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僕は何も伝えていないし彼からも何も言われていない
けど、僕はベッドから出て一度も1人で歩いていない
「・・・・・ここで僕も生活するの?」
「君さえ良ければだけど」
「なんでここ?」
「僕、兄様にお願いをした対価に社交シーズンの書類を片づけるって約束したんだ」
「・・・うん?」
「しばらくは忙しくなって君に会えなくなるから、その・・・」
「・・・・・僕、都合のいい解釈をしちゃいそう・・・・・」
執事のバドルはいつも家に残るから今は僕の傍についている
「バドル、食事を置いたら下がってくれるかい」
「かしこまりました」
「とりあえず食事にしよう、僕達はきっと何も口にしていないのだろう?」
ぐっと口を紡ぐ彼は罪悪感があるみたいで食事に手を出す
食事が終われば説明をしなければならないのだけれど、気を引きたくてなんてこの歳になって言いたくない・・・
「ワイアット、ご、ごめんなさい・・・ぼ、ぼく、ぼく、しちゃいけないことっっ~~~」
「泣かないでおくれ、君は何も悪くないのだから」
「で、でもっっ!」
「説明するよ」
こうして僕の恥ずかしい子供じみた過去を話す
とても恥ずかしいけれど、彼なら、これだけ愛を溢れさせてくれる彼なら大丈夫
「え、と・・・その、つまり、僕がぐだぐだしてたから答えが欲しくてデートするって嘘をついたんだよね・・・」
「・・・そういう事になってしまうのか、いや、君がぐだぐだしていたとは思っていないのだけれど」
「でも、僕がきちんと口にしていれば・・・」
「それを言うならお互い様だろう」
「・・・僕は君を好きって言っていいの?」
「言ってくれないのかい?」
「~~~!!!い、言いたい、ずっと言いたかったんだ」
「そうか、それは嬉しいな」
「・・・・・そっか、うん、分かった、これからも間違ってしまう事はあるかもしれないけどその度に僕を傷つけて、そうしたら鈍い僕でも分かるから」
「・・・・・そうかい」
「だから、僕と付き合って下さい」
「構わないよ」
「ところで僕はいつまで君の膝の上なんだ」
彼の家から状況が分からない中、僕だけは離さず可愛い威嚇をしながらここまで飛んだ
家についてまでこんな状況だから僕はいつ解放されるのか聞いた
「ずっと居たらいいと思うよ?」
「僕は兄様の書類の手伝いをするからね、その時は離れてもらわないと困るんだ」
「・・・・・どうして?」
「君に書類を見られる訳にはいかないからだよ」
「・・・・・分かった」
「そうかい」
「でも、今回だけ、子爵様が帰ってきたらもう駄目」
「そうかい」
「・・・・・僕の故郷に来て欲しい」
「君の故郷は魔人が行っても問題ないのかい?」
彼の瞳の不思議な虹彩が始まりだった
ブルーに薄いグリーンが入ったガラス玉のような瞳
それだけなら珍しいで済むけど、彼の瞳は興奮するとグリーンとブルーの対比が同じになる
そして魅了される
きっと彼の言い方を思案すると“魅了”ではないものだ
実際
「僕は、興奮すると相手を意のままに操るんだ、実際恐怖で支配しながら操った事もある」
そう言われた
興奮しただけで相手が恐怖し言う事を聞く人形になったらそれはそれはつまらないだろうな
「だから、君に効かなかった時、好ましいと言われた時は嬉しかった」
はにかみながら言う彼はやっぱり日に日に可愛さを増している
それと僕が竜人だと憶測してしまうもう1つの理由は、地下にある1冊の本
そこには見た事も聞いた事もないおとぎ話が書かれていた
要約すると、魔力の相性がいい相手が運命の相手だと
まぁ、そんなおとぎ話ならこの国にもある
けど彼ら竜人は本気で信じている
そもそも魔力も莫大な竜と波長が合う他の種族なんかいないらしい
同種族で婚姻しようとしても、そのおとぎ話を信じすぎて相性が良くない相手と体を交えようとは思わないみたいだ
あとは彼の言動だ
瞳を褒めれば異常な程歓喜し、ベッドに行けば“ぼくの”だと連呼し、何よりは馬鹿げた精力と射精量だ
あんなのはまずあり得ない
「だから僕たちが住む国は他の種族も居るから大丈夫」
「竜の国なんて聞いた事がないけれど」
「ここよりももっとずっと遠い場所だから」
「飛んできたのかい?」
「うん」
「どうして国を出たか聞いても?」
「・・・色々あるけど、でも一番はゆっくり絵を描いてみたかったから」
「ゆっくりする暇もなかったの?」
「こんな休息は初めてだ」
