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しおりを挟む化粧道具は預けてたから眠くてぼーっとしてる私にリンジーが化粧してくれてる。
練習もしてくれてたのか、綺麗に出来てるなぁ…とか思いながら目を覚ましていく。
「ふあ…おはよ」
「おはよう」「はよ」
「「…」」
リンジーに言ったんだけど、アルフまで答えた。
いいんだけどね。
「服はこれだけど嫌い?」
ワンピースはこの世界にもあるけど、ドレスの概念はなかったから、どんな衣装になるのか楽しみだったんだ。
軍服みたいな感じだ、凄い、なんか…エロエロ。
「帽子はあるの?」
「あった方が良かった?」
「ううん、この洋服なら帽子があるのかな?って思ったの」
「あっても不自然じゃないけど、せっかくの綺麗な髪を隠したら勿体ない」
そうだよね。
帽子まであったら流石にエロエロすぎだよ!
靴も似合いのを用意してもらってるみたい。
「背が小さいからこれ履いて大きく見せたい」
軍服に合うヒールを取り出したら怪訝な顔をされた。
「…転ぶよ」
「手繋いでてくれないの?」
「…離れないって約束出来る?」
どうしてだろうか。
子どもじゃないと説明したし、子どもじゃないとも理解してるはずなのに…
なんでそんな風に聞くんだい?
15cmのヒールだけど、太いからそこまで危なくないよ?15cm大きく見せても小さいけどね!
「離さない!」
「…うん」
不安にならないで!
君達が大きすぎるんだよ!
一度、寝室で着替えてから髪の毛を整えてもらう。まだ靴は履いてないよ。
「心配だな」
「どうして?」
「小さいからかな?」
「心配の原因にしないで欲しいな?」
「ふふ、小さくて可愛いか…」
「うん?」
「そんなになるならさっさと伝えればいいだろ」
「…」
どうやらアルフがリンジーにビシバシ鋭い視線を送ってるらしい。
ぶつぶつと愚痴るリンジーはどうやら大変な日常を体験中だ。
「あ!バッグって変?」
「どんなの?」
「これ!」
肩がけの小さなバッグはこの軍服に似合いそう!というか似合う!かんわいい!
「…危険かな?」「危険だ」
「え?」
駄目じゃなくて危険なの?バッグに何か入れられるとか?
「ここだけならいいよ」
「はあい」
せっかくだから用意が終わって姿見でバッグもかけてくるくる回ってみた。
うんうん、可愛い!
そして興奮しないでアルフ…
バッグを仕舞ったら会場まで転移してもらう、本当に楽でいい世界だよ。
リンジーの手を掴んだら披露目会場の扉が開く。
で、でけぇ…
巨人族とか居るなら君達だよ!
一斉に跪いたけどでかいな!
リンジーはとってもとってもゆっくり歩く。
コケちゃうからね!
バーナビーの元まで歩くのだ。
おお、伴侶か。
バーナビーがいつも纏ってる匂いの獣人が居た。
「天使様のご来訪国を代表してバーナビー・エインズワースが感謝を…」
バーナビーの言葉を遮って私がなんの為にいるのかを、きちんとみんなに理解してもらう為に言葉を放つ。
「バーナビーは私ではなく神様が認めた王様。そんな方とお会い出来た感謝を贈ります」
「っ、ありがとうございます」
リンジーが誘導してくれるソファに座るとバーナビーがほにゃほにゃなんか言って披露目が始まった。
私の後ろにはリンジーとアルフがいる。
二人っていつもいるけど休みとかないのかな?夜以外に側仕えが交代されるとかもないし、大丈夫?
「ご挨拶をさせて頂きたい」
「はい」
茶色の髪にキツめの紫の瞳に、ふさふさした耳と尻尾。
「ルーシャン・クライムと申します」
バーナビーの伴侶だ。
「ルーシャンに会いたかったの!バーナビーと一緒に遊んで欲しいな?」
「はい、是非に」
少しだけ口角を上げて笑うルーシャンは口煩いらしい、バーナビーが嬉しそうにそんな事を言ってた。
「私、欲しい物があるの!」
「…なんなりと」
顔強張っちゃった…
「ルーシャンの気安い態度が欲しい!」
「!」
アルフも気安くなったし、今度は君!
