいって……その……私が無事だった事が、ですか?」
「え?あぁ、そりゃモチロン。ホントに……無事で良かったよ」
その質問に答えると、一瞬驚いた様な顔をした後、少女は柔らかく口角を上げて……
「……優しいんですね、芋虫さんは」
儚げな微笑みと共にそう言った。
瞬間、俺は思わずその笑顔に魅入られた。
理由は……良く分からない。
強いて言えばその儚さ。
触れたら壊れてしまいそうな……その破片でこちらまでもが傷付いてしまいそうな。
そんな不安定さが俺を惹き付けたのかもしれない……なーんて。
言ってみた俺自身もここまではっきり言葉になっている訳では無いのだが。
まぁ、それはそれとして……だ。
いくら喜びに耽っていようが、彼女の微笑に見惚れようが、彼女の真意を尋ねない訳には行かないだろう。
そんな訳で我ながら情けなく、おずおずと切り出してみる。
「あー、その……さ。いきなりでごめんなんだけど」
「?なんです?」
「いや、一つ聞きたくて……その……どうして俺をここに連れてきたの?」
そう、これが俺の唯一の疑問。
何故俺をここまで連れてきたのか、である。
俺が狼に挑んだのはいわば自己満足。
確かに助けた人間が「良い芋虫が居る」と噂してくれる事くらいは期待していたが、それはあくまでも期待である。
期待にして、希望的観測なのである。
つまるところ……まぁ、ぶっちゃけて言ってしまうのなら、この娘が俺を助けるなんて事態はハナから想定すらしてなかったのだ。
いや、ここで少し言い訳しておくが、これはなにも彼女の性格が悪いと思ったからだ、とかそんなことを言いたい訳ではない。
ここで俺が言いたいのは、もっとそれ以前の……人間の正常な思考プロセスについての話である。
例えばだが、今日。
彼女を助けたのが、俺ではなく、普通の人間だったとしよう。
その場合、「見捨てる訳には行かない」だとか色々感情も起こり、助けを呼んで戻ってきたりもするだろう。
だがそれは救われる相手がそこら辺の魔物……ましてや虫ともなれば、話は大きく変わってくる。
中身はどうあれ、俺は所詮魔物だ。芋虫なのだ。
そんな俺が人間を襲っている魔物と争ったところで、それは「縄張り争い」として見られるのがせいぜい。
「戻って助けないと」なんて発想になる方がおかしいのだ。
それを踏まえた上で俺は彼女に問う。
「何故、俺をここまで連れてきたのか」と。
果たして彼女の答えは……
「つ……強くなりたいんです!」
「……は?」
予想していたどの答えとも違う返事に思わず声が漏れた。
「その……ごめん、前後の文のつながりがよく分からないんだけど」
「あ!す、すいません。つい緊張しちゃって……ってうわぁ!?」
手を顔の前でバタつかせたかと思うと、慌てた際に床を蹴ったのか、彼女は座っている椅子ごと頭から落ちた。
「ちょ!?だ、大丈夫か?」
慌てて駆け寄ると……
鼻から血を流し、目を回した少女の姿がそこには有った。
えぇ……この娘、大丈夫かよ。
咄嗟に手をバタつかせながら跳ね起きる。
荒い息を吐き、瞼をぱちくり。
布団を握る手から送られる触覚に脳が震える。
これは……この感覚は……そうだ。
これは紛う事なき……
「…………人間?」
俺の放った一言は、静かな一室に虚しく響くばかりだった……じゃなくてだな。
ちょっと待てよ?ちょーっと落ち着け?
……取り敢えず現状確認と行こう。
先ず、俺の記憶が正しければ俺は元人間の芋虫。
目覚めたら卵の中で、身に付けた物を取っ払ったら、そこはスキルとか言う、お手軽万能キットを使える世界線。そこで毒ネズミとかと戦って強くなったと勘違いした俺は無謀にも人間なんぞを救うため圧倒的強者に挑むも、虚しく返り討ちに。
突然来た姿も見えない陽気な女声の奴に窮地を救われたと思ったら……
「…………気付けばこーなったと。」
やべぇ。まるで意味が分からん。
まさかここまで来て、今までのアレコレが全部夢だったみたいなオチは要らんぞ?
どんだけ死ぬ気でやってたと思ってんだ。
特に最後。
ここまで来て夢オチはあまりに虚し過ぎるだろ……ってそうか!
