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しおりを挟む私は無邪気で、馬鹿な人間として、ここにいたい。
けれど、子の前でそんな嘘をつきたくない私は、構わず私として存在することを選んだ。
バーナビーたちには、これが私の常識とでも、あとで伝えておこうかな?神様にはこういう態度が正しいと教わったとか?
「ロン」
「つまらん!」
だろうね。
そもそも、マージャンって私が悪魔世界で広めたものだし。
アレスに手加減しなくてもいいかぁ…なんて思っている私は、楽々勝利しています。
そして、その勝利を気に食わなさそうにしているのが……。
「「「…」」」
バーナビーの伴侶である、ルーシャンだ。
どうやらルーシャンは、負けを嫌う性格らしく、どんどん機嫌が悪くなっていく。
うん、でもさ、まぁ、気にしないで?
さっき理解して初めて打つんだから、ね?私、ほら、ずっとやっていた時もあったから、ね?
「アレス、本と麻雀卓を用意して。気が向いたらまた遊びにきなさい」
「嫌だ!まだ遊ぶ!」
可愛いね。
この後、一緒に眠る予定ではあったけど、楽しそうなアレスは一向に麻雀をやめようとしない。
生活しているみんなも、忙しくなったであろうバーナビーたちも、そんなに時間がないだろう。
「他の者も遊べるようになったらもっと楽しくなるわ」
「む…」
「人間は寝る時間よ」
「そうだったな!」
「きゃっ!」「「っ」」
いきなりイスをしまわないでくれ……。
理解して天界に戻っていったのはいいけれど、しりもちをつくはずだった私は、反射神経のいいディアブロに抱えられたよ……バーナビーも一緒に。
「ありがとうございます」
「構いません」
ストンと優しくラグに落とされたバーナビーは、放心状態だった。
そして、
「ぶわっっ!!!」
目からポロポロと涙を流している。
「下がっていろ」
ルーシャンがみんなに声をかけて、伴侶を見るな。見るなよ。見るなああああ!なんて視線で追い出しているから、私もリンジーの横に浮いて外に出ようとして、声をかけられた。
「天使様、ご」
「はじめまして、ヒナノです。しばらくの間、ここはお二人の部屋になりましたから、お気になさらず」
「………助かります」
だろうね。
ご挨拶なんかいいから、さっさと出て行くよ。
「夕食の時間ですが、いかがなさいますか?」
どうしようかな…。
あ、リンジーちょっと疲れている。
というか、みんな疲れている?………それもそうか。キラキラ~って慣れないと気疲れしちゃうらしいもんね。
そうだ、アレスにと誂えた部屋を元に戻しておこう。
「あ、図書館っていつでも行っていいの?」
「構いませんよ、ご案内致します」
「うん!あ、あのね?」
「はい」
「デザートってある?」
「ございますよ」
「でもね?でもね?今から作るなら大丈夫だよ?」
「ふふっ、構いませんよ。収納にしまってある物もございますから」
「やったー!」
天使区域から離れたところから転移したそこは圧巻だった。
「すごい…」
「図書の建物は聖樹様を真似て造られたといわれています」
ああ、そういう事か。
にしても、美しい。
私が暮らす王城とは別館にあるのだろう。
城のような無骨さは感じない作りは、修復を何度かしたのだろう箇所がある。
円形状の建物が天高くそびえ立ち、横にも大きいそれは、まるで中にある本たちを真剣に読み、感情移入できるかのような、別のどこかへ立ち入るような、品性さえも感じ取れる図書館だった。
誘われるように、ふらふらと、前に進むと、自動で扉が開き、迎え入れてくれるから、既に物語の中へと吸い込まれていくように進み続ける。
内装はとてもシンプル、だからこそ、様々な本が主役でいられる。
そんな場所。
「ご希望はございますか?」
「薬草が載っている本と、レシピの本、鉱石の種類と、魔物の種類、人体に関する本と、小説……小説は私が選びたいな」
「はい」
毒についてはとりあえず、伝えた本で確認できるだろう。
そんなことより今は小説だ。
本ならなんだって読むけれど、この建物に魅入られている私は、没頭できるような小説を探すためにあっちこっちに上へ下へと移動しながら、気に入った本のタイトルを取り出した紙に書き出し、そしてまた小説を探すという永遠ループを楽しんでいる。
それからどれほどの時間が経ったか分からないが、一人の男がやってきた。
「様……天使様」
遠慮がちに体を揺らしてきた女は、服装からして傍仕えのようだった。
リンジーは帰ったのかな?
「はい」
「テレンス・マーティンデイル公爵が、天使様にご挨拶をと。いかがなさいますか?」
そういうのは好きにしてくれたらいいんだけど…。
「はい」
「良ければお席に、所望されておりました本も整えてございます」
「ありがとうございます」
どうやら公爵という人間は席で待っているらしい。
伺われてはいたけど、挨拶は決まっていたみたいだな?それならますます、お伺いはいらないかな?
図書館にある、奥まった場所にある扉を開くと、そこで寛げるようにと、整えてある室内があり、入る前から頭を下げている男が目に入った。
「?」
「天使様にご挨拶を、テレンス・マーティンデイルと申します」
「ヒナノです。あの…」
「はい」
「話はまだ伝わっていないんですか?」
「どのような」
「私はバーナビーを幸福に導く使命を持ってここにいます。ですから、そのように敬う相手ではないと、神様もそう仰っていましたよ」
「………少し湾曲して伝わっているようだ」
え?どんな風に?ディアブロは見たまま伝えるような人間だと思っていたけど。
まあ、いいか。と、席に着くと、ケーキと紅茶が出てきた。
そうだった、お願いしたんだった。ありがとうリンジー!
にしても、出てくるのは紅茶と果実水と水だけで、コーヒーやカフェオレなんかは出てこないな。
あとで聞いてみよう。
「必要な物はないか?」
どうやら私の立場を正確に理解したらしいテレンス公爵は、どさっと席に座り、瞳と同じ金の色の髪を乱雑に前から上げ、癖なのだろうか、眉間に皺を携えている。
「都度、お願いをしています」
「私に敬わなくていい、無駄だ」
どうやら合理主義らしい。
「うん」
「他にはないか?」
「今のところは思いつきません。あ、コーヒー、黒い飲み物はある?」
「それなら淫魔世界から輸入している国がある。持ってこい」
テレンス公爵の従者だろう人に命令している姿は、お疲れだ。
みんな疲れてるね。大丈夫そう?
「淫魔と取引していた国なのか?」
「?いいえ、どこでも採れている飲み物だよ」
「聞いた事はないな」
ええ?どうしたって黒くなるよね?コーヒーって。
確かに黒ではなくても出来るけど、だいたい黒じゃない?
「今度茶会を開く」
せめて主語をつけない?
「誰と?」
「私だ」
だろうね。
というか、来てまだ1日しか経っていないんですけど…。やっぱり大人しくしていても、色々とやらなければならないことが出てくるか。
いや、いいんだけどね。
「楽しみ!」
「失礼する」
失礼されますー。
せっかくだから、ケーキと紅茶を堪能しながら、小説……を、読みたいところだけど、先に毒問題を解決しちゃおうと、用意してくれた本を手に取った。
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