巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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淫魔編

5-24

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今日はいい天気だなぁ…なんて意識を逸らしてみるけど、リクに整えてもらった国王から贈られたドレスを見てげんなりする。
国王と会ってからげんなりする事ばっかり!
こんな重いドレスをこれから毎日着るの?
もう嫌なんですけど…
寝間着にスウェットと……精力的らしい国王に寝間着は必要ないかと思って頭からポイした。

「迎えが来てるようですよ」

部屋をノックする音が聞こえてリクが伝言を受け取ったけど、大丈夫です聞こえています。

「待ての出来ない犬か」
「私も逆の立場なら待ち切れないと思いますよ」

なんだろうか、最近リクの機嫌がいいんだよね。

「なんで機嫌いいの?」
「国王は馬鹿ではないのでヒナノ様を煩わせる事も少ないかと」

相変わらず私ファーストだ。
妃なんてなった事ないから分かんない事だらけ。
妃と名は頂いていたけどそれは本当に名だけで煩わしい事も煩わしい人間も周りに居なかったからこれから先を思うと…いや、認識を変えよう。
これも練習であり訓練だ。
これから先を考えて上に立つ者、人間の上に立つ者を側で見る事が出来る。

あれ?妃になった事って他に……

「化粧を」
「え!?」
「お嫌ですか?」
「いや、なんかびっくり、見せて?」
「はい」

軽く乗せるだけか。

「私も覚えたい」
「かしこまりました」

リクに教わりながら化粧をされる。
なんか崩れそう…崩れない魔法陣ないかな?
あ、あるわ。

「リク魔法陣書きたい」
「どうぞ」

魔法陣を書いてリクに魔力を流してもらう。
私は相変わらず魔力を上手く流せない。

「これでよれない化粧の完成ー!」
「高く売れそうですよ」
「これから貴族の女と関わるんでしょ?手札として取っておくからそれも国王にいいか聞いておいてくれる?」
「かしこまりました」
「これから忙しくなるけどよろしくね」
「命尽きるまでお傍におりますよ」
「私もリクの命尽きるまで傍に居る」
「はい」

これから旅をして誤魔化す事が出来なくなったから私の寿命は長いと伝えておいた。

800歳くらいまで生きると。

1人にさせてしまうと悲しげな顔をさせちゃったけど、その代わりたくさん思い出を作ろうと言った。

「あ、リク、お尻濡らす魔法で唇ぷるぷるに出来る?」
「…複雑な気持ちになりました」
「ふふ」

私の唇をうるるんとしたら完成だ。
これから先リクと2人の時以外は絶対に気を抜かない、魔力制御を甘くしたら駄目。

「お手を」
「愛してる」
「私も愛しておりますよ」

部屋から出て守護神官達に最後の挨拶をする。

「ここに居ない者にも伝えて下さい、付き従ってくれた者も、毎日を守り私の平穏を守って下さったみなさんに多大なる感謝を。居場所は変わりますがみなさんの献身を忘れる事はありません…本当にありがとうございました」

顔を上げると何名か“はい”と口元だけ動かしてくれた。
リクにエスコートされて神殿を歩くけど、私の歩幅ってもう少し大きくならないかな。
城の中で生き来するの大変そうなんだけど。




やっと入り口まで着いた。
国王は大人しくして…

「ヒナノ!」
「お待たせ致しました」
「よい!行くぞ!」
「はい」

エスコートを国王にしてもらい歩く。
下で待ってろよと思うんだけど…
私達の後ろにはアルナブとリクが居る。
きっとこの光景はこれからの当たり前になるだろう。

国王と聖女の恋物語は加護の海で出会い、一目惚れした2人が想い合うけれど、それでも神殿と国という拗れた糸の中で苦悩や葛藤がある中で、国王が妻達と全員縁を切りアタックしたお陰で聖女も愛を伝える事にした…らしいですよ。

そんな恋物語に感動してる民に手を振る私達はなにかの劇を見せてるようだ。

ふむ。

階段を降りる国王の手を引っ張って止める。

「どうした」

なんだろう?私ってまだ逃げると思ってるのかな?

