陽あたりのいいパティオ 〜ももとさくらは人類最強です〜

あかぎ さわと

文字の大きさ
29 / 93
第3章

鬼王神社の夏祭り 5

しおりを挟む
 盗っ人三人衆、いやいやテキ屋三人衆が町役場の中に入ると一階のエントランスホールにテーブルを並べて、役場の担当者が待っていた。
「何屋さん? 」担当者が聞く。
「へい、カラメル焼きです」親分がいう。
「はい、じゃあここに必要事項を記入して、どなたかくじを引いてください」
「へぃ」
 親分が申し込み書類に記入して提出すると、担当者は会場レイアウト図を見せる。
「これが鳥居、ここが石畳みの参道ね100メートルくらいあって、鎮守の森の入り口」
「へい」
「右手の広場が盆踊り会場、左手の広場が出し物と憩いのスペース、両方の広場の外端を取り囲むように店を並べます。書いてあるように右手のA1からA30と左手のB1からB30までがそれぞれの区画です」
 レイアウト図の各区間は『済』の赤文字が書かれていて、残っているのは、A20とB1だけだった。
「残っているのはA20とB1ですね、いいですか? 」
「へぇいいです」
「じゃあこれ」
 担当者が穴のあいたボックスを出すと、親分は穴の中に手を入れて、三角くじを一つとって担当者に手渡す。
 担当者は三角くじの封を切ると中を開ける。
「B1ですね、左の広場の仮設トイレの前、食べ物屋さんにはちょっと不向きだけど、最後の二ヶ所だからしょうがないですね。でも鎮守の森の入り口のすぐ横だ、人通りはいいですよ。搬入時間や車の置き場など、注意事項は諸々書類に記入してありますので目を通しておいて下さい、不明な点は役場にご連絡下さい。じゃあ食中毒にくれぐれも気をつけて注意事項を守って営業して下さい」
 と、役場の階段を『鬼王きおう睦会むつみかい』の揃いの半被はっぴを着て足袋を履き、裸に白褌しろふんどし姿の屈強な男たちが十数名降りてきて、エントランスホールを横切った。
 全員が全員腹筋シックスパックで、身体中バッキバキに鍛えられている。
 頭には捻り鉢巻。
 異様な光景に唖然とするテキ屋三人衆。
「えっと、なんですかこの人たち…」
 二がビビリながら聞いた。
「鬼王神社の神輿部隊の一部ですよ、役場の有志。ああ今から、トレーニングの時間だ」
「トレーニング…」
「鬼王神社の神輿は重たいからね、体を鍛えるのも公用ですわ」
「役場の有志って、しょ、職員さんたちですかぁ? 」
「そう、うちこんなのばっか…」

 ──役場の職員たちは、ほぼ全員が影の氏子衆の一員でもある。

 一行はエントランスホールに隣接した多目的ルームに入っていくと、腕立て伏せや腹筋、スクワットなど体を鍛え始めた。
 ホールの奥にはトレーニングマシーンも各種置いてあり、警備員のいる夜間出入口と隣接しているので、登録さえすれば町民ならいつでも利用できるようになっている。

 ──そいや、そいや、そいや…体を鍛えながら発する掛け声は揃っている。

「親分、この町どうなってんすか? 」
 二が聞いた。

「し、知らん…」

そいや、そいや、そいや…そいや、そいや、そいや…

 掛け声はエントランスホールに響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...