巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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魔王編

4-13

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次の日から朝ご飯を食べたら執務室に向かう事にした。
私は本を読んでるだけだしそこまで邪魔にもならないだろう。

「おはようございますデズモンド様」
「…」

昨日の椅子に腰掛けようと思ったんだけど、どこにも椅子がない。
あれ?邪魔だったかな。

「来い」
「あ、はい」

最初に会ったように机をぐるっと回ってデズモンド様の側に寄る。

「「…」」

これは想像以上に寂しがり屋かもしれない。

デズモンド様の横に置いてある椅子は新品で多分私の為に買ってくれた物だとは思う。

「新しく買ってくれてありがとうございます?」
「…」

デズモンド様が使ってる机よりだいぶ小さな足の長い机まで置いてある。
飲み物が完備されてるみたいだ。

「お気遣いありがとうございます?」
「…」

よく分からないけど椅子に座ってナインから渡された本を読んでいく。
昨日よりペラペラカリカリの音が近い。
私が見ちゃってもいいんだろうか。
いや、やめておこう。
書類を視界に入れないよう本に集中する。




ちょっとお腹が空いたなって思った時にエイスから声をかけられる。
本当にみんな音を出さないで現れるね。

「腹は」
「空いた」
「行くぞ」
「あ、うん、ちょっと待って」
「…」

エイスはなんとなく分かってるのか黙る。

「デズモンド様は一緒にご飯を食べるより1人で食べる方が好きですか?」
「…分からない」
「それならお試しで私と食事しませんか?」
「分かった」
「うえっ!?」

みんなは浮いたりするけどデズモンド様は転移がほとんどらしい。
そういえば部屋の端へと動いた時も転移だった。
あっという間に知らない部屋に連れて行かれたけどここは1番古い感じがする。

「わっ!」
「どうした」
「ナインが突然現れたので、び、びっくりしただけです」
「ヒナノは驚くな」
「驚かせたくないならいきなり現れないでよ」

驚くと病になるという訳の分からない説をナインとエイスは取り入れてきたらしく私がびっくりするとやめろって言うようになった。

私が部屋で使ってる椅子を持ってきてくれたらしく見覚えのある椅子に座る。

なんだか、こう、魔王様の食卓って凄い長いテーブルを想像してた。

魔王様っていう想像と違うのは住み始めてから分かってはいたけど、どうしてこんな傷んだ机で食べるんだろう。
愛着とかあるのかな。

「いただきます!」
「それはなんだ」

“いただきます”をまた言うようになったのは“ヒナノ”になってから。
お母さんとお父さんと理久でいただきますをするのが好きだったから続けてる。

「なんだっけ?えーと、作物に感謝と生産者に感謝と作り手に感謝っていう意味だったかも?」
「不確かなのに言うのか」
「いただきます!ってして一緒に食べるのが好きなんです」
「…」

意味はどうでもいいんだ。
一緒に言い合えたあの時の幸せが好きなだけ。

「…いた、だきます」
「!」

デズモンド様がいただきますした!
ちゃんと手を合わせて!
なんだろう、可愛い…

夜もそうだけどデズモンド様って可愛いよね
話し出すともっと可愛い。

なんだかニマニマしてきちゃってデズモンド様を見ながら食事を堪能する。

「魔国の食事はいつも美味しいです」
「…」
「ボードゲームもたくさんあるし、娯楽が栄えてるんですね」
「…」

デズモンド様の食べる量って海のに似てるな
やっぱり魔力量によって増える気がする。

あとで海のに連絡してみよ。

「そうだ、海のに連絡する時はナインかエイスに頼み続けても問題ないですか?」
「…」

あれ?問題あるのかな。
疑問にはいつも答えてくれるのに。

「………」「………」

多分考え中なのかな
そう思おう

食事も終わりに近付いた頃に答えが返ってきた。

「私に言え」
「いつでも?」
「構わない」
「今日運動が終わった後にお願いしてもいいですか?」
「構わない」

構わないらしい。
デズモンド様から嫌を聞く時ってあるんだろうか。

あれ?瞳が赤いな、と思ったら傍に控えてたナインとエイスが消えた。

チラッとデズモンド様を見るけど気付いてないみたい。
そっか、2人も赤い目になると耐えられないのか。
不思議。

「こんなに綺麗なのに」
「…」

思わず口をついて出た言葉を言及されなくて良かった。

少ししたら黒に戻ったからもしかしたら欲を満たす時とかになるのかも?

「ごちそうさまでした!」
「ご、ちそうさま、でした」

可愛い!

出入りが激しいと気になるかもと思って1度部屋に連れ帰ってもらった。
充分消化してからランニングに出る。

「なんで今日はそんなに鬱陶しいの?」
「「観察」」

なんでか走ってる私の前にぷかぷかと浮きながら目の前を遮るナインとエイス。
観察ってそんなデズモンド様みたいな事しないで。

「転びそうだよ!?」
「転んだら笑ってやる」
「それくらいなら死なないだろ」
「意地悪っ!」

死ななければなにをしてもいいと思ってるの!?いや、絶対思ってる!そんな会話してたもんね!

「今日も見に行くか」
「うん、なんか1日1回見ないと落ち着かなくなってきちゃった」

デズモンド様の執務室から見れるか分かんないし。

初日より距離を走れてる気がする。
風景が変わらないからいまいち分かりづらいけどね。

「最近土が元気だ」
「ラグウダ様の事?」

確か土がたくさんあるって言ってた。

「違う」
「ここだ」

どうやら地面らしい。
多分浄化の事なんだろうけど、知らないのかな?
うーんデズモンド様が言わない事を伝えるのもなぁ…

「なにか知ってるな」
「うん、でもデズモンド様が話さない事言ってもいいのかな」
「やめておけ」
「殺す気か」
「じゃぁ聞かないでよ…」

どうやらデズモンド様は恐ろしいみたいだ。



ランニングが終わって花畑でまどろむ。
今日も変わらず元気な花だ。

そういえば浄化が済んだ後ってどうなるか分からないけど変わらず元気な花を見るとここは元々綺麗なんだろう。

ランニングをしてる土はひび割れてるけど淀みって感じの空気じゃないよね。
あれ?私って淀みだけを浄化するんじゃないのかな?
それなら浄化したって訳でもなさそう…

「どっちに戻る」
「デズモンド様の執務室にする」

花畑を堪能したらデズモンド様の部屋に浮いて…ええ?ここも窓から入るの?
なんだかとっても自由でいいですね。

「戻りました」
「…」

カーテンは閉め切ってるけどいつも明るいな
灯りも見当たらないし。

ふぅ…と腰を椅子に置いて本を持つ。

「連絡」
「そうでした!お願いします」

海のの声が聞きたいんだった。

「へ?」
「…」

ナインもエイスも触らなかったからてっきりデズモンド様も触らないと思ってたけど触るらしい。

耳に指を当てて魔力を入れているのは海の声が聞こえて分かった。
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