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冒険の国
合流
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さて、最後の一仕事も終えたし。行くか。
まとめた荷物をリュックサックに入れ(ほとんどが始まりの星に入れている)背負う。
改めて世話になった家を見る。
この家は、今を見れば立派な物だが最初の方は酷かった。木の乾燥が甘くて組んでいる途中で割れたり、レンガの大きさが合わずガタガタな屋根になったり、結局テント暮らしになってしまった。それでも諦めず作っていき、数多の失敗を繰り返していき完成したのがこの家だ。
完成しても家造りは終わらなかった。一段落して椅子に座ると床が抜けた。まさかの腐っていた。そこを直したと思ったら、次はガラスの分厚さが不均等だったようでヒビが入った。
そして数年が経って何も起こらなくなり鍛冶に手をつけたら、煙突に鳥の巣を作られており上手く換気ができず部屋の中が真っ黒になった。
その後は錬金術をして部屋を爆発させたり、力加減を間違えて扉を壊したりと問題だらけだった。でも今まで生きてきた中で1番、楽しかった思い出が多く詰まっていた。
これからの旅も面白いだろうけど、やっぱり1位2位を争うんだろうな。
私は、何も言わず頭を下げて今までの感謝の気持ちを込める。
数秒が経ち、頭を上げて扉に手をかける。すると、後ろで誰かが手を振った気がして後ろを振り向いた。もちろんだが、家の中には誰もいない。
その時ふと、過去の友人の話に出ていた付喪神という存在を思い出した。思い入れのある物、長く使われた物に宿る精霊のような物。なるほど、この家には私とゴーレム達の他にも住んでいたのか。
「それじゃ、また会おう」
それだけを言い残して、私は外の世界に旅立つ。
「どっちだ」
久々に、外に出たせいで方向感覚と町の情報が頭の中から家出していた。全くもってどこに行けばいいのか分からない…。あんなカッコよく出てきたのに…家の付喪神に笑われてしまう。
…仕方ない、飛ぶか。
足に力を入れて垂直跳びをする。木の天井を突き破り、夜がハッキリと見えた。星が煌々と輝いている。あの時と変わらず。
空に来たし、ついでに本来の姿に一瞬なるか。やはり、本来の姿の方が楽なのは楽だからな。
私は一瞬だけ枷を外して本来の龍の姿に戻る。長くこの姿で滞在すると、影響は少なからず周りにあるので直ぐに戻る。
龍と言っても翼はなく鱗もなく、長細い真っ黒な体と大きな1つ目が体の端っこに着いた姿だ。スライムが蛇のように変形したような感じで、蛇足の腕と足が生えている。
まあ、のっぺりとした姿と言えばいいだろ。
後日談としては近くの村で守衛達が「命を見た」や「世界が残酷な程美しい」などと叫び錯乱していたとか。正気に戻った彼らはその時の記憶が一切なかったと言う。
さて、行先も見つけないとな。
周りを見渡してそれっぽい所を見つけた。石の壁がズラっと森から守るように建ってる所がある。あそこだな。
地面に着地して、石の壁が見えたところに向かう。
それにしてもいつの間に作っていたのか。町なんてかれこれ数百年は見てない。よく、昔の友人に話されていたがこうなっているとは。
1時間ほど歩いてたら明かりが徐々に見えてくる。森が伐採されていたのか木々が消えて、目に見えたのは立派な石壁と鋼鉄製の門だ。数十mはある。
「おい!!止まれ!!」
明かりに近づこうとしていたら男性の声で止められた。
「こんな夜更けにどうした!!」
どこにも姿が見えない。どうやら門の上から声をかけているようだ。
「この町に行こうとしていたのですが、道に迷ってしまいこんな時間になってしまいました!!」
まあ、嘘は言っていない。道には一瞬迷ったしな。
