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37【???】
しおりを挟む夢見る誰かは笑顔だと信じている。
『 』
私は気味が悪い。
そう、幼少の頃から言われ続けている。
泣かず、笑わず、喋らない。
だが、どうしたら笑える。
『 』
「 」が傍にいないのに。
どうしたら泣けるんだ。
『 』
笑顔を見れないんだ、心揺さぶる感情が湧き出てこないのに。
笑う事などできない。
隣にいないのに。
生まれた頃から夢に侵食されている人生だと自認している。
眠るのが好きだ。
そうすれば笑顔を見れる。
だが、その笑顔は目を開けると消えている。
だから眠る。
そこにしか私の居場所がないからだ。
天使がやってきた。
それは私の運命だった。
『 り …!』
初めて夢の中の声を聞けたのは、運命を見た時だった。
運命に支配される私でいたくない。
いつだって支配されるのは夢の中でありたいからだ。
渇望し、絶望し、枯渇し、潤してくれるのは夢の中だけだと信じている。
「リンジー!おいしいね?」
「くすくす、美味しいね」
『 です………チー 』
天使を見ると夢の声が鮮明に聞こえてくる。
だが、まだ顔は見れない。
『 です!チョキチョ!』
夢が近付いてくる。
それ以上に、
「チョキチョだ」
天使も近付いてくる。
なぜ私の夢の中に出てくるあれの声と同じ単語を発するのか気になった。
天使が教えてくれるのかと期待したが、すぐにやめた。
私は誰にも教わりたくない。「 」の事を。
あれは私だけのモノだ。
知られてたまるか。
『 ああああ!!!デズモンド様!!』
なにを叫んでいる。
私はここにいるというのに。
離さず、傍にいるだろう。
「デズモンド、さまっ!や、やだっ、や、おねがっ、いかな、いでっ!」
「…」
置いていく訳がない。
そう、こころの中で答えた。
初めて「 」にではなく、誰かに答えた。
心からの声を。
『大丈夫です、怖くない、ですよー』
日に日に声が近付いてくる。
天使を見ていれば見ているほど。
だがそれ以上に天使の声が耳に入ってくる。
夢の中の顔が見たいのに、天使の顔ばかりが気になり、動向が気になってくる。
運命だからではない。
天使だからこそだと思ってしまう心を隠すことができない。
「ディアブロ?」
「…」
違う。
そんな声音ではないだろう。
「デズ、モンド…さ、ま…」
そんな声音でもない。
『デズモンド様!見てください!』
この声音こそが彼女の音だ。
彼女とは誰のことか。
夢の中の彼女か、天使か。
パリンッ!
怪我をした。
彼女が。
いや、彼女は怪我をしない。
守りは完璧なはずだ。
いつだって私が守っている。
『デズモンド様ああああああああ!!!』
失敗した。
彼女を守れなかった。
彼女とは誰のことか。
天使か、「 」か。
彼女は無垢な女だった。
私が放つ威圧や畏怖が分からない女。
無防備に私の前ですやすやと眠り、むき出しのままで居続けてくれる大切な妃。
私とは誰のことだろう。
私か、それともデズモンドか。
『特別な日にしましょう!いいですか?』
『いい、なにをする』
『美味しい緑茶!』
『変わらない』
『美味しいケーキ!』
『変わらない』
『デズモンド様といっしょ!』
『変わらない』
天使の寝顔を見ていると濁流のように夢の内容が頭に入ってくる。
彼女の顔など分からなかったというのに、最近はボヤけた彼女の表情が見えてくる。
いつだって幸せそうな顔をしている私だけのモノ。
天使が来てからあまり眠れていない。
眠る必要がないからだ。
眠らずとも夢を見れる。
目を開けて、天使を見ていれば夢を見れる。
「ディアブロ!ゲームをしましょう!」
ああ、これだ。
この顔………いや、天使ではない。
私は「 」しか求めていない。
なのになぜだ。
「ディアブロ、今日はフロランタンですよ」
時々、夢が邪魔になる。
天使の顔を見ていたいと。
天使の声だけ聞いていたいと。
これは私のモノだと。
「……寝てないんですか?」
どうしてだろう。
夢を見ていたいのではなく、天使を見ていたい。
だから眠らない。
それはいつからなのか。
「デズ、モンド……さ、ま……」
「ここにいる」
「………すー…すー…」
デズモンドが誰なのか分からない。
だがそれは夢の中の彼女も、天使も求めている男だ。
早く思い出さなければ。
いつまで悲しませているつもりだと、どうしてか心の中で悪態をつく私がいる。
『デズモンド様!今日も花畑が綺麗です!』
『お前の方が美しい』
『あう……』
美しさなど感じたことはなかった。
ああ、天使を初めて見た時に思ったのは、
美しさ。
目を開けている。
最近は目を開けて、目の前の出来事ばかりを見ている。
触れていなければ駄目だ。
いつでも傍にいるのだと決めたはずだ。
それは誰の感情だ。
私か、デズモンドか。
「い、や……」
「………」
天使の拒絶は聞き入れがたい内容だった。
「次は命がないと伝えたはずだが?」
天使から離れ、言い放たれた言葉に駄目だと感じた。心から。
「死」など、私たちには必要ない。
『デズモンド様、一生一緒です』
『一生一緒だ』
永遠を生きる唯一無二。
私だけのモノ。
私の存在理由。
「謹慎で許すのは、そうでなければヒナノが気に病むからだ」
気に病むことなどない。
私が傍にいるのだから。
傍にいない。
傍にいると伝えたはずなのに。
どうしてか傍にいない。
「はっ!謹慎?お前はやはり出来こそないの化け物だからな」
家に戻った私の耳に入ってくるのは弟と呼ばれている生物の声。
そんな声は必要ない。
「筆頭護衛として俺が向かう事になった」
ドンッッッッ!!!
「げほっ!げほっ!なに、すんっ、だっ!はな、せ!はなせよ!!」
彼女の傍にいる者として相応しくない。
無遠慮に彼女を見る奴など。
「はな、せ!!!」
欲深い目で見るなど、私は許していない。
「ひっ!?なに、なに、を、ころ、殺さないでくれ!!」
殺された。
「げほっ!あ、頭が狂ってんだよ!!」
パタパタと走り去る足音と共に、夢の中の音も聞こえてきた。
無数の悪魔が出現し、彼女の背後を取った。
『いやああああああああ!!!』
『ヒナノ!ヒナノ!』
ああ、やはり守れなかった。
「ヒナ………ノ………」
夢の中の彼女は私の…わた、しの………
ガタガタッッッ!!!バタンッッ!!!
倒れゆく視界の中、
やっと彼女の、
ヒナノの笑顔が見れた。
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