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魔王編
4-14
しおりを挟む『なんじゃ!』
『海のおはよー、なにしてるの?』
『む?書物を…違うぞ!?茶を飲んでおる!』
『んへへー』
昔も書物を読んでいるのを隠したがる海のは今も健在だ。
私のことを調べてくれてるんだろうなって思う。
『ありがと』
『勘違いするでない!』
『んへへー』
『気色の悪い笑みをやめ!』
『魔国って美味しい物たくさんあるんだよー?』
『そうか』
『でも海のの緑茶に敵うお茶はないね!』
『ふんっ!当然じゃ!』
『いつパジャマパーティーする?』
『ぬ?』
『久しぶりに風のの惚気も聞きたいなーって』
『っ~!そんな事はせん!』
『ええー?風のが頭を撫でてくれる時実は』
『やめえええ!』
『ふふ、はあい!』
『なんじゃ?……そうじゃ……ぬ?』
どうやら風のと話しているらしい。
『風のが聞きたい事があると言うておる』
『なあに?』
『そっちに行くと』
『え!?ちょっと待ってね』
デズモンド様に許可もらわなきゃ。
「デズ、っっ、ち、近いですね…」
横を向いたら顔があったよ、怖いよ。
「どうした」
「あ、風のが会いに来るって言ってます、問題ないですか?」
「精霊の行き来に制限はない」
「分かりました」
『海の?』
『なんじゃ』
『あ、聞こえてるんだね』
『聞こえておる』
『いつでもいいよって伝えておいて』
『ふんっ!』
あ、切れちゃった。
「ヒナノ~」
「うあっ!?」
後ろから声がして驚く。
どうしてみんな今から行くよーくらい言えないかな!?
「ごめんね~?驚かしちゃった」
「平気だよ、久しぶり」
「久しぶり~デズモンドちょっと借りるよ~」
「どこへ行く」
「内緒話」
「危ないから着いていく」
「僕がいるから大丈夫だよ~」
「…」
弱いもんねぇ…
「デズモンド様海のの洋服のデザインについて聞きたいと思うんです、そういうの風のは知られたくないから…いいですか?」
「…」
「じゃぁ連れて行くよ~」
「わっ!」
あ、また赤い目になってる。
そう思った時には空の上だった。
「教えてないのあったっけ?」
「それが分かんないの~」
「ん?」
「海のがね、“耳はないか”“今度こそ…それなら安心じゃ”とか言うの分かる~?」
「ああ」
ウルフ耳と尻尾か。
どうやら風のはそこまで記憶を見れてないみたい。
「うーん、教えてあげられるけど」
「問題?」
「いまいち作り方が分からないの、絵を描いて伝えるでもいい?」
「ありがとうヒナノ!」
「んふふー、可愛い海のが見れるといいね」
「うんっ!」
ウルフ耳と尻尾を描くけどやっぱり構造が分からないなぁ…
「人間に聞いてみて?」
「それならデズモンドに聞こうよ!」
「え?でも、デズモンド様は忙しっ」
「デズモンド~」
早っ!
目まぐるしく変わる景色に追いつく日は来るのでしょうか…
「これ作れる?」
「獣?」
「あ、それは耳に着ける装飾と腰に着ける装飾なんです」
「…」
「あんまりリアリティがあると可愛くないから作り物って分かるくらいな出来上がりになれば」
「出来る~?」
「…数日待て」
「また来るね~?2人ともありがと~」
「ええ?」
風のが居なくなるのはいつもの事だけど…
「デズモンド様が作るんですか?」
「これくらいなら作れるだろう」
「凄いですね…とっても器用」
「…」
そういえばブレスレットも作ってくれたんだった。
石がコロコロ着いてる可愛いデザインはデズモンド様が考えたんだろうか。
可愛い物が好きなのかな?