「しばらくそこで待て!!」
数分待っていると門の横にあった木の扉から鎧を着た男性が2名出てきた。鎧の見た目は薄汚くなっているが手入れが行き届いた良い鎧だ。この鎧ならこの森の魔物にも対応できるだろうな。
2人はにこやかに来ているが警戒しているのが丸わかりだ。
「兄さん、こんな時間に魔の森から出てくるなんて凄いなぁ」
あそこ…魔の森なんて呼ばれてるのか…。
「いやぁ、道を少し外れてしまいましてね。気づいたらこんな所まで外れまして」
私も笑顔で返す。警戒されても意味ないからな。
「そうかそうか。それじゃ、まあ、入る前のルールとしてこの水晶に触れてくれ」
私と話していた兵士が手のひらに収まるサイズの水晶玉を取り出す。
「分かりました」
文句は言わずにヒョイっと水晶玉を持つ。すると自分の中身を見られている気分になった。恐らく過去に犯罪歴が無いか調べてるのだろう。
「…長いな。なぁ、あんた。長命種か?」
長命種とはその名の通り100年を余裕で生き抜く種族のことである。最高で1000歳まで生きた者もいるらしい。
「まあ、そんなところです」
嘘はついていない。長命ではあるからな。
そしてやっと判定できたのか水晶玉が白色に光る。
「白か。良し、大丈夫そうだな」
兵士は、後ろに居たもう1人の兵士に目配せをする。すると兵士は出てきた扉の所にまで走りに行った。
「いやぁ、長い間拘束してすまなかったな。今入る手続きをしているからもう少し待ってくれ」
「それはありがとうございます。数時間でも数ヶ月でも待ちますよ」
「そこまで待たせたら俺らが無能ってことになっちまうから勘弁して欲しいもんだな」
笑いながら言う。今回はちゃんと心から笑っているようだ。
「そう言えば兄ちゃんは何している人なんだ。商人にしては荷物も無いし、冒険者にしちゃ装備がない」
「そう…ですね。冒険者になろうと思って来ましてね」
「なんで一瞬考えたんだよ」
「まあまあ、それは良しとして私はドラメリアと言います」
右手を出して握手の合図を送る。
「俺はパルカリアって名前だ。ここの門長をしている」
門長と言うのは門を警備する兵士の中で隊長という意味だ。実力とカリスマがないとなれない物だ。
門を守るということは、何かから国を守るための門をさらに守護する存在ということだから実力がないと話にならない。そして、国によるかもしれないが基本投票で決められる。なのでカリスマも必要なのだ。
私とパルカリアは固く握手をする。
「それはそれとして、ドラメリア。お前強いだろ」
「はて?なんのことですか?私は一般人に毛が生えたレベルですよ」
「謙遜か隠そうとしているかは知らないが。握手してわかった。俺の数倍どころの騒ぎじゃないな」
…凄いな、ここまで読まれるとは思わなかった。見た目はただの優男だからな私は。
「まあ、その判断はそちらに任せますよ」
「食えない奴だなぁ…気に入った」
本当に楽しそうな顔をする。今の、人間はなかなか面白いのが多いものだな。
「そろそろ入れそうだな」
パルカリアがそう言うと大きな鋼鉄の扉ではなく端っこの方に着いている門の中の門が開く。
大きな方は時々来る勇者や英雄などを迎えるための門らしい。
「それじゃ、改めて。ようこそ冒険者達が集う街へ」
そう言えば名前が存在しなかったな。
私は少し笑みをこぼしながら街に入る。
さて、朝になったな。私が今、どこにいるかと言うと「ブルルッ」「ウォン!!」「クアァァァ!」…獣舎の中である。宿屋に付いている獣舎で、ここに泊まっている人達のペットやら仲間やらが集まっている。そして、なぜ私がここにいるかと言うと…シンプルに泊まれる所がなかった。夜遅かったという理由もあるが、どうやら近々祭りがあるみたいで人が多く泊まっているようだ。その結果、獣舎しか空いてないということでこうなった。
