兄と異世界と私

ひさまま

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第二章

ダル視点

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 唯が消えた。かわいい俺の彼女。


 昨日、兄の剛が足を無くした。薬草で一命は取り止めたが、ショックの唯は呆然としていた。

 治癒魔法は、教会が取り仕切り、平民はとても受けることができない。

 特に剛達は開拓民だ。

 剛は、ソニアを庇ってワイパーンに襲われた。ソニアもひどいショックを受けていた。

 唯に付き添っていたかったが、兄と2人にしてほしいと言われ家に帰った。

 唯は口はたまに悪いが俺にとても優しい。

 視線が、態度が全てで俺を好きと伝えてくれる。そんなの、惚れるって。

 甘い物が好きとしれば、兄のついでと言いながら、きれいに焼けた方を俺にくれる。剛も俺も気付いているって!アナも唯の甘い物のファンだ。

 何を作ってもおいしい。やさしくて、柔らかい唯。

 全力で唯を支えていきたい。

 そんな思いを抱いて、宿屋に行くと2人が消えていた。

 唯だけでなく剛も。あんな体でどこに行く?

 唯の匂いを辿りたいが、鼻に関しては、俺よりギムの方が有能だ。ギムに頼み、匂いを追ってもらう。ソニアも途中で合流する。


 野営地に着くと、唯や剛の匂いが消えていた。

 代わりに、薬草のような刺激臭が漂っている。

 獣人なら、避ける匂いだ。唯達の匂いが薄いため、薬草のような刺激臭を追うことにする。

 かわいい大切な唯。

 何かを隠しているのは知っている。

 ケーキなんて、結婚式に食べるくらいだ。それを日常の何気ない日にためらいもなく出してくれる。

 開拓民ではないのかも知れない。俺なんかでは手の届かない人なのかも知れない。でも、俺は君のそばで君と寄り添いたい。
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