「国王陛下、私の最愛」
「っ」

私が目を瞑ったから分かったんだろう、腰を引き寄せ軽くキスをした。

「「「「「「「わああああぁぁぁっっ……!」」」」」」」

ああ、煩すぎる。
耳がいいのも問題だなぁ…

ゆったりと手を差し出し、階段を降りていく中の歓声が倍以上だ、凄いな。

手を振りにこやかに歩く私達に一体どんな幻想を抱いてるんだろう。

馬車へと先に乗った国王にエスコートされ、既に乗っているリクの隣は私、アルナブは国王の横に。

何も言わなくても反対側の窓から手を振れるような配置と配慮に有り難いと思う。




やっと人が捌けてリクがカーテンを閉めてアルナブも閉める。

「相変わらずだな」
「なにがだろう?」
「いや、会いたかった」
「私もですよ」
「そうか!」
「いくつか案が…んなっ!?」
「意味が違うと思わんか?」

私を膝の上に乗せる俊敏さは凄いですね。

「早すぎです」
「嫌か?」
「お陰で確認して欲しい事がたんまりです、仕事して」
「ははっ!そんな事を言うのはヒナノとアルナブだけだ」
「え♡どうだった?」
「アルナブはこう見えて淫乱でな!」
「やめろ!」
「「もっと?」」
「っっ~!」
「可愛いアルナブ!」
「む、それは余の役目だ」
「やだ、もっといちゃいちゃして♡」
「そうか!来いアルナブ!」
「ふざけんなっ!」
「むぐっ…!もぐもぐ」
「なんだ?」
「ヒナノ様は食事をなさらないので、こうして無理矢理詰め込むんですよ」
「そこまで美味しく感じないか」
「不味すぎる」
「ふむ、取り寄せてみるか」
「いいよ、どうせ美味しくない」
「「…」」

国王の膝の上でアルナブとリクの会話を聞いておく。

聞かなくてもいいか、この2人だし。

「国王」
「どうした?」

随分と柔らかい態度だな。
というか…

「なんでもうピアス着けてるの」
「ああ、アルナブ」
「おら」
「ヒナノのだ」
「ありがとう…」
「よい!気に入ったか?」
「うーん…」
「他の物にするか?」
「あ、ううん、いくつか耳につけて」
「何故だ」
「アルナブの分」
「っっ」
「フェイクか」
「いいでしょ?駄目?」
「よい!アルナブ用意を」
「アホか、リクお願いね」
「かしこまりました」
「アホだのクソだの酷い事を言う」
「事実でしょ」
「ははっ!着いたら初夜だ!」
「なんでだろう、仕事がたんまりなんだけど」
「明日やれ!」

アルナブを見ると…ふむ、疲れてるな。

「病み上がりー」
「よいとリクに聞いた!」
「リクは仕事が早いね!かっこいい!」
「ありがとうございます」

アルナブが疲れて3人も疲れて、なにをそんなに疲れる事があるんだろ?

「アルナブー」
「ああ」
「国王って一生激しく腰が動くの?」
「そ、そ、そ、ない!そんな、や、や、」

優しく!そこは優しくだよ!大丈夫。いくらだって待てるからね!

「「…」」
「や、や、」
「「…」」
「しらねぇよ!」
「知ってるけど教えたくないって、やだ嫉妬?もっとして!」
「ははっ、よいよい!」
「よくねぇ!」

それにしても優しいらしい。
ただの持久力か。

城に着いて必要な人間に挨拶したら本当に寝室に連れて行かれた。
リクはアルナブに案内してもらうらしい。

っていうかこの間の部屋じゃん!一体どこまで聖女を持って行ったんだよ!

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