周りの子達は私の存在に勘づいているようでちょっかいなどはかけられなかった。
「寝心地は洞窟よりかはいいな」
はるか昔の記憶が蘇る。…そう言えば最近あの子達に会ってないな。連絡もないから危ないことにはなってないはずだが。
そうやって昔のことを思い出していると、この宿を経営している女将さんが顔を出す。
「あら、起きてたのかい」
「はい、お陰様でいい目覚めです」
「もうちょっと早く来てたら、そんな寝藁よりも気持ちのいい宿自慢のベッドで寝れたのにねぇ」
「ハッハッハ、昨日の私を恨まないといけませんねぇ」
女将さんは少し驚く顔をするがすぐに笑顔になる。
「朝食の準備は出来たから食べに来な。まさか朝食もここで食べるなんて言わないだろうね」
「ここで食べたら、周りの子達に取られてしまいますからさすがに食べに行きますよ」
立ち上がりながら応える。
「それじゃ、食堂に来なよ。ちょっと人が多いから相席で頼むよ。ちゃんと自分から話しかけて相席しなよ」
「はい」
女将さんはいい笑顔を向けて、足早に戻っていく。
体に付いた寝藁などをはたき落としてから食堂の中に入る。食堂は大きく、人が100人入っても余裕だと思えるほどの広さだ。現に100人以上いるように見える。食堂の中は色んな人間の声で溢れており、食堂で働く者、泊まっていた客。様々な人で溢れている。
私が最後なのか人の列などは無かった。周りを見渡して椅子が1席だけ空いているところがあった。そこに向かい、席にお客人が3人いたので話しかける。
「すみません、この席座っても良いですか?」
「おう、自由だからな座れ座れ」
許可を出してくれたのは、鼻の先に立派な角を拵えた獣人族の男性だ。2m以上はある筋骨隆々な男性だ。
その横には私を一瞥して、すぐに本を読みはじめる小人族の女性。
もう1人はまだ眠いのか机に倒れ込むようにうつ伏せている、耳の尖った森人族の…男性?女性?がいた。
「ありがとうございます」
「なに、この4人席にあと一人足りなかったからちょうどいい!」
座ったと同時に店員さんが来て注文を聞かれる。
「それじゃこの宿オススメのをください」
その瞬間周りの席が静かになる。店員さんが笑顔で返事をした後に厨房に向かう。それと同時に音が戻る。
「あんた、もしかして。ここの宿に来るのは初めてか?」
獣人の男性が顔を引きつらせながら聞いてくる。
「はい、昨日着いたばかりで。右も左もわからない状態ですね」
ヘラヘラと答える。こうとしか言いようがないしね。
「この宿のオススメメニューはな。馬鹿みたいな量を提供してくるんだ。それも肉肉肉のオンパレード。もし肉1切れでも残したら、金貨1枚要求してくるだ。もし払えなかったら10日間無償労働させられるんだよ」
「はぁー。面白いですね」
男性は呆れたと言いたげに顔に手を当てる。
「おい」
私が笑ってる、と後ろから声をかけられる。振り向いてみると、目の前にいた獣人よりも大きく3mはありそうな人族の男性が立っていた。
「どうしましたか?」
「俺はここの料理を担当しているジャバだ。オススメメニューを頼んだやつがどういうのか一目見てやろうと思ってたが…ただの優男じゃねーか」
「楽しみに待ってますよ」
なんか威圧をかけてきているが、楽しみなのは本当なので事実を伝える。
「ほう、普段だったらやめろと言ったが…特別に用意してやる」
そう言いながら、額に青筋を立てて厨房に戻っていく。
「楽しみですね」
笑顔で獣人に言うと、呟くように「稀に見るアホか大物か」と言っている。
小人族も気になるのか目が本と私を行き来している。
数十分後出てきたのは一番下にステーキ10枚、その上にハンバーグ8枚、その上にバラ肉の焼肉が盛られており、1番上にはなにかのユッケが山の頂上を飾っている。
「食えるものなら食ってみろ」
人族はそう言って厨房に戻る。