夢かどうか確かめるってんなら丁度良いモンが有るじゃねぇか。
えーと、使うのは……
「……フレム」
ボッ
そう呟くと、小さく音を立て、指先にマッチ程の火が灯った。
おぉ!初めて使うんだが、わりかし使いやすいんだな、コレ……って確か『糸を吐く』にもこんなん言ってたな……じゃなくて。
俺が証明したかったのはスキルが使えるってことは少なくとも今までのアレコレが夢なんかじゃないってことだ。
まぁ……
「それが分かったところで人間になってる理由までは分からない訳だけど」
いやー、こっからどうしようかなぁ。
そう考えていた時のことだった。
ガチャ
「あ!!良かった!目が覚めたんですね!芋虫さん」
そんな声と共にお盆片手の少女が部屋に入ってきた。
……って「芋虫さん」?
つまり、もしかしなくてもこの子は芋虫の俺を知ってるってことだ。
……女だと言う情報だけなら判断に迷う所だが、相手が少女だと確定しているのならば俺は一人しか知らない。
「君は……」
「えぇ!そうです!あの時助けて頂いた魔術師です!」
……んな鶴の恩返しじゃねぇんだから。
内心、そうツッコミながらも緩む頬を必死に押し上げた。
……え?気持ち悪い?
しょうがねぇだろ!嬉しいんだから!!
「……芋虫さん?」
「ん?あぁ、ごめん。ちょっと……嬉しくて」
……ここまでにちょっとふざけたが、こうも「救おうとした相手が生きている」という自分の努力の結果をまざまざと見せつけられると、今までに頑張ったアレコレが報われた様な気分になった。
そんな内心だったからだろうか。
咄嗟に答えようとすると、思わず最後の方は声が震えた。
それに思うところが有ったのか、少女の怪訝そうに歪められた顔から返事が飛ぶ。
「嬉しいって……その……私が無事だった事が、ですか?」
「え?あぁ、そりゃモチロン。ホントに……無事で良かったよ」
その質問に答えると、一瞬驚いた様な顔をした後、少女は柔らかく口角を上げて……
「……優しいんですね、芋虫さんは」
儚げな微笑みと共にそう言った。
瞬間、俺は思わずその笑顔に魅入られた。
理由は……良く分からない。
強いて言えばその儚さ。
触れたら壊れてしまいそうな……その破片でこちらまでもが傷付いてしまいそうな。
そんな不安定さが俺を惹き付けたのかもしれない……なーんて。
言ってみた俺自身もここまではっきり言葉になっている訳では無いのだが。
まぁ、それはそれとして……だ。
いくら喜びに耽っていようが、彼女の微笑に見惚れようが、彼女の真意を尋ねない訳には行かないだろう。
そんな訳で我ながら情けなく、おずおずと切り出してみる。
「あー、その……さ。いきなりでごめんなんだけど」
「?なんです?」
「いや、一つ聞きたくて……その……どうして俺をここに連れてきたの?」
そう、これが俺の唯一の疑問。
何故俺をここまで連れてきたのか、である。
俺が狼に挑んだのはいわば自己満足。
確かに助けた人間が「良い芋虫が居る」と噂してくれる事くらいは期待していたが、それはあくまでも期待である。
期待にして、希望的観測なのである。
つまるところ……まぁ、ぶっちゃけて言ってしまうのなら、この娘が俺を助けるなんて事態はハナから想定すらしてなかったのだ。
いや、ここで少し言い訳しておくが、これはなにも彼女の性格が悪いと思ったからだ、とかそんなことを言いたい訳ではない。
ここで俺が言いたいのは、もっとそれ以前の……人間の正常な思考プロセスについての話である。
例えばだが、今日。
彼女を助けたのが、俺ではなく、普通の人間だったとしよう。
その場合、「見捨てる訳には行かない」だとか色々感情も起こり、助けを呼んで戻ってきたりもするだろう。
だがそれは救われる相手がそこら辺の魔物……ましてや虫ともなれば、話は大きく変わってくる。
中身はどうあれ、俺は所詮魔物だ。芋虫なのだ。
そんな俺が人間を襲っている魔物と争ったところで、それは「縄張り争い」として見られるのがせいぜい。
「戻って助けないと」なんて発想になる方がおかしいのだ。
それを踏まえた上で俺は彼女に問う。
「何故、俺をここまで連れてきたのか」と。
果たして彼女の答えは……
「つ……強くなりたいんです!」
「……は?」
予想していたどの答えとも違う返事に思わず声が漏れた。
「その……ごめん、前後の文のつながりがよく分からないんだけど」
「あ!す、すいません。つい緊張しちゃって……ってうわぁ!?」
手を顔の前でバタつかせたかと思うと、慌てた際に床を蹴ったのか、彼女は座っている椅子ごと頭から落ちた。
「ちょ!?だ、大丈夫か?」
慌てて駆け寄ると……
鼻から血を流し、目を回した少女の姿がそこには有った。
えぇ……この娘、大丈夫かよ。
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