「そうかい」
「そうだ、これ受け取ってくれる?」
渡されたモノはガラス板だった
ただのガラス板ではない、絵画になっている
小さな円のようなモノが真ん中に無数に重なり何かから逃げているようだ
縁は全て黒く塗りつぶされているけど、後ろが透けるようになる不思議な仕様になっている
色合いがほとんどブルーとグリーンで出来ている
立ち上がり彼から離れてこの間描いてもらった作品と重ねる
「・・・・・交じり合っている」
「うん、気付いてくれて嬉しい、僕はこれで完成にしたかったんだ」
「なんとなく気付いていたよ」
「ええ!?」
「僕は鈍感ではないんだ・・・けど、君の作る作品はいつも予想外な作風だ」
「画家冥利に尽きるよ」
「こういう風に綺麗にぴったりと重なり合いたい・・・君と、コルトンと僕で」
「っっっ~~~うん!うん!僕も、僕もだよ!大好きワイアット」
こうして僕たちの、兄様で言うところの痴情のもつれは緩く終わりを迎えた
「・・・・・どこだって?」
「リアカッツ国です兄様」
「・・・・・ついぞ騙されるようになったのか」
「現実を見て下さい兄様、現存する国です」
「・・・・・ここでは駄目なのか」
「コルトンここでは駄目なのかい?」
「駄目、絶対、駄目、ここはテリトリーじゃないから、駄目、です」
「だそうです兄様」
「はぁ・・・捨てられても帰って来れるような代物はないのか」
「・・・あ、羽なら、僕の羽を落とします、から、それで帰って来れます」
「・・・・・随分と可愛らしい手法だな」
「羽?僕ももらえるのかい?」
「あげない、勝手に帰られたら困るから」
「そうかい」
「他ならなんでもあげる」
「むさくるしいからやめろ」
「兄様、という事で行ってきます」
「軽いなお前は・・・でも、そうだな、お前は昔から欲しがりだからな、ちょうどいいのだろう」
「ありがとう、兄様」
「作品の依頼は5年後から受け付けるよう手配しておく」
「ありがとうございます」
「じゃぁ、行ってきます兄様」
「ああ、行ってこい」
「コルトン、何故5年後からなんだい?」
「・・・・・蜜月に5年は欲しいから」
「聞いてないのだけれど」
「嫌だって逃げられちゃうのが怖かったから」
「そうかい」
けど、僕はベッドから出て一度も1人で歩いていない
「・・・・・ここで僕も生活するの?」
「君さえ良ければだけど」
「なんでここ?」
「僕、兄様にお願いをした対価に社交シーズンの書類を片づけるって約束したんだ」
「・・・うん?」
「しばらくは忙しくなって君に会えなくなるから、その・・・」
「・・・・・僕、都合のいい解釈をしちゃいそう・・・・・」
執事のバドルはいつも家に残るから今は僕の傍についている
「バドル、食事を置いたら下がってくれるかい」
「かしこまりました」
「とりあえず食事にしよう、僕達はきっと何も口にしていないのだろう?」
ぐっと口を紡ぐ彼は罪悪感があるみたいで食事に手を出す
食事が終われば説明をしなければならないのだけれど、気を引きたくてなんてこの歳になって言いたくない・・・
「ワイアット、ご、ごめんなさい・・・ぼ、ぼく、ぼく、しちゃいけないことっっ~~~」
「泣かないでおくれ、君は何も悪くないのだから」
「で、でもっっ!」
「説明するよ」
こうして僕の恥ずかしい子供じみた過去を話す
とても恥ずかしいけれど、彼なら、これだけ愛を溢れさせてくれる彼なら大丈夫
「え、と・・・その、つまり、僕がぐだぐだしてたから答えが欲しくてデートするって嘘をついたんだよね・・・」
「・・・そういう事になってしまうのか、いや、君がぐだぐだしていたとは思っていないのだけれど」
「でも、僕がきちんと口にしていれば・・・」
「それを言うならお互い様だろう」
「・・・僕は君を好きって言っていいの?」
「言ってくれないのかい?」
「~~~!!!い、言いたい、ずっと言いたかったんだ」
「そうか、それは嬉しいな」
「・・・・・そっか、うん、分かった、これからも間違ってしまう事はあるかもしれないけどその度に僕を傷つけて、そうしたら鈍い僕でも分かるから」
「・・・・・そうかい」
「だから、僕と付き合って下さい」
「構わないよ」
「ところで僕はいつまで君の膝の上なんだ」
彼の家から状況が分からない中、僕だけは離さず可愛い威嚇をしながらここまで飛んだ
家についてまでこんな状況だから僕はいつ解放されるのか聞いた
「ずっと居たらいいと思うよ?」
「僕は兄様の書類の手伝いをするからね、その時は離れてもらわないと困るんだ」