獣人は心配してくれていたのか自分たちの食事が終えても私に対して「やめとけって、本当に」と声をかけてくれていた。今は山を見て絶句している。
「あのすみません」
私は大事なことを忘れていたので人族を呼び止める。
「なんだ?もしかして怖気付いて辞めるなんて「ご飯大盛りお願いします」
人族は額の青筋増やしながらもご飯大盛りを用意してくれた。肉山の3分の2程の大きさだ。
「ありがとうございます」
箸を持ちユッケから食べ始める。甘くとろける味だ。ご飯に合う。
焼肉は生姜が効いており食欲を増進させる。
ハンバーグは肉汁がタップリでソースと相まって美味い。
ステーキは雑に切られておらず、繊維に沿って整っている。油が甘い。
もちろん食べきった。正直に言うと、私には胃というものが存在しない。味覚は存在する。その結果、口に入れて味わった後はすぐに吸収していくので満腹どころか空腹も何もかも感じない。
「美味しかったです」
人族は唖然としていたが、唐突に頭を下げる。
「すまねぇ!!まさか食べ切れるとは。今までの発言は撤回する」
どうやらワケありだな。
話を聞いてみるとなかなかふざけた状態のようだ。前までは常連のみが知っていたオススメメニューだが、誰かがMTubeで公開した結果色んな人が挑戦しに来たみたいだ。最初の方は真剣に挑戦する人がいたのだが、どんどんとふざけて注文してはほとんど残すということが多発したみたいだ。その結果、無駄に消費される食べ物を見てイラついていたようだ。
私もそのうちの一人だと思われてたらしい。バカバカしいな。
金払ってるから別にいいだろって思ってる輩もいたそうだ。金を払ったら料理人の気持ちを踏みにじってもいいわけないのに。本当に思考能力を持っているのか、そいつらは。
「いや、そう言ったことがあるのであれば別に怒るわけないですよ。そう言った人外共が悪いことなので」
そう言うと、人族は分かってくれるかと言いたげに握手をする。
「ドラメリアさん!!」
私と人族が話していると、階段から降りてきたシュート君が私を見つける。
「おお、シュート君。昨日ぶりだね」
「もう来てたんですね」
慌ててこちらに向かってくる。
「いやぁ、善は急げって言うからね」
「ぜん?…そう言えば昨日ソーニャが叫んでたのってドラメリアさんについてだったんだな」
シュート君が呟く。
「叫んでたの?」
「はい、昨日の夜中突然叫び出しまして。ソーニャどころか、色んな人達が叫んでましたね」
「へえ、私の配信全て消したからかな?」
「あ、恐らくそれですね」
シュート君は苦笑いしながら言う。
「それじゃ今日からよろしくねシュート君」
「はい!お願いします」
周りの喧騒に紛れながらも、新しい友人に出逢えた。
~世界創世記 作セイラス伝卿 第1章第1節より(修正前)~
この世界は1の龍により創造された。龍は身を削り世界に力を宿す。そして永き眠りにつき、星が生まれた時覚醒する。そして星を見守り、生命が魔力を使い芽吹き始めた。魔力とは、この世に散らばった力を濃く手に入れた龍の1部であった。命溢れた時、龍は子供達を創り出す。8の龍は世界に翼を広げた。そして1の龍が集団の生命により消された。
この世を作ったのは龍である。後に生まれた神とほざく存在は、龍のお零れを得た餓鬼である。畏敬、崇拝、瞻仰されるべきはこの世にただ1つの御仁である。
~世界創世記 作セイラス伝卿 第1章第1節より(修正後)~
この世界は1の名も無き神により創造された。神は身を削り世界に力を宿す。そして永き眠りについた。そして命を賭して創られた星を命無くしても見守る。生命が、神の跡継ぎである創造神により芽吹き始めた。この時、創造神の力が周りに溢れる。そして魔力が生まれた。創造神は7柱、神を作り出しこの地の管理を任せた。
畏敬、崇拝、瞻仰されるべき神は今も見守っている。
