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召喚されたけど引きこもっててもいいですか?
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しおりを挟む「お待ちしておりました」
「は、い」
「よろしければエスコートをさせて頂きたいのですが」
「あ、は、はい」
「失礼致します」
今日は国王と会う日。
手紙を出したら是非会って話したいと、すぐに返事が返って来た。
内容は一番栄えてる市場を案内したいという事だった。そして、出来れば2人きりがいいと…
何か言いたげなみんなを振り切って私でよければ…と、返事を出してもらい、今日はこの世界に来て初めてみんなと離れる……と言っても守護神官達も居るし、なんならその中にダグラスが居るから安心ではある。
この国と神殿の関りはとても微妙な関係みたいで、神殿に国王が近付くのもあまりよろしくないみたい。
なので馬車まではこの間、国王に耳打ちした人にエスコートされながら降りる。
馬車にあの人が居ると思うとすでに帰りたい気分になってくるけど、今日だけは陽キャの皮を無理にでも被ろうと思バタアアアン!!!
「聖女!待ちわびたぞ!」
「んにっ!?す、すみませ、」
「あんた大人しく待ってろって言っただろ!?」
「へあっ!?」
エスコートしてくれた人が国王に向かって軽い口調で叱る?からびっくりした…
ガタイのいい国王と違って、しゅっとしてて線が細く神経質そうな見た目とは裏腹なんだと思う、ていうかそうなんだろうな。
「っ、失礼致しました!我が王が失礼を」
「お前は余に失礼だろう」
「あんたは黙ってろ」
「あう…だ、だいじょぶ、です、あ、あの、今日はよろしくお願いします」
驚愕の目を送る2人にペコっと挨拶する。
「うむ!さあ、来い!」
馬車の中から笑顔で手を差し出され、ああ…やっぱりこの人には敵わないなぁ…と思いながら手を乗せる。
強引に引っ張られるかと思ったけど、ふわっと持ち上げられて、いつの間にかふわふわなクッションに埋もれると同時に、国王の女たらし具合にも気付き、恐るべし色男…と密かに思った。
「私もご一緒に乗る無礼をお許し下さい」
「あ、いや、お構いなく」
変な言葉になっちゃった私に突っ込む事もなく自己紹介される。
「ありがとうございます、私は我が王の右腕としてお側におりますアルナブ・カスケンと申します」
「聖女です、よろしくお願いします」
アルナブは青い髪に青い瞳の綺麗な人でとってもモテそうだなと思う。
「何故お前まで乗るのだ」
「あんたが何かしないか見張る為ですよ」
「何をすると言うのだ」
「何をするか分かんねぇから見張るんだろ」
テンポのいい会話はなんだか久しぶりで目が回る。
「して聖女よ!その服以外着てはいけないという決まりでもあるのか?」
「え、と、特にはない、です」
「そうか!我が国では染め布が流行っていてな、是非着てみて欲しい」
「あ……この間頂いた布、とても綺麗でした……ありがとうございます」
「うむ!あれは我が妻の1人が商いをしていてな、それがとても良い物を作る!」
「その方にもお礼を言っておいて下さい」
「そうか!喜ぶと思うぞ!」
やっぱりどの国でも国王は一夫多妻なんだなぁ…
「今から行く市場は魚が有名だが、それ以外にもたくさんある!聖女は欲しい物はあるか?」
「え………ど、どうでしょう……」
「ふむ……やはり噂とは当てにならぬな!それに世界が違うのかこのような幼子も初めてだ!」
「う”…………26歳ですから幼子ではない、んですけど……」
「え!?」
アルナブが声を上げてから、しまったという顔で口に手を当てる。
「あ、その、砕けた話し方で構いませんから、えと……お気遣いなく」
「い、いえ、失礼しました」
「お前は融通がきかんな!砕けていいと言っているだろう!」
