巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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召喚されたけど引きこもっててもいいですか?

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「あ、す、すみません!」

街並みに気を取られて国王を放ったらかしにしちゃってた…

「よい、そこまで感動してくれると私も案内して良かったと思える!行くぞ」
「は、はい!」

ここに居る人達は本当に私が来ると分かってたみたいで、みんな礼をしたり、声をあげたりして、さっきよりも大きな音がお腹まで響く。

「鎮めましょうか?」
「あ、いえ、いきなり来たのは私の方ですから」
「……そうですか」

手を小さく振るけど、これっていつまで振ってればいいのか分からなくなるくらい歓声がずっと続くから恥ずかしいけど、私的に仕事はこれくらいだし……と恥ずかしさをぐっと抑えて手を振り続けた。

「皆!聖女が浄化をしてくれた事は言わずもがな分かっているな!感謝を伝えたいのも分かるがせっかくだ!この国の良さを教えたいのでそろそろ見て回るぞ!」

国王が声を大きくして街の人達に伝えるとゆっくりだけど歓声が収まる。

「あ、ありがとうございました」
「なに、それは私の台詞だな!せっかくだ!見て回ろう、気になる物があればなんでも言うといい」
「は、はい」

屋台に近付くと果物や服、香辛料などが目に付く。

「魚はまだ奥の方だ」
「そうなんですね」
「聖女様!来て下さりありがとうございます!こんな街並みを見る事が出来るなんて思いませんでした!」
「え、あ、は、はい」
「ふむ……店主一番いい物をくれ!」
「国王様!ありがとうございます!是非聖女様も召し上がって下さい!」
「え、と、はい、ありがとうございます」

屋台を巡りながら歩いているとアルナブが説明し、私がそれを聞いてる間に店の人に話しかけられる……のを10回くらい繰り返した時に国王から提案される。

「聖女!少し休むか」
「お、お願いします」

多分どんどん萎縮していく私に気付いたんだろう。

何もしていないのにお礼ばかり言われている気になるから、少し疲れて…というよりは申し訳なさが込み上げてきた。

「うむ!そこの開けた場所にベンチがあるからそこに座ろう、人の目があるが奥まった場所に聖女を連れて行く訳にもいかんからな」
「お気遣いありがとうございます」
「うむ!」

ベンチがあってその周りも屋台が囲んであるから確かに人の目はあるけど、話しかけられないのは正直助かる。

「こちらに」
「ありがとうございます」

ベンチなのにわざわざラグのような物を乗せてくれる。

「ほとんど貰ってしまったな!どれがいい?食べたい物はあるか?」

見られてる中食べるのは苦手だけど、ここで食べないと屋台の人に嫌な気持ちをさせちゃうかもしれないし……でもあんまり食欲もない……

「え、と……す、すみません、よく分からないので選んで下さい」
「そうか、分かった!ならこれがいい」

丸い黄色の果実を渡されどう食べるのか困惑する。

「え、えっと」
「馬鹿ですかあんたは、このまま食べれる訳ないでしょう」

そう言って私に許可を取りその果物をアルナブが剝き始めた、ナイフで剥くならそのままは食べられないだろうなぁ……

「どうだ?この街はいいだろう!」
「あ、はい!とっても素敵だと思います」
「そうかそうか!私も好きだ!」
「少し潮の匂いがします」
「む、分かるのか!」
「分かります」
「そうだな!もう少し先に海がある、そこもとても綺麗だぞ」
「そうですか」
「聖女様、こちらを」
「ありがとうございます」

中は白い実になってるらしくこの国に来てからよく食べてるカリンだった、洋ナシのような凄くフルーツの濃い匂いがする果物だ。

「シャリッ……」
「聖女は人が苦手か?」
「もぐ…そうですね……苦手です」
「だろうな!」
「シャリッ……」
「噂はどこまで本当なのだ?」
「ん…噂を私は知りません」
「そうか、うむ、そういうものだろうな!」

そんな会話の後、国王も手に持っていた物を食べ始め、無言になる。
この人と居て無言になるのは初めてかもなぁ……
周りの音はうるさいけど、活気に溢れてるソレはとても心地いいし、海の匂いもして体が少しリラックスする。
本当はみんなで来る予定だったけど、それでもこの人と来れて良かったと思った。
この人だからこそ私はこの街の魅力をたくさん知れたと思う。

