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魔王編
4-23
しおりを挟む今日の運動はやめました。
もうヘロヘロです、休憩させて下さい。
「どうした」
「どうしたじゃないです、ヘロヘロです体がへにょへにょです!」
「…」
「体力つけないと魔国ではすぐ死ぬかも」
「分かった」
「へ?」
残忍…というかニヒルっていうんだな。
うん、こういう笑顔はニヒルっていうんだ。
「今日から私の部屋で寝ろ」
「い、いえ、それは」
「体力をつければいいんだろ?」
「………」
つけ方に問題があると思います。
「ナイン」
「はっ」
「ヒナノの部屋はなくせ」
「はっ」
「まままま、待って!」
「私の部屋を整えておけ」
「はっ」
「待ってってばああああ!」
どっかに行くのが早いよナイン!
「意見なら聞く」
「聞くだけじゃん!絶対通らないじゃん!意見じゃないじゃん!愚痴にしかならないじゃん!」
「ふっ」
わ…笑った…
ニヒルだけど、こんな笑い方初めて見た。
キュン
ってちがああああう!
くそっ!異世界はどいつもこいつも顔がいい!
ほら私の目の前に居る2人だって…
「え?」
「「魔王様お久しぶりでございます」」
「…」
「いつ見ても麗しいですわ…そんな小娘を横に置いても残虐さも非道さも変わらず佇まれているのは流石でございます」
「妃になんて口の聞き方だ」
「ただの道具でしょ、人扱いされて勘違いしても困るわ」
四天王コンプリートしちゃった…
「はじめまして、ヒナノと言います。魔王様にはお世話になってます」
「名で呼べと言ったはずだ」
「はい、デズモンド様にはお世話になってます」
「妃に会わせてくれると思わなかったので嬉しい限りですねぇ」
白髪で髭も長くてまるでサンタさんみたい。
黒目で見極めてるような視線を送られるのは多分この人も職人気質なんだろう。
「アルゼド様にお会い出来て私も嬉しいです」
「ほっほっほっ」
笑い方もサンタさんだ。
赤髪に黒が混じってる女の人はボンキュッボンの色気爆発美人さん。
瞳も黒と赤が混じってて綺麗。
「ルールーリリ様も」
「名前を呼ばないで」
「失礼しました」
「…」
ルールーリリ様とは友達になれないかも、単純な憎悪とかじゃない、もっとドロドロして私を心底邪魔だって言ってる。デズモンド様と話せる人とは仲良くなりたいんだけど…うーん、頑張ってみよ。
「魔王様今日のところは失礼致しますわ」
「…」
「すぐに会いに来ますからどうかお待ちしておいて下さいね」
私に勝ってるところはなさそう。
うーん…
やっぱりこの世界で私は小さいよねぇ…デズモンド様もああいう体がいいよね、なんとも不憫です。
「緑茶を飲みに来ましたよ」
「私は今日頂きましたが美味しかったですよ、気に入ってもらえたら一緒に楽しめますね」
「ほっほっほっ、では少し付き合って下さいな」
「はい」
「…」
ナインとエイスがすぐに来て緑茶を置いていってくれた、そういえばデズモンド様は飲んだのかな?うーん、私も淹れてみたい、あとでエイスにお願いしてみようかな。
「妃は」
「妃!酒だ!どうだ魔王様!」
「駄目だ」
「なんだアルゼドじゃねぇか」
「ラグウダはもう少し静かにしなさいな」
「ラグウダ様こんにちは」
「緑茶割りとやらを呑みに来たぞ!」
ラグウダ様って寝起きの一杯はなにを飲んでるんだろ。
「これが緑茶か!」
「今からアルゼド様と頂くところです」
「俺にもくれ!」
ナインとエイスは側に控えてるからすぐに用意してくれる、んだけど…
「ラグウダ様…」
「違うのか?」
「違うに決まっているでしょう、酒と割らなくてどうするんです」
「薄くなるだろ!」
「チェイサーになってますラグウダ様」
「腹に入れば一緒だろ!」
違うと思うよ。
「デズモンド様は緑茶飲みましたか?」
「…」
「良かった、私が先に飲んじゃったかと思いました!」
「…」
「美味しかったですか?」
「…」
「明日は一緒に飲みましょうね!」
「分かった」
どうやらすでに飲んでいたらしいデズモンド様も緑茶は気に入ったみたい、魔国では果実水が多いから新鮮だ。
「随分と仲がいいんですねぇ」
「そう見えますか?」
「はい」
「それならデズモンド様が優しいからだと思います、よくして下さってるんです」
「ほっほっほっ、聞きましたよ」
「そうでした」
「仲がいいのは何よりですねぇ」
「お陰で毎日楽しいです」
「ボードゲームはどうだ!」
「3人で出来ますか?」
「賭け事くらいか?」
「お金持ってないです」
人生ゲームに麻雀…
ああ、2人に麻雀はいいかも。
うわ、めっちゃ似合う。
ナインとエイスも喜ぶかも…
「どうした」
「デズモンド様マージャンというゲームが2人に似合いそうなんです」
「分かるか」
「分かります!必要な物が多いのでもし人気になればどこかの領地が潤うかもしれません」
「…」
「今すぐ書きますね!すみません、失礼します」
「楽しそうですねぇ」
「1番に教えろよ!?」
まだ楽しんでる2人から離れて席に戻る、でも文字は魔国に変えないと…
模様はあとで頼むとして、台と牌と…
ああ、役と遊び方が面倒なんだった。
とりあえず思い出せるの書き出しておこう、きっと粗があれば誰かが新しくルールを追加してくれるだろう。
いそいそと思い出しながら必死に書き出してる私に談笑が聞こえてくる。
楽しそうな音は好き。
その音が聞こえなくなるくらい集中しちゃってた。
「随分と可愛らしい方ですねぇ」
「これでもしっかりしてるぞ!」
「…」
「か弱いと聞いていましたがここまでとは思いませんでしたなぁ」
「…」
「ブレスレットのように守りもいれておいたらいかがです?」
「側に居る」
「ほっほっほっ、魔王様のお側は1番安心ですがねぇ…目を離さない時がない訳ではないのでしょう」
「…」
「大切にされていると一目で分かりますよ、尚の事守りは強固にしないといけませんねぇ」
「そうだな、魔王様に敵う者はいねぇが妃に敵う者は大勢居る」
「…」
「想い合う2人が引き裂かれるなどあってはなりませんからなぁ」
「そうだよな!魔王様に接してる妃は俺でも分かんねぇ時もあるぞ!俺も魔王様の事分かりたい!」
「さっきの会話のように仲睦まじい姿をルールーリリに見られなくて良かったですなぁ」
「あいつがどうした」
「気付いてねぇのか?ルールーリリは昔から魔王様に執着してんだろ」
「妃も分かっていたようですねぇ」
「女の勘は鋭いっていうからな!」
「伴侶に言われましたか」
「毎日言われるぞ!あいつはこえぇな!」
「ほっほっほっ、愛とは恐ろしいモノですからねぇ」
「…」
「愛を失くさないためには守らなければあっという間に消えゆくモノですよ」
「…」
「ほっほっほっ」
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