「あんたみたいに周りが全員柔軟な頭だと思うな」
「にしても聖女は小さいな!」
「ち、小さくありません!ふ、普通…………です」
「「普通…………」」
いや、それは無理があるだろう。みたいな顔はしないで頂きたい。
「そうか、だが顔も幼いからそう思うのかもしれんなぁ」
「……………………」
「なら魚は好きか?新鮮な魚もたくさんあるぞ」
「はい、好きです」
「そうか!市場も気に入るだろう!」
「どうでしょうね、女性があんな生臭いところを気に入るのはあまり聞きませんが」
「あ、え、えっと、海に入ったりもした事ありますから、多少は大丈夫だと思います」
「「海に!?」」
「え………」
「む、そうか、聖女の世界とはまた異なるのだろうな、少なくともこの国では加護のある海に入る者は居ない」
「加護……あ、じゃぁ飛び込まないように注意します」
「ははっ!そうしてくれ」
「で、でも、どうやって魚を採るんですか?」
「ん?ああ、そうか、聖女は魔法が使えないのだったな」
「あ、魔法で………」
「うむ!聖女の世界はどう採るのだ」
「え、と、私の世界に魔法はありませんから科学の力と船と……あとは素潜りですね」
「フネ?フネとはどういう物だ?」
「え……す、すみません、作り方は知らないんですが、こう、海の上を走る乗り物です」
「ほう……」
その後もずっと市場の話に途中アルナブが突っ込みながら進む。
「着いたか!」
「少しは大人しくしろ」
「無理だ!」
また扉が壊れる勢いで馬車を開けて先に出るとすっと手を差し出され、重ねようと手を伸ばすと…
「ふにゃあっ!」
「ははっ!」
手を握るんじゃなくて、そのまま私の体を掴んで抱き上げるから心臓に悪すぎた……
「はえ……」
「ははっ!いい反応をするな」
「あんた聖女様になにすんだ!」
「しかし軽いな、うむ、やはり魚をたんまり食ってもらおう!」
「無視するな!」
「はひ……」
市場の手前に降ろされたのかまだお店は見えない……んだけど…
「お、降ろして下さい…」
「む、嫌か?」
「い、嫌です」
「それなら仕方ない!」
トン…と、やっと腕から降ろされ息を吐く。
「はふ…」
「さあ、行くぞ!」
「は、はい」
アルナブは並んで歩かないみたいで、後ろに着いて回る。
神官達は対外的に問題があるらしく、遠い場所で見守っているらしい、なので傍から見たら3人で歩いているように見える。
しばらく歩くと少しずつ人が増えていき会う人会う人礼を私と国王に向ける、それに手を振る国王に倣い私もおこがましいけど、とってもいたたまれないけど手を振る。
「あ、あの、手を振ってはみたんですが、勘違いではないですよね?私にも頭を下げてますよ、ね?」
「うむ!聖女のお陰でここら一帯はほとんど浄化出来ているからな、存在は知っているし今日来る事も通達済みだ!」
「そ、そっか、よかった…」
「うん?何が良いのだ?」
「あ…勘違いだったら恥ずかしいなって思って……」
「そのような事はないから安心せよ!むしろ普段は礼などされん!」
「そうなのですか?」
「うむ!気さくに話しかけて来いと言っておるからな!」
すっごい分かる、この人そういうタイプな気がする。
「う、わああぁぁぁっっ!」
「ふふん、凄いだろう?」
「凄い!人いっぱい!わあ!屋台だ!ほんとに屋台なんだぁ、異世界だ!」
目の前に広がるのは道の左右に1つ1つが大きい屋台がずらああぁぁっと並んでる!
ここからでも色とりどりな野菜や布も見えるけど、どこまでも続いていそうな屋台の列は圧巻だ
。
人がたくさん居てガヤガヤとしてる活気に溢れた町に私も気分が上がって楽しくなってくる。
この風景を写真に収めてみたいなぁ……なんて思いながらしばらくそこで立ち止まってた。
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