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しおりを挟むバーナビーはキーンより繊細な魔力制御ができない為、しばらくは立ち入り禁止とした。
というより、外で待機している護衛以外に近いのは私とキーンだけ。
「大丈夫です。そのまま眠ってください」
やはり腹の子は暴れてしまう回数が多い。
ルーシャンが起きている時は極力ルーシャンが収めるよう声掛けを、眠っている時は私が。
魔法に頼りきりなこの国では手作業での世話というのは想像以上に大変らしく、珍しくキーンが慌て、魔力制御が甘くなり何度も部屋から退出している。
「暇だな」
「ふふっ、盤上の遊びでもしておいたら?」
「相手がいないな」
「あら、相手も己にするのよ。強くなれるわ」
「ふむ」
横になっているだけというのは退屈になってしまう。
子が落ち着いている時は盤上の遊びをやり、子が暴れている時は落ち着かせる地味な毎日だ。仕事も急に止まってしまったせいで色々と大変になってしまったバーナビーからは毎日手紙が届くけれど、残留魔力も危険と判断し、室内には入れていない。
けれど、少しだけ落ち着いた今、久しぶりにバーナビーとルーシャンが再会した。
「ルーシャン」
「案外大丈夫だ、不安にさせたな」
「そんな事は」
「バーナビー、それ以上制御できないなら出て行って」
「「………」」
外部との接触を禁じているというのは、内側の状況がなにも分からないという事だ。
例えキーンが毎日報告していたとしても、不安は消えないだろう。
そんな気持ちも分かるけれど、今、優先すべきはバーナビーの感情ではない。
「すまないな、もう大丈夫だ」
「まずはルーシャンの手を握るところから」
「ふっ、触れるのは久々で違う緊張があるな」
「馬鹿な事を言うな」
やだ♡相変わらずらぶらぶなんだから♡
バーナビーが用意された椅子に座り、ルーシャンの手を握った。
「「大丈夫(だ)」」
「っっ」
やっぱり暴れたな。
ルーシャンには慣れたけど、他は駄目か。
私も魔力を隠してなんとか…というところだし。
「お前の父だ、寂しいぞ」
バーナビーの声が無駄にならないで欲しいと願ってしまう。
「生まれる前から手のかかる子だ」
まだ暴れてる。
これ以上は………
「愛している。まだ見ぬ我が子よ」
「「あ」」
「ど、どうした」
「「落ち着いた」」
「そ、そうか!よか」
「「しーっ!」」
「………」
言葉というより心は通じている。
「今日から一緒に眠りましょう」
「本当か?」「大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、いつまでも外部の魔力を毛嫌いしてる訳にもいかない」
「そうだな」
生まれた後にも暴れてしまう可能性がある。
その時に慣れていない魔力たちに溺れてしまう感覚が襲い、死んでしまうかもしれないという事を皆、知っている。
ルーシャンに渡した本は全ての者たちの手に渡るようにしたと聞いた。
平民にも配り、未来の子を殺さない為にバーナビーが決断した。
この日からバーナビーも一緒に眠るようになった。
最初は暴れる回数が増えたけれど、徐々に落ち着き、今では私かルーシャンかバーナビーがお腹を触ると眠るか、魔力を鎮めてくれるとても賢い子に育っている。
「そろそろ双子ね」
「…」
「ふふ、不安?」
「少しな」
「大丈夫よ、じーさんも一緒」
「もっと不安になった」
じーさんは感情豊かだからね。でも…
「様々な魔力質があるのだと覚えさせる頃よ」
「………その通りだな」
お腹も少し大きくなってきた頃、ようやく家族と会わせる事ができた。
「「大丈夫?」」
「平気だ、こちらにおいで」
「「っ、父上!」」
双子にも寂しい思いをさせてしまったな。
「お、落ち着くんだ!子が危ないぞ!」
「「そーだった!」」
暴れているというよりは……不貞腐れてるような気がする。
あの日からルーシャンのお腹を見ていない日がない私は、だいぶこの子のことを理解してきた。
「ルーシャン」
「拗ねてるな」
「やっぱり?」
「ふっ、わがままな子だ」
「意味わかる?」
「愛情を注ぐ相手が他にもいるのかと」
「ああ」
子どもらしい拗ね方ではあるが、成長しすぎだ。まだ腹の中だぞ。
うーん……今まで見た四天王よりは強いんだろう、きっと。
だってこの世界が、新しい世界が強いんだ。それも当然の事か。
「1日1時間」
「妥当だろう」
じーさんも王城に来たくないなんて感情は些細な事なのか、双子と一緒に部屋まで来ては、寝室の扉を叩く。
その頃にはバーナビーの事を無害認定してくれているらしく、バーナビーが側にいてもなんら問題ないところまでこれた。
が、今度は私が問題だ。
私の魔力は嫌いらしく、少し制御を解いたところ、馬鹿みたいに暴れ、ルーシャンの顔色さえも悪くなった。
今までのように魔力を隠して触れてはいるが、ちょっと悲しいよ。しくしく。
「では、感情の制御を学びましょう」
腹の子は言葉を覚えた。
ね、びっくりだよね。
そんな事になるのかと驚いた私はバーナビーと相談して、ばら撒いた本の訂正版を作ろうという事になった。著者はルーシャンね。一番詳しいから。
私のような“ズル”が側にいない対処法を思いつくのはキーンだろうと、最近はルーシャンとキーンで本作りをしている。
ちなみに一度だけ、アルフが部屋の外で護衛した時、嫌がって暴れた。
その距離でのメルとニウは大丈夫だったから、どうやらアルフの体内にある私の魔力がやっぱり嫌いらしい。しくしく。
「ゆっくりと落ち着かせてー、そのままですよ。…………はい、今日はここまで。おやすみなさい」
だいぶ安定してきた子は眠っている時によく暴れる。
だからまだ私はルーシャンの部屋に滞在しているんだ。
「ヒナノ」
「うん?」
「毎回不思議に思ってたが…どうして敬うんだ?」
「ん?」
「おなかの子に敬意を払ってるだろう?」
「………確かに」
魔国に、デズモンド様の側にいた頃はみんなが私より上…というか、周りにいる人達は当時、魔力のない、人間だと思い込んでいた私より凄い人達だったから自然と敬っていた。どうやらその癖がこの子にも出ちゃってるらしい。
「癖みたい」
「そうなのか?ヒナノが敬うなんてよっぽどだ」
「ふふ、私って人間だと勘違いしてた頃があってね」
「「「!?」」」
3人してそんな驚いた顔しなくても…。
「そんな時に出会った魔王様と一緒に子育てしてたのが今みたいな感じ。ああ、でも、こんなにずっと監視してるのは魔王様だけだったよ。私は眠くなるし、お腹も空く人間だと勘違いした体だったから」
ああ、懐かしい。
いつだって守られてたね。
弱々しい私を守るのは大変だったろうなぁ…。
「ヒナ、ノ…」
「ルーシャン!?」
お腹の中で一気に魔力が膨れ上がった。
「大丈夫、産まれる時よ」
「!?まだ先だ!」
「その常識は捨てて、今から取り出す。一瞬よ」
ルーシャンのお腹に魔法陣を置いてバーナビーとキーンに魔力を流してもらう。
というより不思議だったんだけどね?どうしてお尻から卵を出すの?魔法で取り出せばいいじゃんね?なんて思いながら、一瞬で卵が腹から出てきたのを見て、ふぅーっ…と息を吐いた。
これからも目は離せないけど、ルーシャンを殺さずに済んだ、と。
安堵した。
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