「駄目?」
「ふっ、いや、構わない」
バーナビーは受けだという事が判明致しました。いや、どちらもか?それもありだな!
「ボードゲームが強いって聞いたから楽しみにしてます!」
「私もそう聞いた、楽しみだ」
そういえばポーカーってあるのかな?好きそうだ。
「少し我慢してくれ、2時間程だ」
私は座っていればいいだけだから我慢にもならない、洋服も可愛いから退屈でもない。
「うん、バーナビーの為に頑張ろうね!」
「っ、そのとおりだな」
ルーシャンが居なくなると声をかけてくる人間がわらわらと集まってきた。
順番制じゃないんだね、私、君達に埋もれて消えそうだよ…
しばらく対応してたけどアルフが蹴散らしてくれたらしい、ありがとう!
色々おすすめされた飲み物と食事を口にしつつぼーっとしてるとまた数人集まってきた。
「天使様こちらはいかがです?」
「ありがとうございます」
今飲んでるのが終わってからね?ちゃんと飲むよ?
「今度、私の領地に遊びに来ませんか?」
「王様と行ける機会があれば是非」
「そ、そうですね」
こんな感じでそそくさ消えるから楽でいい。
「天使様こちらの髪飾りはいかがですか?」
「王様に似合いそうです、声をかけてみたらいかがです?」
「も、もちろんですとも」
王様って凄い…
「天使様、不自由はございませんか?」
「良くして頂いていますよ」
「それは良かった…世界を楽しんで下さい」
「はい、ありがとうございます」
天使様って凄い…そんなに安堵しなくても嫌な事なんてないよー。
声をかけてくる人達は天使様に会えた喜びにお酒の手が進んでるらしいです。
良きかな良きかな。
「天使様、不自由はございませんか?」
どうやらアルフが嫌いらしい、とってもお顔に出てますよ?もう少し表情と心拍を鍛えてみたらいかがかな?
「良くして頂いていますよ」
「ご不安などはございませんか?」
「ありません」
あって欲しいみたいなお顔もやめてもらえるかな?
はっ…!?でもここでアルフが嫌なのとか言えば変わってくれる!?
うん、冗談です。
流石にアルフが可哀想すぎるよね。仕事なくなっちゃったら困るだろう。
「そうですか……ああ、こちらは私の領地で採れた物で作った酒です」
「ありがとうございます」
「堪能して下さい」
去って行った人みたいに色々置いていくから、たくさんある食べ物も飲み物もどんどん食べていく。
「大丈夫?無理しなくていいからね」
リンジーが声かけてくれる。
それもそうか、普段はちょこっとしか食べないもんね。
「お腹いっぱいにならないの」
「聞いてない」
「ぅ゙…」
違いがあったら教えてね?から気付いた事は伝えてるけど、忘れてたよ!怒らないで!
「お腹空いたもないからお腹いっぱいにもならないの、だから大丈夫!心配してくれてありがとう!」
「もう、口に合わなかったら残して」
「はあい」
パクパク食べて飲んで飲んで貰った物を消費しつつ声を拾ってた。
この国は本当に魔法も技術も今まで見たどの世界よりも強く、そして美しく描いてくれる。
獣人もいる為、音を遮断するように話す事も当たり前みたい。
魔法陣は綺麗で美しく描かれているけれど、必ず綻びが存在する。
隙間は誰であっても埋められない。その合間を潜って声を拾っていった。
『天使様は淫魔に似ているな』
『王様の元に天使様がいらっしゃったのは当然の事だ』
『いやはや!貴方様まで出てこられるとは…!』
『なんで俺じゃないんだ!お前らもあいつより俺の方が相応しいと思うだろ!?』
歓迎ムードだな。
バーナビーを慕っている者達ばかりだし、天使様という存在にナニかしたいとも奪いたいとも思っていない。
いてもほんの僅かだ。
大丈夫そうだね。
私には毒が効かないけど、一応確認して、バーナビーたちのも確認しながら口に運んでいくけど、どれも問題なさそう。
あ。
「リンジー」
「どうされました?」
「私、毒が効かないの」
「「はっ!?」」
「薬も効かないし、病気にもならない珍しい屈強な部族だって言われてたよ」
「「…」」
という事にしました!今!
「本当に?全部?」
「うん、なにか試してみ」
「駄目だ」
はい。
アルフに話しかけてないんだけどね?
あ。
「媚薬は効くって聞いた事ある」
「分かった」
淫魔王だからねぇ、媚薬は喜んで受け付けちゃうんだよ。
困った体だよねぇ?匂いも他者に放てば気絶するか射精するか襲われるかだし。
『この国を幸福に…という事は、今は幸福ではないのではないか?』
『やめておけ』
歴史というのは歪む。
書物に残され、人づてに残される昔話は語り手によって変化され、聞き手によって変化する。
それはとても自然な事。
アレスに聞いた事はないけれど、この国を幸福に。ではなく、バーナビーを愛しているからこそ、より幸福にさせてあげたい。という想いがあるんだと、私はそう解釈するよ。
「リンジー、私の事浮かせる?」
「出来ますよ」
「ありがとう!」
椅子から立ち上がって、バーナビーと話したい貴族達の群れをお邪魔する。
途中からリンジーに手を繋がれながらだけどね。
「バーナビー!踊り知ってる?」
「ダンスは分かるが、ヒナノの知ってるダンスは知らないな」
「大丈夫だよ!踊るだけだもん!」
「ふっ…そうだな」
リンジーが心得たように私を浮かしてくれるから、バーナビーと目線が同じになる。
「神様から愛された素敵な王様、どうか私と踊ってくれませんか?」
「っっ、………喜んでお受けする」
腕の長さも違ければ、地面に足をついていない不格好さも、体の幅だって全て可笑しい。
それでもバーナビーの両肩に手を置いて笑うと、手で腰を持って動いてくれる。
「ふふ」
「退屈だったな」
「んーん、可愛い洋服が着れて楽しい」
「そうか」
私にも魔力があるように見せている。
弱いけど、体を動かすくらいの力はあるように見えるから大丈夫だと判断して、ぐいっ!っとバーナビーを引っ張るように体を引いて、くるくると回ってから、バーナビーも回ってというように、手をバーナビーの頭の上でくるくる動かすと楽しそうに回ってくれる。
「ね?大丈夫でしょ?」
「そうだな…ふっ!楽しいな!」
「でしょう!」
ルーシャンの元まで踊りながら行くと、バーナビーと私が同時に手を差し出してルーシャンを引っ張って三人で踊った。
「あ!そうだ!」
「「ん?」」
バーナビーの手をルーシャンの腰に置いて、ルーシャンの手をバーナビーの首に回す。
「お、おい」
「このまま、ね?」
「天使様の願いだ」
「っっ」
浮きながらリンジーの元まで戻って2人のダンスを見届けた。
私が来るまでも幸福だった。
けれど、もっと幸福になるんだよ。
分かってくれたかな?
「ヒナノ!」
「ライ、今度は何を見つけたの?」
「遊び!ヒナノもしよう!」
ライが現れて一斉に跪いた人達を盗み見すると、神聖さは感じるようだけど、やっぱり畏怖などはないみたいだ。
「先に私の遊びに付き合ってくれる?」
「わあっ!なあに?なあに?」
「踊るの!」
「楽しそう!」
「バーナビー!ルーシャン!まだまだ踊ろう!」
すぐにリンジーが……う、うん。アルフが浮かせてくれたから、ライと駆けるように踊りながら、バーナビー達と…
「リンジーも!」
リンジーも踊ってしばらくすると、みんなが踊りだした。
めちゃくちゃな踊りだ、作法もなければ相手さえ決まっていない。
駆ける私とライを楽しそうに見つめて足が勝手に動き出す人間達が疲れてしまうまで踊っていたよ。
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