まとめた荷物をリュックサックに入れ(ほとんどが始まりの星に入れている)背負う。
改めて世話になった家を見る。
この家は、今を見れば立派な物だが最初の方は酷かった。木の乾燥が甘くて組んでいる途中で割れたり、レンガの大きさが合わずガタガタな屋根になったり、結局テント暮らしになってしまった。それでも諦めず作っていき、数多の失敗を繰り返していき完成したのがこの家だ。
完成しても家造りは終わらなかった。一段落して椅子に座ると床が抜けた。まさかの腐っていた。そこを直したと思ったら、次はガラスの分厚さが不均等だったようでヒビが入った。
そして数年が経って何も起こらなくなり鍛冶に手をつけたら、煙突に鳥の巣を作られており上手く換気ができず部屋の中が真っ黒になった。
その後は錬金術をして部屋を爆発させたり、力加減を間違えて扉を壊したりと問題だらけだった。でも今まで生きてきた中で1番、楽しかった思い出が多く詰まっていた。
これからの旅も面白いだろうけど、やっぱり1位2位を争うんだろうな。
私は、何も言わず頭を下げて今までの感謝の気持ちを込める。
数秒が経ち、頭を上げて扉に手をかける。すると、後ろで誰かが手を振った気がして後ろを振り向いた。もちろんだが、家の中には誰もいない。
その時ふと、過去の友人の話に出ていた付喪神という存在を思い出した。思い入れのある物、長く使われた物に宿る精霊のような物。なるほど、この家には私とゴーレム達の他にも住んでいたのか。
「それじゃ、また会おう」
それだけを言い残して、私は外の世界に旅立つ。
「どっちだ」
久々に、外に出たせいで方向感覚と町の情報が頭の中から家出していた。全くもってどこに行けばいいのか分からない…。あんなカッコよく出てきたのに…家の付喪神に笑われてしまう。
…仕方ない、飛ぶか。
足に力を入れて垂直跳びをする。木の天井を突き破り、夜がハッキリと見えた。星が煌々と輝いている。あの時と変わらず。
空に来たし、ついでに本来の姿に一瞬なるか。やはり、本来の姿の方が楽なのは楽だからな。
私は一瞬だけ枷を外して本来の龍の姿に戻る。長くこの姿で滞在すると、影響は少なからず周りにあるので直ぐに戻る。
龍と言っても翼はなく鱗もなく、長細い真っ黒な体と大きな1つ目が体の端っこに着いた姿だ。スライムが蛇のように変形したような感じで、蛇足の腕と足が生えている。
まあ、のっぺりとした姿と言えばいいだろ。
後日談としては近くの村で守衛達が「命を見た」や「世界が残酷な程美しい」などと叫び錯乱していたとか。正気に戻った彼らはその時の記憶が一切なかったと言う。
さて、行先も見つけないとな。
周りを見渡してそれっぽい所を見つけた。石の壁がズラっと森から守るように建ってる所がある。あそこだな。
地面に着地して、石の壁が見えたところに向かう。
それにしてもいつの間に作っていたのか。町なんてかれこれ数百年は見てない。よく、昔の友人に話されていたがこうなっているとは。
1時間ほど歩いてたら明かりが徐々に見えてくる。森が伐採されていたのか木々が消えて、目に見えたのは立派な石壁と鋼鉄製の門だ。数十mはある。
「おい!!止まれ!!」
明かりに近づこうとしていたら男性の声で止められた。
「こんな夜更けにどうした!!」
どこにも姿が見えない。どうやら門の上から声をかけているようだ。
「この町に行こうとしていたのですが、道に迷ってしまいこんな時間になってしまいました!!」
まあ、嘘は言っていない。道には一瞬迷ったしな。
「しばらくそこで待て!!」
数分待っていると門の横にあった木の扉から鎧を着た男性が2名出てきた。鎧の見た目は薄汚くなっているが手入れが行き届いた良い鎧だ。この鎧ならこの森の魔物にも対応できるだろうな。
2人はにこやかに来ているが警戒しているのが丸わかりだ。
「兄さん、こんな時間に魔の森から出てくるなんて凄いなぁ」