「・・・・・どうして?」
「君に書類を見られる訳にはいかないからだよ」
「・・・・・分かった」
「そうかい」
「でも、今回だけ、子爵様が帰ってきたらもう駄目」
「そうかい」
「・・・・・僕の故郷に来て欲しい」
「君の故郷は魔人が行っても問題ないのかい?」
彼の瞳の不思議な虹彩が始まりだった
ブルーに薄いグリーンが入ったガラス玉のような瞳
それだけなら珍しいで済むけど、彼の瞳は興奮するとグリーンとブルーの対比が同じになる
そして魅了される
きっと彼の言い方を思案すると“魅了”ではないものだ
実際
「僕は、興奮すると相手を意のままに操るんだ、実際恐怖で支配しながら操った事もある」
そう言われた
興奮しただけで相手が恐怖し言う事を聞く人形になったらそれはそれはつまらないだろうな
「だから、君に効かなかった時、好ましいと言われた時は嬉しかった」
はにかみながら言う彼はやっぱり日に日に可愛さを増している
それと僕が竜人だと憶測してしまうもう1つの理由は、地下にある1冊の本
そこには見た事も聞いた事もないおとぎ話が書かれていた
要約すると、魔力の相性がいい相手が運命の相手だと
まぁ、そんなおとぎ話ならこの国にもある
けど彼ら竜人は本気で信じている
そもそも魔力も莫大な竜と波長が合う他の種族なんかいないらしい
同種族で婚姻しようとしても、そのおとぎ話を信じすぎて相性が良くない相手と体を交えようとは思わないみたいだ
あとは彼の言動だ
瞳を褒めれば異常な程歓喜し、ベッドに行けば“ぼくの”だと連呼し、何よりは馬鹿げた精力と射精量だ
あんなのはまずあり得ない
「だから僕たちが住む国は他の種族も居るから大丈夫」
「竜の国なんて聞いた事がないけれど」
「ここよりももっとずっと遠い場所だから」
「飛んできたのかい?」
「うん」
「どうして国を出たか聞いても?」
「・・・色々あるけど、でも一番はゆっくり絵を描いてみたかったから」
「ゆっくりする暇もなかったの?」
「こんな休息は初めてだ」
「そうかい」
「そうだ、これ受け取ってくれる?」
渡されたモノはガラス板だった
ただのガラス板ではない、絵画になっている
小さな円のようなモノが真ん中に無数に重なり何かから逃げているようだ
縁は全て黒く塗りつぶされているけど、後ろが透けるようになる不思議な仕様になっている
色合いがほとんどブルーとグリーンで出来ている
立ち上がり彼から離れてこの間描いてもらった作品と重ねる
「・・・・・交じり合っている」
「うん、気付いてくれて嬉しい、僕はこれで完成にしたかったんだ」
「なんとなく気付いていたよ」
「ええ!?」
「僕は鈍感ではないんだ・・・けど、君の作る作品はいつも予想外な作風だ」
「画家冥利に尽きるよ」
「こういう風に綺麗にぴったりと重なり合いたい・・・君と、コルトンと僕で」
「っっっ~~~うん!うん!僕も、僕もだよ!大好きワイアット」
こうして僕たちの、兄様で言うところの痴情のもつれは緩く終わりを迎えた
「・・・・・どこだって?」
「リアカッツ国です兄様」
「・・・・・ついぞ騙されるようになったのか」
「現実を見て下さい兄様、現存する国です」
「・・・・・ここでは駄目なのか」
「コルトンここでは駄目なのかい?」
「駄目、絶対、駄目、ここはテリトリーじゃないから、駄目、です」
「だそうです兄様」
「はぁ・・・捨てられても帰って来れるような代物はないのか」
「・・・あ、羽なら、僕の羽を落とします、から、それで帰って来れます」
「・・・・・随分と可愛らしい手法だな」
「羽?僕ももらえるのかい?」
「あげない、勝手に帰られたら困るから」
「そうかい」
「他ならなんでもあげる」
「むさくるしいからやめろ」
「兄様、という事で行ってきます」
「軽いなお前は・・・でも、そうだな、お前は昔から欲しがりだからな、ちょうどいいのだろう」
「ありがとう、兄様」
「作品の依頼は5年後から受け付けるよう手配しておく」
「ありがとうございます」
「じゃぁ、行ってきます兄様」
「ああ、行ってこい」
「コルトン、何故5年後からなんだい?」
「・・・・・蜜月に5年は欲しいから」
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「嫌だって逃げられちゃうのが怖かったから」
「そうかい」
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