にしても部屋は相変わらずボロボロなんだけど…
そんな事よりお仕事増やしちゃった。
「お仕事増やしちゃってごめんなさい…」
「構わない」
「手伝える事があったらなんでも言って下さいね?」
「…」
ちょっとだけデズモンド様を見てたけど出来る事なんてないのか話す事はないらしいので私も今度こそ本を読む。
そういえば難しい魔法書みたいだけど、随分と仕組みが違う。
こういうのが“正しい”からナインとエイスは気持ち悪いと思ったのかな。
陣も種類が豊富だから覚えていても損はないかも。
読み進めていたら夜ご飯の時間になったみたいなんだけどしばらく気付かなかった。
「いつまで魔王様をお待たせする」
「え?」
本から目を離したら目の前はお昼に来た場所だった。
「え?いつから?」
「早く食え、魔王様はお忙しい」
「え?あ、うん?え?あ、ごめんなさい!」
「…」
「いただきます!」
「いただきます…」
とりあえず食べ始めるけどせめて一言言って欲しい。
「あの、私魔法が分からなくて…だから移動したら伝えてもらえると助かります」
「…」
「もちろん気付く時もありますよ!でもでも読むのに夢中になってて…ごめんなさい」
言い訳がましくなっちゃった。
「分かった」
「ありがとうございます!」
良かった…
「なんで気付かないんだ」
「なんで気付けるの?」
「なにも分からないのか」
「多分ナインが思う以上に気付いてないかも?」
「…」
そんなどうしようもないなみたいな目で見ないで!
せめて座ってる場所から落としてくれれば気付くよ!ご丁寧に椅子から椅子へと移動されても気付けないよ!?
「あとで迎えに行く」
「どこか行くんですか?」
「風の依頼」
「役に立てますか?」
「…」
「頑張りますね!」
「…」
どうやら私でも出来る事があるらしい。
「今日もご飯が美味しいですね!」
「…」
「これもぷちぷちしてて美味し…げほっ」
「どうした」
多分毒だと思います!
思いますっていうか毒だろうね!
なかなかに毒だと判別するのが難しいらしくちょくちょくこうなる。
致死タイプじゃないのをいつも祈るばかりだね!
「ヒナノ」
「触るな」
「失礼致しました」
「げほっ!げほっ!」
デズモンド様が背中を触ったら楽になった。
早業だ、凄い力だね。
「…」
「けほっ…ありがとうございます!助かりました!」
「…」
「凄いですね!デズモンド様は凄いです!」
「…」
「ごめんなさい、続き食べま、うおっ!?」
抱き上げられたのは始めてな気がします。
「食べないと死ぬか?」
え?今度からなるべく食べるなって言われてる?
「え、と」
「1食抜いても問題ないか?」
「はい大丈夫で……へ?」
部屋のベッドに1人放置された。
「ええ?」
ポツンと座る私はなんだか今日たくさん転移されてる気がするなぁ。
「大丈夫か?」
「エイス」
「どこか痛むか?」
「ナインありがと、もう大丈夫だよデズモンド様は器用だね」
「なんであれくらいで死にそうになるんだ」
「問題ない量だったぞ」
「どうしよう…少しでも毒は毒って分かってもらうにはなんて言えばいいのかなぁ」
「「…」」
その後筋トレして本を読んで待ってたけどいつの間にかソファで寝ちゃってたらしい。
声をかけられるまで気付かなかった。
「なにしてる」
「………ん?」
「眠くないのか」
眠いから寝てたと思うんです。
なんて心で思いながら現状を思い出す。
「ん、ごめんなさい、寝ちゃいました」
「謝る事じゃない」
「だって後で迎えに行くって…ふあ、言ってたから」
「…」
「んえ?」
「付け替えろ」
目の前に浮いてるのはブレスレット。
今着けてる物とは少しデザインが変わってて尚且つ石が多く付いていた。
「機能の変更ですか?」
「毒は弾くようになっている」
「あ…」
あれからずっと作っててくれたのかな。
「面倒ばっかりかけてごめんなさい」
「構わない」
「はい、ありがとうございます」
ブレスレットを変えようとするけど眠い頭でうまく外せない。
カチャカチャと何度か動かしていたらデズモンド様が付け替えてくれた。
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