愛に飢えてる化け物は運命を拒絶する

ユミグ

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「あ」
「もう、少しは緊張しなさいよ」

ドレスを着せられている間は暇だからと、宙に浮かせて読んでた本をグロリアに取られました。だって長いんだもん。
最近は私の扱いがみんな分かってきたようで、夢中になっている物を奪うか、視界を遮るという方法で私を覚醒させます。

「緊張?なんで?」
「他国の人達が来るでしょ?さっきヒナノが言ったように危険が多いから」
「その為の護衛でしょ?」
「「…」」

危険は排除するのが護衛。
それがこの国での護衛の在り方だ。

「王様と一緒だから」
「うん!あ、バーナビーにわがまま言うの忘れてた」
「どんな事?」
「三人でパジャマパーティーしたいです。って!」
「くすくす」「ふふ、ほんと、ガキ」

グロリアは喧嘩を売るのが得意だな。やるか。なんて思ってると、

「う?」
「…」「「…」」

私の顎を無遠慮に掴み、持ち上げるディアブロがいた。

「「…」」

観察………してるのかな?私のように。

「大好きな人達とパジャマパーティーするのが好きです」
「…」「「…」」

それなら伝えてみよう。

「本当はリンジーとグロリアともしてみたいし、ヘディと光のと、闇のともしてみたいです」
「…」「「…」」

伝え終わると、どうしてか顔を近付けてくる。

距離がどんどんと近くなって、

「「「…」」」

離れた。

「支度出来た?」
「う、うん」
「いつもありがとう!リンジー!グロリア!あ、今日はディアブロもありがとう!」

彼の心が育つという事は、危険を意味している。
彼を愛してはいないし、伴侶という存在を作る気がない私の危険が近付いてしまう。
けれど、やめられない。
私は研究を、追い求める事をやめられない。
それが私だった。

ううん、それが私だ。

「行こう!今日も楽しみ!」

彼の心が育った時、私のする選択は一つ。

運命は一人じゃない。
必ず何処かにいる。
この世界に一人かもしれないし、一人もいないかもしれない。
けれど、世界を渡ればきっと、数百はいるだろう。
だから私は………。

彼の心が育ち、運命に抗えなくなった時、他を探そうと決めている。

「あ!バーナビー!ルーシャン!きゃぁぁぁ!かあっこいい!今日の二人は格好いいよ!」
「ふっ、ヒナノは綺麗だ」
「気をつけなさい」
「はあい!」

庭園に続く扉前に着くと、バーナビーが先頭を譲る為に動こうとするけど……どういう立ち位置なんだろう?
未だに謎だ。
あ、聞いてみればいいのか。

「ねぇ?」
「ん?どうした」
「私ってバーナビーを幸福に導く天使なんだよね?」
「んんっ!そ、そう、だな、うん、そう仰って下さった」
「それなら守る為の立ち位置に就くのが当たり前なんじゃないの?これじゃぁ、バーナビーが幸福に導こうとしてるみたいに見えないのかな?」
「「…」」

どうやら二人共、思う所はあるらしい。
それでも意識が…違うな。ルーシャンはきっとそう伝えていたけれど、バーナビーの神様好きぃ♡が暴走して、結局変わらない立ち位置を選んだのか。

「後ろに行くねー」
「む…」
「諦めろ」

うんうん、ルーシャンが言い聞かせておいてね。

まだ納得はいっていないんだろうけど、時間になると王様の顔に切り替えたバーナビーが一番に陽の光を浴びて、足を動かした。
その瞬間は、この世界の常識を覆した景色。

王の後ろを歩く天使の存在は、国王を守り、国を守り、死する時まで幸福を導くと、正しい認識がされた瞬間だった。

まぁ、私は死なないんだけど。

「こちらでございます」

バーナビーが座った後、天使用のイスに着席した私は…正直イライラが止まらない。

ムカムカして、

ムカムカして、

ムカムカしてる。

「どうされました」

ディアブロが声をかけてくるけど、今なにか言ったら八つ当たりしちゃいそうだから口を閉じておくのだ。
このお披露目が終わるまで、じっと我慢するのだ。

「ケーキ食べたい」
「「かしこまりました」」
「ホールで」
「「…」」

今この場にはスイレナディ国王、バーナビー・エインズワースの他に、5国の王が集っている。
ビタバレティモ国王、モナハン・ラングリッヂの側には、相変わらずヘディが居て、守るように後ろへと立っている。
他、4国の王たちも、モナハン王と同じく挨拶にやってくるだろうと、ホールケーキを抱き抱えるんじゃないかという勢いで食べ進めている私は、イライラの原因から目を逸らし、ムカムカしないように気を付け、意識を逸らそうと色々な、どうでもいい事を考えていた。

