巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

文字の大きさ
196 / 247
淫魔編

5-42

しおりを挟む

懐中時計も見るようにした。
デズモンド様の花を咲かせられないかなとも思ってやってみたけど無理だった、私はどこまでも劣化品だ、海のに会いに行こうかなとも思ったけどやめた、そのうち起こしちゃうだろうけど、今の私は海のと風のを攻撃しちゃうだろうから。

うっかりで魔力暴走なんて起こすもんじゃない。

家に…リクとの家に帰らずに洗浄も出来ない私はきっと臭くて汚い。

15日は泣いてた、ずっとずっと泣いてた。
それでもまだ悲しくて泣いていた、呪いを放ってはなくしてを繰り返しながら泣いていた私はとても迷惑だったらしい。

「………やめて」
「ひっく!ぐすっ、え?」
「………やめて、いたいよ」
「ぐすっ、んえ?」
「………」
「ひっく!んっ、誰?」
「………ずっと痛い…攻撃?」
「んえ?」

まだ涙が止まらなくてボヤける視界の中で聞こえる声を探した、キョロキョロキョロキョロ探したけど見当たらなかった。

目を凝らしてみたら…

地面から瞳までしか出てない子に驚いた。

「んえ?ご、ごめんね?痛かった?ぐすっ」
「………ずっと痛い、僕を殺したいの?」
「ううん!そんな事ないよ、何が痛かったのか分からなくて…迷惑かけてたらごめんね?何を止めたらいいかな?」
「………攻撃じゃないの?」
「うん」
「………」
「ふあ…」

私の目の前にちょこんと座る男の子?は茶色の髪に茶色の瞳、私より少し背が低い子はどうやら土から出てきたらしい、体中が土まみれだ。

「ふふ、土がたくさん、ぐすっ」
「………」

手で髪と頬にかかってる土を払うと私の膝に乗る子はくりくりとした瞳で私を見上げて小さな口で喋り出す。

「あれなあに?土痛い」
「土?…呪いかな?ご、ごめんね!?まさか痛くなる人が居るなんて思わなく…ご、ごめんね!?言い訳だった!ごめんなさい!怪我した?ずっと痛かった?」
「人じゃない、土の精霊」
「そうなんだ、ごめんね?」
「名前教えてくれたら許してあげる」
「ヒナノだよ」
「ヒナノ、僕の名前」
「わっ!わっ!駄目だよ!名を縛る陣があるから名前を教えちゃ駄目!」
「………」
「痛みは?」
「へーき」
「そっか、本当にごめんなさい…」
「いーよ、もうしない?」
「うん!…ご、ごめん、まだ制御出来なくて約束は出来ないけどなるべく抑えるから!」
「いーよ」
「ありがとう土の!」
「ヒナノ臭い」
「う、うん、そうだよね!洗ってく…あ、ありがと」
「うん」

洗浄をしてくれたらしい土の精霊は可愛らしい、それでもまだ悲しい私はぐずぐず泣き始めた。
力を抑えて、ぎゅぅぎゅぅ抑えてる間、土のもぎゅぅぎゅぅしてたみたい。

「ひっく!ぐすっ、うええええんっ!っ、うああああああっ!」
「ヒナノいたい?」
「いたい、よっ!いたい、こころ、が、いたいよっ!しんじゃっっ、しんじゃったあああああっ!」
「いいこいいこ」
「うああああああん!」

私の方を向いて頭に手を伸ばして、いいこいいこと言いながら撫でられた手は熱くて、デズモンド様を思い出してまたびえびえと泣いた。




いつまでも泣き続ける私の傍に居てくれる土のはずっとずっと頭を撫でてくれた。




「ぐすっ、おなか、すいちゃっ、ひっく!たべなきゃ、んっ、そこまで美味しくな、いけど、んっ、食べる?」
「うん」

土のともぐもぐしてお水を飲んでまた泣き続けたけど。

「ぅぅ…」
「ひっく!ど、した、の?」
「まぶしい…」
「光が苦手?」
「うん」
「じゃぁもうお帰り、また遊んでね?」
「………うん」

なんでか私の瞼にちゅっとキスをして居なくなった土のが消えた時は朝だった。
そして私はその場で眠ったけど、久しぶりに夢を見ない日で、起きたら魔力があまりなかったから1度家に帰ってお風呂に入って寝た私はまだ涙まで制御出来ないけど、リクの思い出がたくさんあるこの家は暖かくてまたゆっくり眠れた日だった。





