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淫魔編
5-20【6回目の人生になるまで】
しおりを挟む体の中が渦を巻いて何かが暴れている気がする。
ううん、そんな事よりデズモンド様はどこに居るの?
「デズモンド様!」
どこかの建物の中だろうけど、崩壊し人が何十人も死んでる。
どうでもいいデズモンド様を…と思った瞬間に気付いた。
目の前の男に。
かつて愛し合った男が目の前で倒れていた。
「ネイサン…?」
近寄って死んでるであろう髪を掴んで顔を見るとやっぱりネイサンだった。
とすると私はあの時死んだんだ…そっか。
でもいいや。
デズモンド様に会いに…まずは風のを起こしに行かないと会えない。
「せい、じょ…さま、どうか、……まりょくをおさ、えて…くだ、さ…」
屍の中から声がした。
魔力?魔力なんて私にはない。
だからこそ無力な人生を送ってきたのに…
これの事?私の中で渦巻いているような感覚がある。
なんとなく書物通りに力を抑え込んでみると容易く魔力を扱えた感覚があった。
「ほんとに…?」
今回の生は違うのかもしれない。
もしかしたら魔力が宿った体になったのかも!そしたら私、デズモンド様に今すぐ会える!力にもなれる!一万年を覚えていないデズモンド様に会うのは悲しいけど…それでも!私の幸せがある魔国に行ける!
魔法陣なら分かる、周りで血を流している人達には愛する4人も居たけど、その時の私にはどうでも良かった。
ううん、良かったって思った。
血で書いたらいい、転移陣を床に血で書いたらいいじゃん!私って頭いい!とかも思いながらるんるんで陣を書く。
デズモンド様の元へと飛べばいいんだから簡単だ。
陣を書いて魔力を流してみたけれど…
「あれ…?」
魔法陣が反応しない。
なんでだろ?
んー?
場所の指定は難しいけどやってみるか。
魔王城の場所に変更して魔法陣を発動させたら今度はうまくいった!
「やった!」
ぐらっ…と視界が揺れて吐き気と頭痛が酷く襲った。
海のの渦なんて比じゃない。
あまりの気持ち悪さと痛みで蹲った私の耳に人間の悲鳴が聞こえた。
「きゃぁっ!」
「お前なんだ?侵入者だ!捕らえろ!」
場所を間違えた?ううん、そんな事ない。
魔法の研究なら嫌って程にしてきた。
デズモンド様が創り出す時の陣も読み取れるし、正解だってもらってたのに。
なんで?
初めての疑問だった。
嫌な疑問を覚えた瞬間だった。
人間に抑えつけられて仕方ないと、体がふらふらだけど、浮かぶようにイメージした。
陣も頭に入れて。
浮かんだっていうよりは、まぁ、体が窓ガラスに思いきりぶつかって外へと放り出ただけなんだけどね?
魔力を使用するのは思った以上に難しい。
浮かぶのもめちゃくちゃで、あっちこっちに体が行く。
制御が出来ないのだ。
それでもと浮かびながら街並みを見るけど…
「なにここ、知らない」
んー?と頭を捻りながら飛び続けたけど駄目だった、ここは魔国じゃないみたい。
体の事もあるし急がないとと思って何処かの家に降りた、降りたっていうか、まぁ、屋根を突き破ったんだけどね?
体中血だらけだし、治そうとしても上手くいかないから諦めたけど、そろそろ死んじゃうかもと思いながらも中に居た人間に聞く。
「紙とペンちょーだい」
「あ、あ、ひっ!」
「紙とペンちょーだい?」
「う、うあああああ!」
「はぁ…自分で探すか」
いつの間にか夜だし、デズモンド様が居ないから寒さも感じるし、早く会いたいのにと思いながら家探しして見つけたガラスペンと紙に魔法陣を書いて海のの居る海に転移した。
気持ち悪くて痛くてどこかの骨も折れてるけど、デズモンド様の傍に居られない方がよっぽど痛い。
水中呼吸やらの陣は書いて持ってるからそのまま泳いで…そういえばどこだっけ?
