巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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召喚されたけど引きこもっててもいいですか?

29【リックウェル】の場合※

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父から聖女の夫となるよう言われ普段立ち入る事のない神殿に入る。

伯爵の座を私にと譲ったのにも関わらず、未だ口出ししてくる父を大人しくさせる事は出来ない。

それも私が妻を頂いていないからだ…

夫にと選ばれない男というのは案外立場が狭い、そういう理由で妻が居る父に頭は上がらない。

披露目の場には大勢の貴族、神官が集まっている


見渡すと妻が居る者も多数居た、聖女の夫という地位はそれほど重要だという事を再認識させられた瞬間でもある。

顔見知りの貴族を見つけ、雑談をしながら時間を潰していた。

そうして待っている私の、私達の元に聖女様が現れた、その時の私の心情は想像していたよりも………ずっと騒がしかった。

劣情・愛情・激情。

愛したい、愛して欲しい、この人しかいない…

悲しむ心も苦しむ心も痛む心も幸福も愛情も友情も………全てが欲しい…全て私の物にしたい。

言い表せない程の感情が溢れ、息を吐き出す毎に漏れて床に落ちていった。

どうしたらいいか…どうやって手に入れるか…どうしたら心を明け渡してくれるだろうか…

そんな事ばかりを考える。

愛する人が出来ても冷静に対処出来ると思っていたが、そんな事など出来なかった。

ひどくうるさい心を落ち着かせようとはせず、ただ己の感情と向き合う。

そうやって己と向き合う事に時間を割いてしまっていたから随分と遅い挨拶になってしまった。

私は人の機敏を読み解くのが得意だ。
なにを思いなにを求めてどんな言葉を待っているか、そんな事を探るのは容易い。

どんな言葉を聖女様に投げかければ良いのかも分かってはいた、分かってはいたが、それとは別に私の心を知って欲しいという欲も出て来てしまい、制御出来るか分からなかった時は、生まれて初めて焦った。

こんなにも感情をコントロールする事が難しいのかと………








「今日はとてもいい月ですよ、聖女様は御覧になられましたか?」
「…………………え?」

反応を返す聖女様に安堵する。
それと同時に腕の中に閉じ込めてこれから覚える感情全て私へと向けられたモノであったらいいという欲が生まれる。

「たまには月を眺めるのもよいかと…………ところで、聖女様は夫を増やす気はありますか?」
「…………………」
「私は国でもなく聖女でもなくあなた様に忠誠を誓いたい、どうかお傍に置いて下さいませんか?」
「私に…………………?」
「はい」
「…………………なんの意味があるの?」
「意味などありません。ただ私の幸福はあなた様の傍にあると信じています」
「わたしの…………………」
「ただ、愚かな男が一目惚れしただけです」
「…………………わたし、は、あなたの理想を壊すかもしれません」
「理想は今のところ抱いておりませんが、そうですね。そうなった時は私があなたをこっぴどく振りましょう」
「貴様、言葉には」
「いいの、ネイサンありがとう。あの、私の旦那様になってくれますか?」
「私でよければ……あなたと共に生きていきたい」
「わたし…………………」
「ユ、聖女様!」

倒れた聖女様を抱えるのはコレではなく私でありたい。

そんな感情に突き動かされ抱きしめてしまった私は考えなしだった。

「触らないで頂きたい」
「私を夫にと望んで下さったのは聖女様です、この瞬間から私は触れる許可も出ているはずですが」
「それはまだ」
「『旦那様になって欲しい』と望まれたのは聖女様ご自身です」
「っっっ」
「そんな事より聖女様をお運びしたいのですが」
「………こちらに」

睨みながらも私から聖女様を離さずにいてくれるのは何故か…

その答えはすぐに分かる。







「では、抱かれなくてはならないと?」
「ええ………無理矢理に召喚してしまった咎がユイに………」
「私で全ての属性を体内に取り込めると?」
「そのはずです………ですが元々魔力を有していない体に魔力を留めておくのは難しく………」
「抱かれなければすぐにこのような体になってしまうという事ですか」
「………そうですね、体が触れあっているだけでも少しは楽になるのですが…気休め程度にしかなりません」
「分かりました………眠っている間に、というのはさすがに憚られますので抱きしめている間に目を覚まされましたら許可を頂きます」
「………私達で抱くと体力も消耗してしまう可能性がありますからお1人でお願いします」
「はい」
「ただ、信用はまだ出来ておりませんので、見張らせてもらいます」
「結構ですよ」

