陽あたりのいいパティオ 〜ももとさくらは人類最強です〜

あかぎ さわと

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第3章

鬼王神社の夏祭り 8

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 その後、ももとさくらが『廃墟のみち』を通り抜けて、一時間程すると、中学校の制服を着たどんとがやってきた。
 手にビニール袋を下げて、コンクリート階段下の、自分の指定席に戻ってきた。
 どんとは本が好きだ、更にお日様の下で読むのは、なんとも言えない開放感があって大好きなのだが、この場所に来るのはもう一つ理由があった。

 どんとはいつものようにパイプ椅子を広げて、ダンボールから大きな百科事典を取り出すと膝においた。ダンボールに入っている本のほとんどが、蘭のお店に来るお客さんからの貰い物か、古本屋で二足三文で売っているバーゲン品だ。百貨辞典も置き場に困ったお客さんから貰ってきたのである。
 百貨辞典をテーブル代わりに、ビニール袋から和菓子屋十年堂で売っている『あんこのはいったなめらか牛乳プリン』を取り出してのせると、嬉しそうに食べはじめた。
 一週間に一度のこのおやつの為に、新聞配達のアルバイトをしているといっても過言ではない。
 では、残りのアルバイト料はどうしているか──実はある計画の為に貯金している。
 どんとがこの場所にくるもう一つの理由が、その計画を練る為だ。
 だから、蘭のいないところで一人になりたかった。
 決して、蘭が嫌いになった訳ではなく、むしろ親子関係は、思春期の始まる中学一年生男子にしては良好だった。

 もふもふにっこり…プリンを食べ終わると、容器とスプーンを袋に戻し、リュックから一冊の大学ノートを出して百貨辞典の上で開く。
 そこには、今までの経緯と、計画の草案のメモが書かれ、表紙の裏には一枚の写真が貼ってある──小学生の頃、蘭のいない時を見計らって部屋に忍びこみ、偶然見つけた写真だ。

 ──どんとは表紙の裏を開き写真を見つめる。

 刻印されている日付けは、どんとが生まれる一年程前だ。
 写真はどこかの観光地で撮られたものらしい。
 自動シャッターで撮影したのか、誰かに撮ってもらったのかは定かではない。
 そこに写っている蘭は、今よりずっと若く、満面の笑顔で嬉しそうだ。
 隣には蘭と同じくらいの年齢の男性が笑顔で写っている──どんとはいつも思う、お父さんに違いない。
 一度も会ったことがないが、どことなく自分と似ている…

 ──お父さんに会ってみたい。

 蘭は父親の事はあまり話したがらなかった、だが、苗字は父親のものだし、死に別れたり離婚しているという訳でもないらしい。
 しばらく写真を見つめていたどんとは、大学ノートをリュックに戻した。
 そして、膝の上の百貨辞典をダンボールに入れると、パイプ椅子を折り畳み、自宅へと帰っていった。
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