26 / 46
25
しおりを挟む「あ」
「もう、少しは緊張しなさいよ」
ドレスを着せられている間は暇だからと、宙に浮かせて読んでた本をグロリアに取られました。だって長いんだもん。
最近は私の扱いがみんな分かってきたようで、夢中になっている物を奪うか、視界を遮るという方法で私を覚醒させます。
「緊張?なんで?」
「他国の人達が来るでしょ?さっきヒナノが言ったように危険が多いから」
「その為の護衛でしょ?」
「「…」」
危険は排除するのが護衛。
それがこの国での護衛の在り方だ。
「王様と一緒だから」
「うん!あ、バーナビーにわがまま言うの忘れてた」
「どんな事?」
「三人でパジャマパーティーしたいです。って!」
「くすくす」「ふふ、ほんと、ガキ」
グロリアは喧嘩を売るのが得意だな。やるか。なんて思ってると、
「う?」
「…」「「…」」
私の顎を無遠慮に掴み、持ち上げるディアブロがいた。
「「…」」
観察………してるのかな?私のように。
「大好きな人達とパジャマパーティーするのが好きです」
「…」「「…」」
それなら伝えてみよう。
「本当はリンジーとグロリアともしてみたいし、ヘディと光のと、闇のともしてみたいです」
「…」「「…」」
伝え終わると、どうしてか顔を近付けてくる。
距離がどんどんと近くなって、
「「「…」」」
離れた。
「支度出来た?」
「う、うん」
「いつもありがとう!リンジー!グロリア!あ、今日はディアブロもありがとう!」
彼の心が育つという事は、危険を意味している。
彼を愛してはいないし、伴侶という存在を作る気がない私の危険が近付いてしまう。
けれど、やめられない。
私は研究を、追い求める事をやめられない。
それが私だった。
ううん、それが私だ。
「行こう!今日も楽しみ!」
彼の心が育った時、私のする選択は一つ。
運命は一人じゃない。
必ず何処かにいる。
この世界に一人かもしれないし、一人もいないかもしれない。
けれど、世界を渡ればきっと、数百はいるだろう。
だから私は………。
彼の心が育ち、運命に抗えなくなった時、他を探そうと決めている。
「あ!バーナビー!ルーシャン!きゃぁぁぁ!かあっこいい!今日の二人は格好いいよ!」
「ふっ、ヒナノは綺麗だ」
「気をつけなさい」
「はあい!」
庭園に続く扉前に着くと、バーナビーが先頭を譲る為に動こうとするけど……どういう立ち位置なんだろう?
未だに謎だ。
あ、聞いてみればいいのか。
「ねぇ?」
「ん?どうした」
「私ってバーナビーを幸福に導く天使なんだよね?」
「んんっ!そ、そう、だな、うん、そう仰って下さった」
「それなら守る為の立ち位置に就くのが当たり前なんじゃないの?これじゃぁ、バーナビーが幸福に導こうとしてるみたいに見えないのかな?」
「「…」」
どうやら二人共、思う所はあるらしい。
それでも意識が…違うな。ルーシャンはきっとそう伝えていたけれど、バーナビーの神様好きぃ♡が暴走して、結局変わらない立ち位置を選んだのか。
「後ろに行くねー」
「む…」
「諦めろ」
うんうん、ルーシャンが言い聞かせておいてね。
まだ納得はいっていないんだろうけど、時間になると王様の顔に切り替えたバーナビーが一番に陽の光を浴びて、足を動かした。
その瞬間は、この世界の常識を覆した景色。
王の後ろを歩く天使の存在は、国王を守り、国を守り、死する時まで幸福を導くと、正しい認識がされた瞬間だった。
まぁ、私は死なないんだけど。
「こちらでございます」
バーナビーが座った後、天使用のイスに着席した私は…正直イライラが止まらない。
ムカムカして、
ムカムカして、
ムカムカしてる。
「どうされました」
ディアブロが声をかけてくるけど、今なにか言ったら八つ当たりしちゃいそうだから口を閉じておくのだ。
このお披露目が終わるまで、じっと我慢するのだ。
「ケーキ食べたい」
「「かしこまりました」」
「ホールで」
「「…」」
今この場にはスイレナディ国王、バーナビー・エインズワースの他に、5国の王が集っている。
ビタバレティモ国王、モナハン・ラングリッヂの側には、相変わらずヘディが居て、守るように後ろへと立っている。
他、4国の王たちも、モナハン王と同じく挨拶にやってくるだろうと、ホールケーキを抱き抱えるんじゃないかという勢いで食べ進めている私は、イライラの原因から目を逸らし、ムカムカしないように気を付け、意識を逸らそうと色々な、どうでもいい事を考えていた。
「天使様にご挨拶を申し上げます」
「はい」
「バッグイグナ国王、シュワール・マクマートリーと申します。世界を渡って頂けた事、国を代表して感謝を贈ります」
柔らかな雰囲気に、日に焼けたことのなさそうな肌を持つ、可愛らしいという表現が似合う人間だ。
「私も、神様に遣いを任された場がスイレナディ国であった事に、最大の感謝を覚えております」
「良き環境でお過ごし頂けているのなら、幸いでございます」
挨拶を終えたバッグイグナ国王と入れ替わりに、何故か、本当に何故か、ヘディと、わざわざ呼んだのか、光のと闇のが私の席に座る。
『も、漏れてますわよ?』
『…』
どうやら魔力が漏れてるらしい。
わざわざ抑えに来てくれたみたい。
「どうなさったのですか?」
「それ私の台詞、なにしてんの」
「ヘディが心配しておりましたの」
私の心配じゃなくて、周囲への影響というより、被害の心配かな?