あそこ…魔の森なんて呼ばれてるのか…。
「いやぁ、道を少し外れてしまいましてね。気づいたらこんな所まで外れまして」
私も笑顔で返す。警戒されても意味ないからな。
「そうかそうか。それじゃ、まあ、入る前のルールとしてこの水晶に触れてくれ」
私と話していた兵士が手のひらに収まるサイズの水晶玉を取り出す。
「分かりました」
文句は言わずにヒョイっと水晶玉を持つ。すると自分の中身を見られている気分になった。恐らく過去に犯罪歴が無いか調べてるのだろう。
「…長いな。なぁ、あんた。長命種か?」
長命種とはその名の通り100年を余裕で生き抜く種族のことである。最高で1000歳まで生きた者もいるらしい。
「まあ、そんなところです」
嘘はついていない。長命ではあるからな。
そしてやっと判定できたのか水晶玉が白色に光る。
「白か。良し、大丈夫そうだな」
兵士は、後ろに居たもう1人の兵士に目配せをする。すると兵士は出てきた扉の所にまで走りに行った。
「いやぁ、長い間拘束してすまなかったな。今入る手続きをしているからもう少し待ってくれ」
「それはありがとうございます。数時間でも数ヶ月でも待ちますよ」
「そこまで待たせたら俺らが無能ってことになっちまうから勘弁して欲しいもんだな」
笑いながら言う。今回はちゃんと心から笑っているようだ。
「そう言えば兄ちゃんは何している人なんだ。商人にしては荷物も無いし、冒険者にしちゃ装備がない」
「そう…ですね。冒険者になろうと思って来ましてね」
「なんで一瞬考えたんだよ」
「まあまあ、それは良しとして私はドラメリアと言います」
右手を出して握手の合図を送る。
「俺はパルカリアって名前だ。ここの門長をしている」
門長と言うのは門を警備する兵士の中で隊長という意味だ。実力とカリスマがないとなれない物だ。
門を守るということは、何かから国を守るための門をさらに守護する存在ということだから実力がないと話にならない。そして、国によるかもしれないが基本投票で決められる。なのでカリスマも必要なのだ。
私とパルカリアは固く握手をする。
「それはそれとして、ドラメリア。お前強いだろ」
「はて?なんのことですか?私は一般人に毛が生えたレベルですよ」
「謙遜か隠そうとしているかは知らないが。握手してわかった。俺の数倍どころの騒ぎじゃないな」
…凄いな、ここまで読まれるとは思わなかった。見た目はただの優男だからな私は。
「まあ、その判断はそちらに任せますよ」
「食えない奴だなぁ…気に入った」
本当に楽しそうな顔をする。今の、人間はなかなか面白いのが多いものだな。
「そろそろ入れそうだな」
パルカリアがそう言うと大きな鋼鉄の扉ではなく端っこの方に着いている門の中の門が開く。
大きな方は時々来る勇者や英雄などを迎えるための門らしい。
「それじゃ、改めて。ようこそ冒険者達が集う街へ」
そう言えば名前が存在しなかったな。
私は少し笑みをこぼしながら街に入る。
さて、朝になったな。私が今、どこにいるかと言うと「ブルルッ」「ウォン!!」「クアァァァ!」…獣舎の中である。宿屋に付いている獣舎で、ここに泊まっている人達のペットやら仲間やらが集まっている。そして、なぜ私がここにいるかと言うと…シンプルに泊まれる所がなかった。夜遅かったという理由もあるが、どうやら近々祭りがあるみたいで人が多く泊まっているようだ。その結果、獣舎しか空いてないということでこうなった。
周りの子達は私の存在に勘づいているようでちょっかいなどはかけられなかった。
「寝心地は洞窟よりかはいいな」
はるか昔の記憶が蘇る。…そう言えば最近あの子達に会ってないな。連絡もないから危ないことにはなってないはずだが。
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「あら、起きてたのかい」