すぐに裸になり聖女様を腕の中にしまう。

出会ったばかりなのに、やっと手に入れたと………

やっと私の腕の中に来てくれたと、そんは錯覚をしてしまうほど私は彼女を欲していた。

どれほどそうしていたのか分からない。

永遠にこのままでもいいと思っていたからすぐなような気もするし、とても長い時間腕の中に閉じ込めていたとも思う。

聖女様の瞼が震えたのが分かると顔を覗く。

少しだけ目を開いた聖女様に挨拶と、これからの事を早口で伝える。

「聖女様に選んで頂けたので夫となりました。リックウェル・イロスと申します。聖女様のお体について伺いました、早々で申し訳ございませんがこのまま体を繋げても?」

「………………ぃ………………」

「お声を出すのもつらいですか?」

肯定するように瞼がゆっくりと落ちる。

「お嫌であれば目で訴えて下さい、見逃す事のないよう見ておきますから」

起きても体の力さえ入らないようで、ぐったりとしている聖女様へ軽く口づけを交わす。

………………嫌がる顔はせず頬が高揚しているようで安堵する。

体内に魔力を注ぐ事も重要だと聞いたので早急に体を繋げられるよう様子を見ながら愛撫する。
どのような事も見逃さず、嫌がられないようにする為、目を合わせたまま体に指を這わせると私に体の震えでいいところを教えて下さる。

体が熱くなり足の間に手をやると濡れそぼっているのが分かる。
傷つけないよう優しく指を這わせていくと、息が荒くなり私の指をどんどん湿らせていく。

聖女様の中に指を入れればきゅぅきゅぅと締め付けてくる。

私は喜びからくる緊張に体が震えるが、悟られないよう聖女様の瞳だけを見つめていた。

睫毛がふるふると震える姿は美しく、瞳は私だけを映している事に歓喜した。

水音が響く部屋の隅には聖女様の夫が私を監視しているが、そんな事が気になったのは一瞬の事、すぐに聖女様だけを見つめ続け、私の拙い技術で痛みを感じさせないよう集中する。

「っ…………っっ!」

私を見つめたまま絶頂した聖女様はまだお声も出せない程弱々しい。

もう少し指での快楽を与えたいが、きっと私自身を中に埋めた方が楽になると思い覆いかぶさる。

「もう少し愛撫をしたいのですが、繋がる方が体が楽になると思いますので…早急ではありますが、このまま繋がってもよろしいでしょうか?」

私の問いに言葉はなくとも微笑みで返して下さる聖女様はこんな時でも清らかさを感じる。

太ももを持ちゆっくりと中に挿入ると少しキツイのか眉間にシワが寄る、それに構わず奥に埋めていく。

きっと何度も吐精した方がいいだろうと思い、中に半分ほど埋めたまま自身の根本を扱き絶頂を促す。

そして、ゆっくりと中では動きいいところを探していく。

「ここが好きですか?」

子宮の少し手前を腹側に押すと反応がいい為、伺った際ひくひくと締め付けてくる聖女様に興奮が高ぶる。

「出しますね」

押し付けたくなる気持ちを堪え中に出す。
それを数回繰り返していく内に声が出るようになり、まだ弱々しいけれど手先と足先が動いてきたのを確認すると動かしていた腰を止めた。

「聖女様、少しは楽になりましたか?」
「ん……あり、がと、ごめんな、さい」
「謝る事などありませんよ、愛しい方と繋がれた幸福で心が満たされておりますから」
「ん……ゆい、が名前、だから、呼んでほし」
「………ユイ様」
「ん、りっくうぇる」

「愛しておりますユイ様」

ハニカミながら私の言葉を受け取るユイ様に思わず涙が出て止まらない。

こんなにも心揺さぶられ掻き乱される事なのかと……

愛するというのはこんなにも暖かな事なのか。

実感し襲いかかる激情をどう発散すればいいのか分からずただ涙した。

「り……く?」

「ふっ…、ユイ様、あいして、愛しております……心から、お慕い申し上げておりますっ……」

戸惑うユイ様を腕の中に隠し、今だけは私のモノにする。

そんな私にユイ様はきっとまだ動かすのもツライだろう腕を回しトントンと優しく背を叩く。









そんな風に始まった私の夫としての生活は毎日が幸福で溢れている。








伯爵の座を頂いていてはユイ様のお傍に居るには少々動きづらい為、爵位を父と呼んでいた人へと返した。

貴族に席を置いておけばこれから面倒にもなると思い、平民に降りる事を伝えると激怒していたが、掴んでいた弱みを耳元で伝えれば大人しくなったソレに書類への判を押させる事は容易かった。






私の身の回りを整理した後にユイ様へ国王が尋ねて来られたので対処をし、しばらく経った後にユイ様から疑問を投げかけられる。







「なんでそんなによくしてくれるの?」
「どういう意味でしょう?」
「だって出会ったばっかりなのに、なんでそんなによくしてくれるの?」
「ユイ様に出会った時私の心はとても忙しなかったのですよ」
「どうして?」



「はじめて愛する人が出来たからです」



そう伝えると、顔を赤くしてベッドに潜るユイ様を追いかけて答えを出す。



「ただただあなたを愛してしまったのですよ、だからあなたの全てが欲しい。あなたと全てを分かち合いたいのです」


「あう……」
「だから、よくしているのではなくただあなたを愛しているだけですよ」

「っっ………わ、私もっ、大好き!」

いつか同じ想いを返してもらえるようこれからも愛を伝え続けよう。

そんな幸福な事を想いながら愛する妻を捕まえて腕の中でキスをする。
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