なんて意識を散漫させてみるけど、私は陣へ綺麗に魔力を流せなかったのか、途中途中息が出来なくなるし、体も早くなったり遅くなったり…なんでか足が曲がったりと、まぁ、大変だったけど、魔力を意識するというやり方を海の中でなんとなく覚えて魔力のある方角へと向かってみたけど…
全然違かった。
だからまぁ闇雲に探した、潜って潜って死にそうになりながら何時間も探した。
『居た…』
私はまだ魔力をきちんと流せない。
だから声をかけるしかなかった。
『海の!風の!起きて!お願い!デズモンド様の元に行きたいの!お願い!』
海のが身じろいで重そうな瞼を開ける。
『海の!相変わらず可愛いね!ちょっと起きて欲しいなぁ?デズモンド様のところに行けないの』
鬱陶しそうな顔で私を見ながら溜息をついて、巻き付いてる魔法陣を解いてくれた。
起きた風のに抱えられて陸に放り投げられた私はすぐに話し出す。
「おはよう!風の!海の!さっそくで悪いんだけど、デズモンド様の元まで送って欲しいの!あ、海のに似合う下着作れるから対価はそれでどう?」
私の言葉に反応したのは風のだった。
「人間ボロボロだよ~?」
「えへへ、そんな事いいの!デズモンド様の元に連れて行ってくれない?」
少し考えた後風のはこう言った。
意味の分からない事を私に言う。
「デズモンドって誰?」
「へ?」
風のは眠る前からデズモンド様と知り合ってたし、デズモンド様の名前を教えてくれたのも風のだったよ。
「寝ぼけてるのかな?魔王様!魔王様のところに行きたいの!」
「なんじゃ人間、さっきからうるさいのお」
「海のは相変わらず妖艶だね!凄く凄く妖艶!」
「そうじゃろうそうじゃろう!っ、って、お前なんじゃ!」
「後で話すから!とりあえず魔王様のところに」
「魔王?ってなに?」
「へ?あ、じゃ、じゃぁ魔国に行きたいの」
「僕達が眠ってる間に出来た国なら知らないよ~?」
分からなかった、分かりたくなかった。
「な、なんで知らないの?」
「随分と勝手な人間じゃ」
「じゃ、じゃぁ記憶覗いて!風のと海のと関わった記憶見て欲しいの!」
警戒する2人にどうしたらいいか分からなくなる。
私はただデズモンド様の傍に行きたいだけなのに。
「…とりあえず怪我治すよ~?」
「あ、ありがと風の」
「ふんっ」
一瞬で怪我が治った私のおでこにちょんとぶつかるから風のとの思い出に心を開く。
「っっ、はっ!はっ!」
「風の!っ、なにをした人間!」
顔を青くした風のに近寄って支える海の。
なんで?