「天使様にご挨拶を申し上げます」
「はい」
「バッグイグナ国王、シュワール・マクマートリーと申します。世界を渡って頂けた事、国を代表して感謝を贈ります」

柔らかな雰囲気に、日に焼けたことのなさそうな肌を持つ、可愛らしいという表現が似合う人間だ。

「私も、神様に遣いを任された場がスイレナディ国であった事に、最大の感謝を覚えております」
「良き環境でお過ごし頂けているのなら、幸いでございます」

挨拶を終えたバッグイグナ国王と入れ替わりに、何故か、本当に何故か、ヘディと、わざわざ呼んだのか、光のと闇のが私の席に座る。

『も、漏れてますわよ?』
『…』

どうやら魔力が漏れてるらしい。
わざわざ抑えに来てくれたみたい。

「どうなさったのですか?」
「それ私の台詞、なにしてんの」
「ヘディが心配しておりましたの」

私の心配じゃなくて、周囲への影響というより、被害の心配かな?

「ありがと、ヘディ」
「いいけど、なにがあったのよ」

なにがあったと聞かれると、益々制御が難しくなりそう。

「精霊様、天使様にご挨拶を」
「嫌だわ!この人間!なにを…!嫌!わたくしの前に現れないで!」

ザワッッ!

光のが声を荒げると、いや、光のたちが来た瞬間から跪いたり、驚きと喜びで話し出した人間たちは煩かったけど、光のの怒りに益々ざわついた。

「嫌!嫌ですわ!ヒナノ様!この人間嫌いです!殺す許可を下さいな!」

なんで私に許可を取るんだろう?なんて思いながらも、光のと同じくらいムカムカしてる私は、確かに殺したいね。なんて、心の中で返事してた。

「避難を」

ディアブロが声をかけてくれるから迷わず手を取って歩き出した。

そしてコケた。

「「…」」

正しくはコケそうになった私を、抱えてくれました。すいません。

「光の、こっち」
「嫌ですわ!こんな人間の側にいたくありません!失礼しますわ!闇の!」

拒否されました。ヒナノ悲しい。

「うん、ほ、ほうち、で、いい、の?」
「嫌ですけれど、ヒナノ様の許可が出ませんの!帰りましょう!」
「う、うん、」

光のが帰り、ひょいっと私を抱き上げたのはヘディ。

「…」
「なにがあったのか知らないけど、私だけじゃ限界」
「…」

ムカムカしない。ムカムカしない。ムカムカしない。
遮断していた匂い嗅いで……すんすん……おお…!ヘディの甘い匂い!いい匂いだな!
お陰で制御出来たよ!

「ヘディ、抱っこしてて」
「してるじゃない」
「うん、リンジー」
「はい」
「お酒」
「かしこまりました」
「グロリア」
「はい」
「ケーキたくさん」
「かしこまりました」

ムカムカが収まったら今度は悲しくなってきた…。

「ぐすっ、」
「なにがあったのよ、私たちがなんとかするから言って」

ヘディがそんな風に言ってくれる。
なにがあったのか分からないのに、私の気持ちを汲んでくれてるのか、怒ってもくれてる。

「国同士だから…言っていいのか分かんない」

関わりもあるだろうし。
そんな事言ってる私の声は周りに聞こえてるだろうし、嫌い!なんて光のに言われた人間の事だとはみんな分かってるだろうけど、口に出すのと出さないのでは訳が違う。



「私が許す」



バーナビーの言葉にぶわっ!と涙が出てきた。
まるで子の成長を見届けられたような瞬間に、バーナビーが私の認識を改められた感激に涙が溢れて………。

そんな気持ちと共に、

愚痴った。

大きな声で。

指を差しながら、

駄々をこねる子どものように喚いた。



「この人嫌い!大っっっ嫌い!他の人間の鱗を4つも飲み込んでる!!!大嫌い!大嫌い!大っっっ嫌い!!!」

「「「「「「「「「「「「「なっっ!?」」」」」」」」」」」」」

「だから言ってんだろ!!!こいつはくせぇって!!!」
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