食べ終わり次は市場を過ぎて海を見る事になった

屋台を抜けて海まで一直線に歩くと私が想像していたままの青々しい海が広がっている。

「どうだ、綺麗だろう?」
「とても……泳げないのは残念ですが」
「ははっ!そうか、泳いだら気持ちが良さそうだな」
「とても……」

砂浜というより海の手前は今まで見て来た砂が溢れていたけど、その先に広がる海は精霊が居ると言われてもおかしくない程の透き通った海で、こんな透明感のあるなにかを見たのは初めてだった。

「大精霊様は戻って来ないのか……」
「……私が来たら戻って来ると思いましたか?」
「!……そうだな、少し期待した」
「……私が聞いたお話の通りなら他世界の者が来ても許してはくれないでしょう」
「…………そうだな、その通りだ」

「聖女様はお噂と違い聡明な方なのに、どうして閉じこもっておられるのでしょう」

アルナブがそんな事を私に問いかける。

「閉じこもってるように見えますか?」
「ええ、神殿に守られ夫に守られ……最初はあちらが出さないようにしていると思ったのですが……」
「もったいない、と思いますか?」
「失礼ながら……」
「そう……そうでしょうね」

きっとそうなんだと私も思う、もっと街を歩いたり、人と関わったりするべきなんだろうと思う、それが異世界なら尚の事だ。

だけど、私は人が苦手だ、苦手というより嫌いな傾向にある…元々内向的なのもあるのだろうけど、こんな風に見られながら歩くのも拝められるのも好きじゃない。

みんなと来ていたら早々に疲れたと言ってギブアップしてただろう。

私が聖女として見られず何も気にされずに歩けたらまた違うんだろうけど、こんな視線がずっとでは正直ストレスが溜まる。

アルナブにそれ以上なんて返したらいいか分からないからぼーっと海を見続けた。





「そうだった!魚を見る前に服を着替えよう」
「へっ!?」
「言っただろう?この国の服を着てみてくれと」

確かに言われたけど、今だとは思わないじゃん。

「そこの店を貸し切りにしている、妻の服を見て気に入った物があればそれを着るといい!」

そう言いながら歩き出す国王に釣られて歩き出す
服……確かに興味はあるけど…………布、可愛いのあるかなぁ……

本当にすぐそこにある、一軒家のような場所に護衛が固められていた。

「ここだ!」

そうだろうなぁ……

「アーヴァ!連れて来たぞ」

部屋に入ると待っていてくれたのであろう綺麗な女の人が居た。

綺麗にまとめられた髪に化粧が濃く乗っている色はキツめな顔にとてもよく似合っている、茶髪に金色のような茶色な瞳は妖艶さを醸し出していて、マーメイドドレスは染め布で作られているらしい赤。

女の私でもドギマギしちゃうんだから絶対国王もべた惚れに違いない………ていうかこんな美女を妻に出来る色男凄い………ていうか背がでけぇな!

「此度はウェイヤグルン国に浄化という幸福を運んで下さり心から感謝致します、拝顔出来た事大変嬉しく思います、どうか私の事はアーヴァと呼んで下さいませ」
「あ、わ、私は聖女です、よろ、んんっ………よろしくお願いします」
「まぁ!なんて可愛らしいお声なんでしょう!いつもアディの声ばかり聞いているから耳まで浄化されるようですわ」
「え、あ、え、えっと、アーヴァもとても綺麗です、凄く美人で国王が羨ましい限り、です」
「まぁまぁまぁ!聖女様はとてもお口が上手ですのね!」
「アーヴァ服を見せてくれ!」
「もう、せっかく聖女様とお話してたのに、むさ苦しいわ」

凄い………横に並ぶと美男美女だ………国宝級だ………凄い………

美術品を眺めるかのようにぼーっと見てたら、いつの間にか服をずらっと並べられてお好きな物はありますか?なんて聞かれるけど、正直ありすぎて全て見るのも一苦労だと思った。
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