記憶を見てもそんな風には…、
「なにもしてないよ、あ、もしかして感情まで読み取っちゃった?そ、それならごめんね」
「気持ち悪い………」
「え?」
「僕の知らない僕の記憶を持ってる」
「そ、それは私が巡ってるから…」
「違う、確かに僕はデズモンドを知ってたけど、今の僕は知らない」
「へ?ど、どういう」
「ええい!人間!余にも寄こすのじゃ!」
ガツンと当たったおでこに海のの記憶に心を開いてアルナブの事を隠した。
「な、な、な、な、っっ~!なんて事をしてくれたんじゃヒナノは!」
「な、なんだろう?耳かな?ふわもこかな?あ!媚薬の…」
「全部じゃ阿呆!」
「ご、ごめんなさい、後でたくさん謝るからデズモンド様のところに…!」
「居ない…そんなのは居ない」
「え?」
「魔王なんて存在しない」
「え?う、嘘だよ、だって居るよ!魔王様は…!」
「む…人間が出てきたな、1度家に行くぞ」
「う、うん」
海のの部屋に行って緑茶をもらう。
美味しいけど…海のがこの緑茶を好きなように、私もデズモンド様の緑茶の方が好きになってたみたい。
「風の」
「僕の今を説明するね~?」
「う、うん」
「デズモンドは居ない、魔国も存在していないんだ」
「なにそれ…意味分かんないよ」
「落ち着け阿呆、魔力が漏れて…何故魔力があるのじゃ」
「そ、それも分かんないの!悪魔に襲われて、デズモンド様も危なくて…で、でもなんでか私、デズモンド様の心臓を掴んだような感覚がしたらいつの間にか戻ってて…そ、それでなんでか魔力が…」
「ヒナノ」
「や、やだ!やめてよね?変な事言わないでね?やだな、ふふ、やだ、そんな事ないよ」
「ヒナノ魔力を抑えろ」
「ん、ごめん」
なんとなくだけど、風のが言いたい事分かった。
分かったから、分からなくなったけど、そんな事ないって思いを込めて頭に意識した。
魔人には翼や角が存在する。
そして今の私は魔力を保有しているから。
でも、きっと…
もしも、私が持ち合わせているのだとしたら…
角だと…
そう思っちゃったんだよ。
「「!」」
「ふえっ…!わ、私の頭、ぐすっ!どうなってる?ねぇ、私って…私っ、私っ」
「暴走するぞ!やめ!」
「風の!お願い!どこかへ送って!海のを傷つけたくない!」
「分かった!」
「風の!」
どこかに転移した私は魔力を抑える事が出来なかった。
それはデズモンド様がずっと感情と共に抑えてたから理解してた、感情を抑えられないなら魔力も抑えられないって。
「鏡、出す?」
「置いておいて、ぐすっ、くれないかなぁ?風のも、ひっ!巻き込み、たく、ないかっ、らっ」
「うん…しばらくしたら迎えに来るから」
「あ、あり、がとっ、」
風のが居なくなってしばらくは勇気が出なかった、そんな事あって欲しくないって思ってたから。
「うああっ、うそだ、うそだよっ!そ、そんなはず、ないっ、ここに、いなくても、きっと、せかいの、どこか、にっ!ひっく!」
そうだよ、デズモンド様は唯一無二だ。
そんな存在は簡単に…簡単に…
風のが置いていった鏡はボロボロになってた。
多分私の魔力で壊れたんだ。
壊れた鏡を覗き込むと私の頭には角があった
。
銀色にキラキラ輝いて綺麗な魔王としての証がそこに…
『いつもはかっこいいのに角があるとこんなに可愛くなるんです、いつもより魅力が増えますから外ではあまり出しちゃ駄目ですよ?』
『魔王様とはいえど誘拐されちゃうかも!』
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
「嘘!嘘だよ!なんで、なん……」
あの時の感覚は…
デズモンド様の何かを取り出したような…
あれは…
獣耳のおじいさんと出会ったあの時も、同じ。
それなら…
意識して角を仕舞う。
目を閉じてあのおじいさんを思い出す。
金色の耳を。
「あ、あ、あ、あ、あああああああああっっ!いやだ!いやだ!うそだよ!うそ!うそだもん!ぜったいにうそ!なんで、なんでなんでなんでなんで…!なんでだよ!ふざけんな!わ、わたしが!わたしが!うああああああああっっ!」
体中からごっそりと力が抜ける感覚がした。
多分魔力暴走なんだろうな。
私の頭には、あのおじいさんの金色の耳があった。
私取り込んじゃったの?デズモンド様を取り込んじゃったの?もうどこにも居ないの?どこにもデズモンド様は居ないの?もう私を撫でてくれないの?おはようって、いただきますって言ってくれないの?愛してるって私を黒で染め上げて、赤い瞳で見つめてくれないの?どうしてそんな事したの?悪魔が?悪魔が取り込む事を、なんでよ、なんで、なんでなんでなんでなんで…!