「よし!」

土のが居た場所は帰る時に覚えてたから転移して詠唱する。

「世界の根源世界の理高く高く広く広く私の元へ大地に潤いを満たせ」

どこまでか分からないけど魔力がなくなるまで満たそうと思った。
痛みを与えた事実はなくならないけどせめてもの罪滅ぼしに。




「うあっ…もうだめ…」

バタンと草の上に寝転がる私の上に一緒になって寝転がる土の、相変わらず精霊は突然だ。

「ぅぅ…」
「か、帰った方がいいよ?」
「うん、ありがと」
「んーん、ごめんなさいしただけ」
「うん」

土のが私の上から消えた。



心を整えよう、アディティの所に居た私はマナーを教わった。
とても大切な事だから、完璧だと言われても唯一無二だと思われたいと言ってマナーを学ぶ期間を延ばしてもらったのは心の鍛え方があったから。

いつだって前を向いて毅然にと、言われた言葉はバーズリー国で、そうだ、私はデズモンド様だけでなくフィフィの妃となった時に誰かが教えてくれた事。

息を整えて、体の力を抜いて。

ゆっくりゆっくり整えよう。

指先まで意識して相手から見られている事を常に意識する、相手とは目の前に居る人の事を言っていたけどそうじゃない。

全ての目から意識するんだ。

私の行動、吐く息、目線を落とした先。

全てを意識されていると思え。

どんな人物がどのタイミングでは相応しいか。

アディティがお茶会を何度も開くから人間についても観察出来た。

1つ1つ私の中の人物を創り上げる。

どんな人間で、なにに感動するか、こういう人間ならどう動くか。

取り込んだ全てで様々な人物を創り上げていく、それはこれから先に必要な事。



「ん」
「………」

土のが戻ってきたらしい、どうやら夜みたいだ。

私は召喚されるかもしれない。
だから必要な人物像を創り騙し、そしてリクが言ってくれたようにいつか愛する人にだけ曝け出す私を持とう。



強くなろう、デズモンド様のように。

求め続けようアディティみたいに。

罪悪感と人に寄り添える心を持とうネイサンみたいに。

守り、人の側に居る事が大切だと思おうダグラスみたいに。

頼られる事を嬉しく思えエルみたいに。

幸福を与える事で笑顔になる私で居ようフィフィみたいに。

リクみたいになるのはやめておこう。
私はリクのような人間に近い。
それを出すと心がきっと弱くなるから。

愛する人の前でだけ私を見せよう。



「土の」
「うん」
「友達になりたいな」
「いーよ」
「ふふ、ピアス着ける?」
「知らないなに?」

たくさんピアスを作った、いつか誰かと連絡を取りたいと思った時用に。
海のと風のは対になるデザインを作ったけど、気に入ってくれるかな?

「居場所も分かるけど人間の側に居る時は来ちゃ駄目だよ、危ない」
「うん」

土のが着けてくれたピアスはシルバー。
シルバーなら誰でも変じゃないかなと思ったから。

「ヒナノ痛い?」
「とっても、でも私の為に痛みを心に仕舞うの」
「どーして?」
「私は1人じゃ生きていけないから」
「…寂しいの?」
「とっても」
「僕は幸せ」
「ふふ、幸せな私も見せられるように頑張るね」
「いいこ」
「土のもいいこ」

頑張ろう。

まだツライけど。
全然ツライけど、とっても痛いけど。

私は生きて強くなる。

私の体について分かる事はないと思うけど、それでも強くなろう。

死ねないならリクが永遠に生きられるような魔法陣だって生み出してやる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...