「ありがと、ヘディ」
「いいけど、なにがあったのよ」
なにがあったと聞かれると、益々制御が難しくなりそう。
「精霊様、天使様にご挨拶を」
「嫌だわ!この人間!なにを…!嫌!わたくしの前に現れないで!」
ザワッッ!
光のが声を荒げると、いや、光のたちが来た瞬間から跪いたり、驚きと喜びで話し出した人間たちは煩かったけど、光のの怒りに益々ざわついた。
「嫌!嫌ですわ!ヒナノ様!この人間嫌いです!殺す許可を下さいな!」
なんで私に許可を取るんだろう?なんて思いながらも、光のと同じくらいムカムカしてる私は、確かに殺したいね。なんて、心の中で返事してた。
「避難を」
ディアブロが声をかけてくれるから迷わず手を取って歩き出した。
そしてコケた。
「「…」」
正しくはコケそうになった私を、抱えてくれました。すいません。
「光の、こっち」
「嫌ですわ!こんな人間の側にいたくありません!失礼しますわ!闇の!」
拒否されました。ヒナノ悲しい。
「うん、ほ、ほうち、で、いい、の?」
「嫌ですけれど、ヒナノ様の許可が出ませんの!帰りましょう!」
「う、うん、」
光のが帰り、ひょいっと私を抱き上げたのはヘディ。
「…」
「なにがあったのか知らないけど、私だけじゃ限界」
「…」
ムカムカしない。ムカムカしない。ムカムカしない。
遮断していた匂い嗅いで……すんすん……おお…!ヘディの甘い匂い!いい匂いだな!
お陰で制御出来たよ!
「ヘディ、抱っこしてて」
「してるじゃない」
「うん、リンジー」
「はい」
「お酒」
「かしこまりました」
「グロリア」
「はい」
「ケーキたくさん」
「かしこまりました」
ムカムカが収まったら今度は悲しくなってきた…。
「ぐすっ、」
「なにがあったのよ、私たちがなんとかするから言って」
ヘディがそんな風に言ってくれる。
なにがあったのか分からないのに、私の気持ちを汲んでくれてるのか、怒ってもくれてる。
「国同士だから…言っていいのか分かんない」
関わりもあるだろうし。
そんな事言ってる私の声は周りに聞こえてるだろうし、嫌い!なんて光のに言われた人間の事だとはみんな分かってるだろうけど、口に出すのと出さないのでは訳が違う。
「私が許す」
バーナビーの言葉にぶわっ!と涙が出てきた。
まるで子の成長を見届けられたような瞬間に、バーナビーが私の認識を改められた感激に涙が溢れて………。
そんな気持ちと共に、
愚痴った。
大きな声で。
指を差しながら、
駄々をこねる子どものように喚いた。
「この人嫌い!大っっっ嫌い!他の人間の鱗を4つも飲み込んでる!!!大嫌い!大嫌い!大っっっ嫌い!!!」
「「「「「「「「「「「「「なっっ!?」」」」」」」」」」」」」
「だから言ってんだろ!!!こいつはくせぇって!!!」
0
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる