化け物天使は常識知らず!

ユミグ

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アレスと酒盛りした日はアレスが眠った事でお開きとなった。

そして…

どうやらこの部屋なのか人間なのか分からないけど、大いに気に入ったようで、敷いてあるラグでいびきをかいてるアレスにはもう見慣れた。護衛の人達も慣れたのか平然と突っ立ってる。そう思うとキラキラって近寄れないというよりは、神聖さが際立っているんだろうなと改めて理解した。
久しぶりに眠った私と一緒に寝てたライはお散歩中らしく部屋にいない。

「本当に寝起き悪いね」
「…あい」

リンジーに起こして1時間は経ったよと言われました、すいません。
ソファに座ってぼーっとしてる私の元にアルフが顔を強張らせながら来た。
リンジーをチラッと見てみると、どうやら話し合ったというか、ふんっ!という顔をしてるから外して欲しいと言っている事は伝えてくれたらしい。

「天使様」
「うん」

ソファの横で跪くアルフは死ぬんじゃないかな?くらいに顔色が悪いよ?大丈夫?無理に話さなくていいよ?

「…お心遣い感謝致します。これからは態度を改めますので、引き続き警護をしてもよろしいでしょうか」

それはどうなんだろう…
今もツラそう…というか強張ってますよ顔が。

「少し…個人の事情がありました」
「うん」

運命嫌いもそこまで珍しくはない。

「失礼な態度も取ってしまったかと思いますが…」
「そんな事ないよ」
「…心からお守りし続けたいと…」

どうやら見守るらしい。
抗えなかったみたいだけど、見守る方向に変えたのだと表情が物語ってる。
キリリとした眉と、未だ顔色が悪いけど、覚悟を決めた瞳。

「命尽きるまで天使様をお守りする事を……改めて宣言させて頂きたい」
「げほっ…」

ああ、なんだか懐かしい台詞だなぁ…

「天使様…?」
「けほっ、げほっ!げほっ!ひゅっ…!」
「天使様!」

久しぶりに過呼吸になったなぁ…とか思いながら、咄嗟にアルフの腕を掴んで抱き着く。
今更愛する者を思い出さなくていいのになぁ…
愛して欲しくてここに来た。
でもそこまで深い愛情も要らないと心の中でわがままを言う。
どうせ死ぬ。
みんな死んでしまうんだから…

「天使様!」「ヒナノ!」

『私の命尽きるまでどこまでも』

リク…。




アルフが抱きしめ返してくれるから、今を見て、今の甘さを甘受しようと呼吸を整える。
私は大丈夫なんかじゃない。
だけど今は休憩中なんだから…
何も考えず楽しもうよ!

「はっ、はっ…ん、だいじょーぶ、ごめんなさい、めいわく、かけ、て」
「迷惑ではありません」

迷惑だろう!よりにもよってアルフに抱き着いちゃったからね!今度からはリンジーにするよ!気を付けたいよ!

「ん、わた、し、ヒナノだよ!けほっ、これからよろしくね?」
「はい…はい…」
「敬わなくていーよー」
「はい…」

アルフの腕の中で強く抱きしめられてから離された。大丈夫、抱きしめなくて大丈夫!

「どうしたの?」

リンジーが心配そうな表情で見つめてくる。

「両親が居たらこんな風に守ってくれたのかなー?とか考えたら苦しくなっちゃった!」
「「…」」

両親はいないとは伝えてあるからこういう感じにしておこう!まさか過呼吸になるとも思っていなかったよ!

「でももう大丈夫!」
「俺達がついてる」
「うん!」
「たくさん幸せになろうね」
「うん!」

幸せなんてたくさん手に入れたよ。
だから…

「ぶっ!ヒナノ!」

ライが真っ黒な毛を灰色になりそうなくらい汚して、でも楽しそうに戻って来た。

「わ、ライ汚れてるよ」
「これあげる!」

咥えて持ち帰ってきた物は多分雪だろう。
汚れてしまったけど…
私へのプレゼントだ、ふふ。

「ありがとう、どんな場所だったの?」
「友達が出来たの!それとね?雪遊びしてー!熱いお湯に入って楽しいねーってした!」
「良かったね」

温泉かぁ…しかも寒いところでの温泉…
いいなぁ…寝るとか言ってパパっと行ってみたいけど…色味は偽れないし、ライにも秘密にしてね?と無駄な秘密が増えちゃうだろうから今はやめておこう。

「お湯ある?」

お風呂に入る?とは聞かれた事ないなぁ…
どこの世界にも洗浄魔法があるから、お風呂の習慣があるところは少ない。

「どうだろう?」
「ございますよ」

リンジーが声をかけてきた、お風呂があるらしい!早く言って!でもありがとう!

「一緒に入ろうよ!」
「用意してもらってからね」
「うん!毛づくろいも!」
「お風呂上がってからね」
「楽しみ!」
「俺も入るぞ!」

ガバっと起きてきたアレスもどうやらお風呂は好きみたい。

「みんなで入ろう!」
「うん!」「酒だ!」

大浴場があるらしく、そこまでの転移をリンジーがアレスにお願いしてた。
私を転移で運べてもアレスたちを運ぶのは流石に恐れ多いみたい。
浴場についたらアレスが服をババッと脱いで湯船に飛び込むから、ライが真似して3メートルはある体で上からバシャンっ!と飛び込んだ。
ほとんどお湯がなくなっちゃった…あんなにたくさんあったのに…
せっかくだし、私も温泉に浸かりたいから、世界を探して温泉の湯を湯船に入れた。

「世界様!見てくれているのか!ありがとうございます!」

私ここに居るよー。
私の力も魔法と同じで隠せるから誰がしたのかまでは、アレスが見えたとしても分からないだろうけど、ライの事もあるから私がしたと思ったんだろう。
どういたしまして。
水着に着替えてあるからそのまま湯船にと思ったんだけど…

「うん?」
「…危ないので」

後ろからアルフに持たれて湯船に浸かる。
どうやら水着姿が気に食わないらしい。
眉間の皺が凄い。
見守るんでしょ?頑張って!

「「…」」

座れないよ!座ったら顔まで温泉に浸かっちゃうよ!平気だけど!でも出来れば顔は出しておきたいな?

「膝に来い!」
「ありがとー」

アレスの膝に座ってやっと浸かれた。
いや、立ってても浸かれたけどね、うん。
それにしても気持ちいー…

「こちらをお使い下さい」

どうやらアレスの膝も気に入らないらしいアルフは椅子を湯船に入れてくれた。

「ありがとう!」
「…いえ」

でもこれ、今度は胸まで浸かれないと思うんだよねー。

「「…」」

ね。

「世界様はどちらにいらっしゃるのか…」

アレスから聞こえた、寂しさと恋しさを感じる声音に驚いた。

「なんで?会いたいの?」
「お会いしたいと思わない神はいないだろうな…」
「どうして?」
「愛情が伝わってくる、生まれてからずっと…愛を感じるのだ」

愛?

「正しさとか固定概念とかじゃなくて?」
「そういう感覚ではないな!ただ愛されているのだ、我々は」

私は愛を振り撒いてるらしい。
呪いなら分かるけどなんで愛なんだろ?

「こちらを」

小さい椅子を用意してきたアルフは胸元が見えてるのも気に食わないらしい。
見守る精神どこいった?
変えた椅子に座るとちょうどいい高さだから。
まぁ、いいか。

「お会い出来たら…」

アレスは寂しいのか…
私の存在さえ知らないと思ってたから、こんな風に会いたいと、寂しいと、愛していると思われているなんて…
色々と世界を見て周ってた頃に神々と話した時はそんな事なかったから…ああ、そうだった。溢れ出る力を抑えていなかったからこうやって普通に話す事も出来なかったんだった。

「お会い出来たら何を話そう」

そんなのは決まってるよ。

「今日はいい月ですね」
『今日はいい月ですよ』

リクが初めて私に投げかけた挨拶。とても大切な私の挨拶。

「ん?」
「きっと喜ぶよ」
「そうか…」

いつだって満月の月はなににも邪魔されず、どの世界にもある。
2つも3つもある世界も存在するけど。
その言葉はいつだって私には大切だ。

「会えたらヒナノも招待しよう!」
「どうして?」

招待されるのか…私と会って私を招待…

「こんな事は一度とない、ライもヒナノの為に産まれたのだ」

私の為というよりは私の寂しさで産まれ出たんだけどね。

「また来る!」
「どこ行くの?」
「飲みだ!」
「いってらっしゃい」
「む……ああ!」

そう言って消えてったアレスに連れられてライまで天界に戻って行った。
毛づくろい用の櫛を今度ライに渡しておこう。

「良ければ髪を洗います」

アルフ…君、なんだか独占欲が見えるよ?

「自分であら」
「いえ、させて下さい」

リンジーはどこ…
護衛も浴場の外だし…
見守る愛どこ?
湯船から出ると手を差し出されたから掴んだら抱き上げられて座らされた…
せっかくだからお手製のシャンプーを取り出して説明したら洗い出したアルフは…
ううん、興奮しないでぇ。

「欲しい物はございませんか?」
「アルフの気安い態度かなぁ?」
「…」

明日はお披露目なんだとか。
そういえばあの部屋から出たの今日が初めてだ。

「…欲しい物はないのか?」
「今手に入ったかなぁ?」
「…」

ううん、何故そこで興奮。
淫魔だからね。興奮は匂いでも分かるけど、目でも分かるからね。やめてもらえると助かるな?

「何が好きだ」
「美味しいご飯と美味しい飲み物と本が好き」

愛する者達や、大切になった人間達とのひと時が大好き。

「着飾りたくねぇのか?」
「いつだって着飾ってると思ってたんだけど…洋服おかしい?」

洋服は手持ちのを出しているし、髪型もリンジーがしてくれるからいつだって着飾ってる。心も着飾ってるから弱くいられている今が大好き。

「似合ってる…他に欲しくならないのか」
「リボンは好き」
「髪を綺麗に結ってるのは…」

大丈夫。
褒めなくて大丈夫だよ!
そんなに興奮しながら褒めないで大丈夫だから!

「そういえば私の体って変に見える?」
「ぶはっ!」

ごめんなさい、そういう意味で聞いたんじゃないんだよ…
ただ女の体って知らないだろうなって…いや、この言い方もちょっと語弊がありそうだけども!純粋に!女がいないから!いや!もしかしたら淫魔と遊んだ事があるかもだけど!ご、ごめんね!?

「ゆ、誘惑してる訳じゃなくてね?」
「わか、分かってる」

ごめんよ。

「女…女性がいないから変に見えるかな?って気になったの」
「変じゃねぇよ、綺麗だ」
「…」
「…」

それもどうなんだろうか。
確かに運命ではあるけど、君達から見たら子どもの体を綺麗だと思うのも、それはそれで変な性癖を目覚めさせてしまいそうですよ?
獣人と違って竜人は運命と出会っても他の者とも出来るし。

「失礼します!」
「「…」」

どうやらリンジーは心配だったみたいで中に入って来て、私しかいないのを見て更に警戒してる。
アルフを警戒してます。

「あとは俺がやる」
「…」
「…」

見守るって難しい事なんだねぇ…

「あとはヒナノがやるね!」
「「…」」

全部洗ってもう1度湯船に…

「危ない」
「…」

持ち上げるのはいいけど、それってリンジーに見せない為とかじゃないよね?
………まぁ、ゆっくり見守れるように頑張れー。
とか思いながら湯船のイスに座って寝ちゃった私が起きたのは披露目の2時間前でした。
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