「はい、お陰様でいい目覚めです」
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「ハッハッハ、昨日の私を恨まないといけませんねぇ」
女将さんは少し驚く顔をするがすぐに笑顔になる。
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「ここで食べたら、周りの子達に取られてしまいますからさすがに食べに行きますよ」
立ち上がりながら応える。
「それじゃ、食堂に来なよ。ちょっと人が多いから相席で頼むよ。ちゃんと自分から話しかけて相席しなよ」
「はい」
女将さんはいい笑顔を向けて、足早に戻っていく。
体に付いた寝藁などをはたき落としてから食堂の中に入る。食堂は大きく、人が100人入っても余裕だと思えるほどの広さだ。現に100人以上いるように見える。食堂の中は色んな人間の声で溢れており、食堂で働く者、泊まっていた客。様々な人で溢れている。
私が最後なのか人の列などは無かった。周りを見渡して椅子が1席だけ空いているところがあった。そこに向かい、席にお客人が3人いたので話しかける。
「すみません、この席座っても良いですか?」
「おう、自由だからな座れ座れ」
許可を出してくれたのは、鼻の先に立派な角を拵えた獣人族の男性だ。2m以上はある筋骨隆々な男性だ。
その横には私を一瞥して、すぐに本を読みはじめる小人族の女性。
もう1人はまだ眠いのか机に倒れ込むようにうつ伏せている、耳の尖った森人族の…男性?女性?がいた。
「ありがとうございます」
「なに、この4人席にあと一人足りなかったからちょうどいい!」
座ったと同時に店員さんが来て注文を聞かれる。
「それじゃこの宿オススメのをください」
その瞬間周りの席が静かになる。店員さんが笑顔で返事をした後に厨房に向かう。それと同時に音が戻る。
「あんた、もしかして。ここの宿に来るのは初めてか?」
獣人の男性が顔を引きつらせながら聞いてくる。
「はい、昨日着いたばかりで。右も左もわからない状態ですね」
ヘラヘラと答える。こうとしか言いようがないしね。
「この宿のオススメメニューはな。馬鹿みたいな量を提供してくるんだ。それも肉肉肉のオンパレード。もし肉1切れでも残したら、金貨1枚要求してくるだ。もし払えなかったら10日間無償労働させられるんだよ」
「はぁー。面白いですね」
男性は呆れたと言いたげに顔に手を当てる。
「おい」
私が笑ってる、と後ろから声をかけられる。振り向いてみると、目の前にいた獣人よりも大きく3mはありそうな人族の男性が立っていた。
「どうしましたか?」
「俺はここの料理を担当しているジャバだ。オススメメニューを頼んだやつがどういうのか一目見てやろうと思ってたが…ただの優男じゃねーか」
「楽しみに待ってますよ」
なんか威圧をかけてきているが、楽しみなのは本当なので事実を伝える。
「ほう、普段だったらやめろと言ったが…特別に用意してやる」
そう言いながら、額に青筋を立てて厨房に戻っていく。
「楽しみですね」
笑顔で獣人に言うと、呟くように「稀に見るアホか大物か」と言っている。
小人族も気になるのか目が本と私を行き来している。
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「食えるものなら食ってみろ」
人族はそう言って厨房に戻る。
獣人は心配してくれていたのか自分たちの食事が終えても私に対して「やめとけって、本当に」と声をかけてくれていた。今は山を見て絶句している。
「あのすみません」
私は大事なことを忘れていたので人族を呼び止める。
「なんだ?もしかして怖気付いて辞めるなんて「ご飯大盛りお願いします」
人族は額の青筋増やしながらもご飯大盛りを用意してくれた。肉山の3分の2程の大きさだ。
