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淫魔編
5-19【5回目の終わり】
しおりを挟むたくさんの問題があるとキスをされながら思う。
国王に抱かれたら魔力量が増えるのがバレる。
ここに留まってしまったらいつか私は海のを起こすんじゃないかって事。
妃となり私が表に立つには聖女をやめなくてはならない事。
他は…他には。
ああ、そうだリクに会えなくなる。
傍に居るのが当たり前すぎて考えつかなかったや。
「こく、んっ!んっ!まっ、」
「拒絶なら聞かぬ」
「違うよ、私も国王に抱かれたくて堪らないんだから」
「っ、どうした?」
「旦那様達には会える?」
「余の事が最優先だ」
「ん、分かった、ね?ドレス脱いで直接感じたい」
「っ、ぬが」
「んーん、見てて?」
「っ、はっ!」
難しいけど出来る、私は転移が出来る。
今ここで抱かれる訳にはいかないんだ。
リクも一緒じゃないと意味がない、リクが最優先じゃない人生は意味がないんだ!
強く思ってリクの元へ転移…!
ガシャン!だかドンッ!だか分からない音が頭に響いた。
無茶に魔力を使った反動で頭がくらくらして体中が痛い、でも死んでない。
息をすると肺に何かが刺さったような感覚と手足を感じられない、目からきっと血を流してるのも知ってる。
「ヒナノ様!」「「ヒナノ!」」
喋るのもツライけど言わなきゃいけない事がある、私は聖女としての決断もしたんだから。
「り……く……」
「喋らないで下さい!」
「こく、おう……げほっ、なに、も……なか、っ……た…」
「分かりましたから!すぐに戻ります!」
「ここで治癒をするべきだ!」
「ヒナノ様がこのようになったのは既に見られています!国王と何もなかったと望むならここではいけません!早く馬車を!」
「っっ」
「分かった」
「ヒナノ様っ、ヒナノ様っ、」
ああ、毎回そんな感じで私の死を悲しんでくれたなって思った。
*********************************
5回目の終わり
唐突に終わりを迎えた、ううん。
私の人生はいつだって突然だ。
あの日はデズモンド様と出会って一万年記念だった。
記念に何をしようかと考えてた私は横に座る…いつだって傍に居て片時も離れない最愛の人に話しかけた、いつものお喋りを、その日も幸せですねって思いながら。
せっかくだから言い合いっこしましょうと提案したんだ。
「今日は一万年記念日ですって!」
「一万年記念日」
「一万年後も一緒です」
「ずっと一緒だ」
「次の一万年記念日も言い合いましょう」
「分かった」
デズモンド様は幸せそうな、だけどいつだって無表情だけど私には分かる。
幸せそうに一万年記念を祝ってくれたんだ。
「来い」
「はい」
差し出された手を握って膝の上に乗ろうとした瞬間、いきなり空中に居たから流石に驚いた。
「んえ?」
「…」
うーん、こういう時は大人しくしてようっていつものように思いながらも、デズモンド様としっかり手を握って空中に居たら宙が裂けた。
裂けたんじゃない、正確には悪魔が来た。
それも大勢。
何十人居たか分からない、だけどナインとエイスじゃない悪魔は、人を痛めつける事だけしか考えていない悪魔が裂けた空間からやってきて無闇にデズモンド様を、私を襲い出す。
怖くなかった。
だってデズモンド様の傍に居れば世界の何処に居ても安全なんだから。
繋がれた手はいつものように熱くて、私を離さないとしてるぬくもりに安心さえ覚えていた。
悪魔がどうしてデズモンド様を襲うのかは今の私でも分からない。
私はこの後、悪魔と出会った事は1度もないんだから。
会えたとしても何も聞けない、だって知らないだろうから。
悪魔の猛攻のような魔法が私にも目に見える。
デタラメに魔力を消失してデタラメに攻撃していくけど、そんなのはデズモンド様が消し去ってくれる。
だけど私は覚えてなかった。
デズモンド様は唯一無二で最強な魔王様だって事しか覚えていなかったから分からなかった。
魔力が底をつくって事。
無尽蔵ではないといつかの時に言っていたのは、あとから思い出した。
悪魔は強い、魔人さえも簡単に食らう。
だけどそんな事デズモンド様には関係ない。
だから早く終わるのを待って、美味しい緑茶と美味しいケーキを半分こしたいな、なんて事さえ思ってた。