嘘だよ。
私が巡ってしまったとしても、みんな生きてる。
さっきだって死んだ4人が居たじゃん。
なら、デズモンド様だって生きてるもん。
私は魔力を研究してた、魔法陣も、家具も、仕事も、なんだって勉強して吸収してた。
だからこそ、間違いじゃないと思う心があるのが嫌だ。
デズモンド様の元へと転移出来なかったのは…
デズモンド様が…
嫌だ。
嘘だよ。
魔王城に転移したのに、ただの一軒家に転移したのは何かの間違い。
私の勉強不足だよ。
でも…
デズモンド様が存在しないなら、魔国だって存在しない。
だって、あそこはデズモンド様が居て初めて統率されている国なんだもん。
絶対的な王が居る、私の愛する人が治める国。
「かひゅ………」
死ぬだろうなと思った。
魔力がなかった体なのに魔力を枯渇して死ぬなんて笑える。
「デズモンド様ぁ…」
もう居ないの?本当に?私が食べちゃったの?どうして?
私は魔国に居る間召喚される事はなかった。
なんでか分からないけど、きっとデズモンド様の傍に居たから。
全ての本を読み漁っても私の体について分かった事は1つもない、謎しか増えていかない。
私は人間じゃないとしか分かっていない。
だってそうだよ、どこに愛する人を取り込んで自分の力にして、死んでも死んでも召喚された場所へと戻るんだよ。
ふざけんな、ふざけんなよ!なんでだよ、私がなにしたんだよ!デズモンド様の傍に居たいだけなのに…永遠に2人仲良く居れたらそれで良かったじゃん、なんでだよ、分かんないよ!分かんない分かんない分かんない!嘘だよ、デズモンド様は…デズモンド様は魔王で唯一無二なんだ、その角はきっとどこにもない。
デズモンド様しか持ってない魔王としての証。
デズモンド様デズモンド様デズモンド様。
「ああ、最低」
残りの魔力を使って無理矢理転移した。
多分もう死ぬから。
ガシャァァァァン!と大きな音が鳴ったのは分かったけど、内臓も骨もめちゃくちゃなのはなんとなく理解した。
「誰です?」
転移は簡単だ、覚えれば。
そう言ってた。
転移だけじゃない。
詳細に思い描く事が出来るなら簡単に出来る。
魔力があればだけどね。
そうだよね、これだけ乱用してまだ死んでないなんてほんと…
最悪。
床に倒れてる私をドタドタ足音がした後、誰かがなにかを言いながら拘束する。
無理矢理立たされた前に居たのは…
「リクぅっっ…!うあっ…、リクっ!デズモンド様、死んじゃっっ…!死んじゃったぁっ!」
「っっ、離しなさい私の客人です」
「し、しかし」
「下がっていなさい」
「「「はい!」」」
拘束が解かれてリクが私の体を支えてくれた。
きっと執務室だろうソファに横にされたけど。
「や、ぎゅっ、て、して、」
「っっ」
昔みたいに、いつものように、私を膝の上に乗せてくれたリクはいつだって私に優しい。
記憶がなくともこんなに優しい人の胸で他の男の名前を呼ぶ。
「リクっ、リクっ、デズモンド様、が、デズモンド様が、死ん、ふぅぅっっ…!わ、私が、ころ、ころしちゃった、の?な、なんで、どうして」
「落ち着いて下さい、怪我をしておりますから手当てを」
「いい、の、もう、しぬ、からっ、つぎ、また、あおう、ねっ、リクは、とりこまな、くて、いいだろう、からっ、」
「出来れば手当てをして欲しいのですが…」
「あのね…」
「はい」
リクとの思い出を話した、時間がないのは分かってたから簡潔に…だけど大切な事と私の事…そしてリクだけを選ばなかった懺悔とそれからの私の幸せな人生を。
何度も言葉に詰まりながら、でも魔力が枯渇していて抑えなくていいから、リクの膝にリラックスしながら。
「ヒナノ様せめて喉を潤して…失礼致します」
「ん」
口移しで飲ませてくれたお水は美味しかった。
何度もゆっくり飲ませてくれた
けど、そろそろ時間かなぁって…
「リク…デズモンドさまが、どこにも、いない、の…ど、して」
「ヒナノ様…」
「リク…あいして、る…ごめ、なさい…」
「ヒナノ様?……ヒナノ様っ!ヒナノ様っ!」