「ありがとうございます」
箸を持ちユッケから食べ始める。甘くとろける味だ。ご飯に合う。
焼肉は生姜が効いており食欲を増進させる。
ハンバーグは肉汁がタップリでソースと相まって美味い。
ステーキは雑に切られておらず、繊維に沿って整っている。油が甘い。
もちろん食べきった。正直に言うと、私には胃というものが存在しない。味覚は存在する。その結果、口に入れて味わった後はすぐに吸収していくので満腹どころか空腹も何もかも感じない。
「美味しかったです」
人族は唖然としていたが、唐突に頭を下げる。
「すまねぇ!!まさか食べ切れるとは。今までの発言は撤回する」
どうやらワケありだな。
話を聞いてみるとなかなかふざけた状態のようだ。前までは常連のみが知っていたオススメメニューだが、誰かがMTubeで公開した結果色んな人が挑戦しに来たみたいだ。最初の方は真剣に挑戦する人がいたのだが、どんどんとふざけて注文してはほとんど残すということが多発したみたいだ。その結果、無駄に消費される食べ物を見てイラついていたようだ。
私もそのうちの一人だと思われてたらしい。バカバカしいな。
金払ってるから別にいいだろって思ってる輩もいたそうだ。金を払ったら料理人の気持ちを踏みにじってもいいわけないのに。本当に思考能力を持っているのか、そいつらは。
「いや、そう言ったことがあるのであれば別に怒るわけないですよ。そう言った人外共が悪いことなので」
そう言うと、人族は分かってくれるかと言いたげに握手をする。
「ドラメリアさん!!」
私と人族が話していると、階段から降りてきたシュート君が私を見つける。
「おお、シュート君。昨日ぶりだね」
「もう来てたんですね」
慌ててこちらに向かってくる。
「いやぁ、善は急げって言うからね」
「ぜん?…そう言えば昨日ソーニャが叫んでたのってドラメリアさんについてだったんだな」
シュート君が呟く。
「叫んでたの?」
「はい、昨日の夜中突然叫び出しまして。ソーニャどころか、色んな人達が叫んでましたね」
「へえ、私の配信全て消したからかな?」
「あ、恐らくそれですね」
シュート君は苦笑いしながら言う。
「それじゃ今日からよろしくねシュート君」
「はい!お願いします」
周りの喧騒に紛れながらも、新しい友人に出逢えた。
~世界創世記 作セイラス伝卿 第1章第1節より(修正前)~
この世界は1の龍により創造された。龍は身を削り世界に力を宿す。そして永き眠りにつき、星が生まれた時覚醒する。そして星を見守り、生命が魔力を使い芽吹き始めた。魔力とは、この世に散らばった力を濃く手に入れた龍の1部であった。命溢れた時、龍は子供達を創り出す。8の龍は世界に翼を広げた。そして1の龍が集団の生命により消された。
この世を作ったのは龍である。後に生まれた神とほざく存在は、龍のお零れを得た餓鬼である。畏敬、崇拝、瞻仰されるべきはこの世にただ1つの御仁である。
~世界創世記 作セイラス伝卿 第1章第1節より(修正後)~
この世界は1の名も無き神により創造された。神は身を削り世界に力を宿す。そして永き眠りについた。そして命を賭して創られた星を命無くしても見守る。生命が、神の跡継ぎである創造神により芽吹き始めた。この時、創造神の力が周りに溢れる。そして魔力が生まれた。創造神は7柱、神を作り出しこの地の管理を任せた。
畏敬、崇拝、瞻仰されるべき神は今も見守っている。
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彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
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