巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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大精霊様はツンデレでした

2-2

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「聖女様……一度横になりましょう、きっと」

バタン!と騒がしい音がして入って来る人達はさっきまで見て知っていた旦那様達ではなかった。
違う、知っているけど…

の姿だ。

ネイサンのように出会った頃の姿。

「聖女様が目覚められたのですか!?」

ピンクの髪にピンクの瞳が可愛いフィフィアン、でも歳を取ると目尻の皺が出来てもっと可愛くなるのを知っている。

「体調は戻りましたか?」

茶色の髪に紫の瞳に右目のホクロが色気を出しているエマニュエル、でも歳を取ってキツめな瞳が垂れてきたのをずっと気にしていたのを知っている。

「やはり魔力を削るべきではないとあれだけ進言したというのに…!」

銀色の髪に赤い瞳に三白眼のダグラス、私を守る為についた左目の傷は名誉の負傷だと笑って自慢してくれるのを私は………私だけは知っている。

「ダグラスごめんなさい、私は、私はとても最低な頼み事を…」
「なに?」

私を“殺させてしまった”

確かに死んだのに…

「聖女様はまだ具合は悪いのではないか?」
「いえ、私の魔力で楽にはなったはずなんですが」

違う。

認識が違う。
魔力で楽になるなんて間違った事をネイサンが言うはずがない。

「聖女様、どこかお体の不調が残っておりますか?」

“聖女様”そんな呼び方を寝室でしない。

みんなが若い。
私を聖女と呼ぶ。
魔力で体が楽になったと勘違いしている。

私だけが戻ったの?

出会った頃に戻った?

それなら、今まで愛してくれたみんなはもう居ない…

頭の中を整理する為にぐちゃぐちゃな思考を無理矢理落ち着かせる。
少し時間がかかったけどみんなは待ってくれている。

「私の事知ってる?」

私の問いにきっと“初めて黒の瞳を見た”のだろう3人は驚愕に目を見開いている。

「聖女様を召喚した事はみな存じておりますが、聖女様自身を知っているかという問いなのでしたらこちらは聖女様が居た世界ではなく異なる世界に呼んでおりますので、存じ上げません」

私が混乱していると思ってネイサンが丁寧に説明してくれる。

「そっか…」

えへへ、ちょっと、いやだいぶショックだなぁ。
私はみんなを知っているのにみんなは知らない。
愛してない目で見られてる事も、私の言葉に少し緊張してるのも分かる。

分かるよ。

だってずっと一緒に居たんだもん。

「うん、うん、大丈夫…私は大丈夫……うん、よし!」
「聖女様?」

それなら始めればいい。
また始めたらいいじゃん!
大丈夫私はみんなを愛してる。

私は知っている。

大丈夫、私の知ってるみんなが心配しないように始めよう。

「聖女様は混乱なさっているようです」
「まだ説明してあげてないの!?」
「落ち着かせている間にあなた達が来たのですよ」
「聖女様、怖がってるのかな」
「む……なら出て行った方がいいか?」
「私がもう1度話してみますから表で待っていてもらえますか?」
「待って」

私がみんなの行動を止める。
無遠慮に触って来ないみんなを寂しく感じるけど、うん、大丈夫。

今度こそ、みんなで幸せに死ぬんだ。

「ネイサン、ダグラス、フィフィ、エル、私の事触ってて欲しいの、じゃないとまた倒れちゃう」
「それはどういう」
「いいからいいから、ね?」

ネイサンとフィフィとエルは私の“命令”に従ってすぐ触ってくれる。

「あ、ごめんね、出来れば素肌に触ってくれる?」

服の上からだと意味がないからね。

「俺は平民だ」
「そんな些細な事気にしたりしない、だからね?お願い」

驚くダグラスの顔も息を飲む音も周りから聞こえる。

「いつ倒れちゃうか分かんないから先にお願いするね」
「はい、何なりとお申し付けください」

ネイサンの言葉にいちいち傷ついてたら駄目!

「まずリクを…あれ、リクって苗字なんだっけ…ぅぅ~1度聞いたきりだしすぐに平民になっちゃったから忘れちゃったよぉ!」
「せ、聖女様?」
「あ、ごめんね!リックウェルを呼んで欲しいの、貴族だったのは間違いないからリックウェルで調べる事って出来る?あ、水と氷と風の属性持ってて緑の瞳と黒に近い緑の髪で、ん-あとは、あ、ずっと敬語なの!それと、それと、うーんと」
「それくらいの情報があれば分かりますよ」
「ほんとう!?良かったぁ!口説きたいからね、出来れば最速で!」
「口説く……?」

ダグラスの困惑の声が聞こえるけど今から言う事にもっと困惑するんじゃないかなぁ?

「それでね、私の体ちょっと人と違うんだ」
「違う、というのは」
「うん、抱かれないとさっきみたいに倒れたまんまになっちゃうの!」
「え!?」

フィフィの驚く顔をちょっとまじまじと見てみるけど……
うん、ほんとに私の事好きじゃなさそう!うん!ショック!

「あ、魔力ないから私」
「は?」
「うんうん、ダグラスもびっくりだよね!それでね全属性を体にいれないと、体液でね!」
「「「「っっ」」」」
「そこで!みなさんにお願いがあります!あ、違うな、お願いは命令になっちゃうんだっけ…えーっとどう言ったらいいのかな」
「せ、聖女様?」
「あ!そうそう口説かれて下さい!私はネイサンの事もダグラスの事もエルの事もフィフィの事もすっごいすっごい愛せる自信があります!だから私の旦那様になって下さい!」
「「「「「………」」」」
「ん、この言い方もよくないか…えっと、ん-、あ!料理が得意です!野宿飯も作れます!あ、あと裁縫も得意です!あとは、あとは、えーっと」
「せ、聖女様落ち着いて下さい、お体の事は分かりました。私達を夫にと望んで頂けるのでしょうか」
「うん!私をみんなの妻にして下さい!絶対絶対幸せにするから!」
「私達でよければ聖女様の夫となるのは願ってもいない事ですが、これから先」
「あ、浄化だよね?うん、もちろんするよ、範囲はあとで相談しようね!それで、多分もうすぐ体…が」

「「「「聖女様!!!」」」」

やっぱり最初は触ってるだけじゃ駄目かぁ…説明で精一杯だな。
遠のく意識の中これから先の事、今まで起こった事を思い出さなきゃと思った。
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