*********************************
ハッとして起きた。
体のこの感覚を忘れてた、焼けるように熱い。
体内を魔力が渦巻いているのも分かる。
「起きられましたか!?」
ネイサンの声に力の入らない体を精一杯起こして、ネイサンをベッドへと叩きつける。
「っ、せ、聖女様!落ち着いて下さい!」
「ふざけるなよ!お前の!お前のせいで…!お前が私を不幸にしたんだ!許さない!絶対に許さない!」
八つ当たりだって事は分かってる。
ネイサンの召喚陣にそんな作用はないんだ。
だけど許せなかった。
ネイサンがじゃない。
私の人生が許せなくて、怒りの矛先をネイサンに向けただけ。
漏れる魔力を抑えて、ネイサンを殺さないように、私が死ぬまで苦しめてやろうと、それだけに意識を向けて魔力を抑え込む。
「も、申し訳ございません…」
「ふざけるなよ、お前が私を召喚したせいでデズモンド様まで死んで、リクまで巻き込んで…!お前が居なければ私は何も知らない馬鹿な女で居られたのに!お前が私を召喚しなければ私は愛も知らずに生きられたのに!」
「「「聖女様!」」」
「お前達は下がっていろ!私はネイサンにしか用がない、私の世話も私の呪いも全てネイサンが引き受けるから2度と顔を出すんじゃねぇ!」
3人に声を荒げて外へ出す。
苦悩の表情を浮かべるネイサンにまだこれからだと思う。
「私は1度倒れるけどなにもするな」
「…分かりました」
「側に居ろ」
「はい」
「ネイサン」
「はい」
「教えてあげる、私とネイサンの話…そしてそれからの事」
「…」
1度倒れた私に残された時間は5日だけだった。
最初に戻った時はそんな簡単に死ぬ。
私は変わったんじゃなく、追加機能がついただけ。
愛する人を永遠に消滅させただけ。
1度目の人生を、ベッドに眠らせたネイサンに話して2度、3度…全ての人生を話した。
本当に呪いが存在するのはそこで知った。
私の吐き出した呪いによって体が蝕まれながらも謝罪を伝えるネイサンは酷く滑稽だった。
「お、おゆるし、くださ、もうし、わけ、もうし、わけ、ございませ…わ、わたしは、なんてことを…」
「お前のせいだ」
ずっとずっと謝ってた。
ネイサンのせいだと責め立てて、私がこれからも続く永遠の生を考えると吐き気がすると言ったら死んだ、呆気なく死んだネイサンを見て羨ましいと思う。
そこで私はまた転移した。
またじゃないか…
今回は初めて転移してリクの元へとデタラメに転移した先はどうやら寝室らしい。
私は他の男を平気で愛していくのに、リクの寝所に誰も居ない事に安堵し嫌悪した。
もうすぐ死ぬから傍に居たいとお願いしたら、本当に片時も離れず私と裸になって傍に居続けてくれた。
「リク」
「ヒナノ様」
「あい、してる、よ」
「ヒナノ様?…ヒナノ様っ!ヒナノ様っ!」
その次も次も次も次もネイサンに呪いを吐いて八つ当たりした。
流石に飽きたから今度は国を壊して殺して暴れ回った私はいつだって最期はリクの元に向かう。
海のと風のはあれから1度も起こさなかった。
こんな私を記憶がなくとも見られたくなかったから。
それに起こさなくていいんだとも思った、2人は好きな時に起きて好きな事をすればいんだから。
暴れて叫んで殺して蹂躙してまた死んでを幾度も繰り返した。
「あはははははは!!!」
リクを愛してるけど、まだデズモンド様に抱かれた私で居たかったんだ。
といっても、今の私を最後に抱いたのは理久だけどね。
暴れ回ってた時に国王に会った。
私を心底憎むような顔で敵対した国王に、初めてデズモンド様が死んでから恥じる気持ちを持った。
しょうがないじゃんって、こんな体になって私はツライのに、誰にも分かってもらえない私は可哀想なのに仕方ないじゃんって思ってた心は恥じた気持ちで終焉を迎えた。
「ふはっ………あーあ………」
「余の国を滅ぼさせぬぞ」
「ほんと……」
私はすぐに死んでデズモンド様を探し回った。
端から端まで見たの、本当だよ?