数十分もかかった悪魔の掃討は最後の1人で終わりを告げた。
だけどそれは最初の猛攻。
まるでデジャヴのように宙が裂けてまた何十人もの…ううん、さっきの倍の数の悪魔がやって来た。
なんでこんなに襲われるのかやっと疑問を感じた、それはデズモンド様の手が強く私を握ったからだ。
私はいつだって無力で出来る事なんてない。
だから終わりを待っていただけなのに。
「レイシス」
ああ、まずいなって思った。
デズモンド様が四天王を呼んでも来ない。
他の者を呼んでも来ない現実に分からなくなった。
ついさっき、エイスはなんともない顔で私達の元へと来たから、もし何かを仕掛けたのならナインだと思った。
だけど…獲物を他に取られるような行動をするとも思えなくてデズモンド様が倒し切るまで待った…のに。
「チッ」
「デズモンド様」
「大丈夫だ、怖くない」
舌打ちをしたデズモンド様にまた悪魔が来るんだと思った。
そして来た数は………
多分数千。
そして目の前にはナインとエイスの服を持った悪魔が居た。
食われたんだと分かった、分かったから分からなくなった。
ナインとエイスは特殊だ、兄弟のようでいて、恋人のようでもあるあの2人は一緒に行動してる事が悪魔として異質だと聞いていたから、こんなにも何かから命令されたように1つの獲物を食らう悪魔達の行動が分からない。
「ぐっ!」
「デズモンド様!」
デズモンド様に攻撃が当たるところなんて見た事ない。
なんで。
どうして。
「デズモンド様っ、デズモンド様っ」
「安心、しろ」
「やだ、やだよ、デズモンド様ぁっ!」
「大丈夫だ、怖くない」
初めて聞いたデズモンド様の嘘だった。
嘘なんてついた事もないだろうデズモンド様の嘘は稚拙で子どもにも分かるほどだった。
デズモンド様が嘘をつけなければならないほどの状況に困惑する。
その時悪魔が私の背後を取った。
「ヒナノ!」
その声で危険を察知したけど、だからといって出来る事もない私はデズモンド様の手を強く握った。
「デズモンド様!」
「ふざけるなよ!」
そしてデズモンド様の背後にも無数の悪魔が見えた瞬間。
デズモンド様と繋いでいた手が離れてしまった。
私の耳と手首を切られて。
守りを切られた。
全てなくした私は無力だ。
「いっっ!?嫌ああああ!」
「ヒナノ!」
「ひっ!あ、あ、や、やだ、やだやだやだやだ!っっ、デズモンド様ぁぁぁぁっ!」
「ヒナノ!ヒナノ!」
殺されると思った。
私の残ってる手でデズモンド様に伸ばした瞬間…
ああ、いつも思う。
あの時手を伸ばさなければ今も私はデズモンド様と一緒だったのかなぁって。
でもどうなんだろうね?
私の腕を掴んだ悪魔がきっとどう足掻いても同じ事をしただろう。
そんな執念を感じた。
「ヒナノ!」
「デズモンド様!」
デズモンド様は背に覆い被さる全ての悪魔を払って、私の元に居た悪魔を払ってくれて。
やっと。
やっと、デズモンド様の腕の中へ行けると思った。
「なに!?」
「っっ、ヒナノに触るな!」
私の伸ばした手を背後から悪魔がぐっと強く握り、デズモンド様の胸へと誘導された瞬間…
「え?」
「っっ、ヒナノ!離せ!」
デズモンド様の体の中へと手が入っていった。
これは覚えてる。
何故だか強烈に覚えていた。
あのおじいさんと同じだ。
獣耳を持ったおじいさんが私の手を取り自分の胸へと入れた瞬間と同じ。
「や、やだ!やだやだやだやだ!デズモンド様!」
「っっ、大丈夫だ、怖くない」
「デズモンド様!」
悪魔はもう腕を掴んでいない。
でも…
私の腕がデズモンド様の胸の中から抜けない。
なに…
何が起こってるの?
「っっ、愛している、ヒナノをいつまでも愛してる!」
「私もっっ、~~っっ!愛しています!デズモンド様ああああ!!!」
あの時と同じ、眩い光が周囲を覆い、音のない音で支配される。
デズモンド様が何か私に伝えているような気もするけど、聞こえないし見えない。
「デズモンド様ぁぁぁっ!愛してる!ヒナノも愛してるから!お願い!どうしたらいいですか!?」
何も聞こえないし何も見えないこの空間で叫び、教えを請う私の耳にやっぱり声は届かない。
そして次に届いた声は悲鳴と、血の匂いと、建物が崩れる音。
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