1人1人見てデズモンド様を探した。
死んだ場所まですぐに転移してまた探し回る事を選んだ私の行為は無駄に終わる。
どこにも居ない、デズモンド様はどこにも居なかった。
何千回?何万回?
数なんて数えてないけど、探し回った後は森に転移して死を選んでた。
選んだっていうか、まぁ、抱かれなきゃ勝手に死ぬからね。
あーあ、って思った。
もうすぐ死にそうな体であーあ。って思ったけど、他の世界に居るかもしれないとも思った。
でもね?
きっと居ない事は分かってるんだ。
私が巡ったあと変わる事はあっても、召喚された瞬間まではみんな変わらないんだよ?
変わったのは……
きっと取り込んでしまったんだ。
魔王様を。
結局生きなきゃならない。
生き続けなきゃならないんだ。
死んでまた最初からになったけど、上手く制御が出来なくて死んだ、抱かれる事も拒絶した。
しばらくそれの繰り返しをして、今の前の最初に戻った時は、すぐにリクの元へと転移して、事情を説明してこれから先どうしたらいいかって相談に乗ってもらったんだ。
「私は死んでしまいます」
「うん」
「それから考えみては下さいませんか?」
「ん?」
「私が死んで辛ければまた最初から、そしてそれでも前を進むと決めたなら生きてみましょう」
「ふふ、うん」
「…私だけを選ぶのは怖いですか?」
「凄く」
「でしたら力をつけた時には私だけを選んで下さいませんか?」
「っっ、うんっ!うんっ!」
「短い間ですが、お願いしますね」
「うんっ!」
「私は何度だって一目惚れしますから」
「うんっ」
「何度だって、どのようなお姿でもいいのです。私の元へ現れて下さいますか?」
「うんっ!」
「私も永遠に生きられたら…申し訳ございません。失礼が過ぎましたね」
「んーん、リクが言う事に失礼なんてないよ」
「愛しておりますよ」
「私も愛してる…次は最初にならないから今を最初にしたいの」
「はい」
「抱いて欲しいな…っ、お、おねが、い」
「私はずっと我慢しておりましたから手加減は期待しないで下さい」
「ふふ、うんっ!どんなリクだって大好き」
「私もお慕いしておりますよ」
だから私は次を6回目の人生だって決めた。
全て含めて次が6回目。
リクだけを選ばないように。
力をつけた時にはリクだけを選ぶように修行する生にした。
私は必ず死ぬ。
力をつけてリクの元へ帰るんだ。
出来ればデズモンド様も一緒に。
諦めてないよ。
他の世界に居るかもしれない。
だってね?取り込んじゃったなんて、そんな摩訶不思議、起こり得るはずないじゃんね?
ああ、そういえば国王に抱かれそうになってリクだけを考えちゃったなぁ…って久しぶりに目を開けた私は思った。
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