32 / 93
第3章
鬼王神社の夏祭り 8
しおりを挟む
その後、ももとさくらが『廃墟のみち』を通り抜けて、一時間程すると、中学校の制服を着たどんとがやってきた。
手にビニール袋を下げて、コンクリート階段下の、自分の指定席に戻ってきた。
どんとは本が好きだ、更にお日様の下で読むのは、なんとも言えない開放感があって大好きなのだが、この場所に来るのはもう一つ理由があった。
どんとはいつものようにパイプ椅子を広げて、ダンボールから大きな百科事典を取り出すと膝においた。ダンボールに入っている本のほとんどが、蘭のお店に来るお客さんからの貰い物か、古本屋で二足三文で売っているバーゲン品だ。百貨辞典も置き場に困ったお客さんから貰ってきたのである。
百貨辞典をテーブル代わりに、ビニール袋から和菓子屋十年堂で売っている『あんこのはいったなめらか牛乳プリン』を取り出してのせると、嬉しそうに食べはじめた。
一週間に一度のこのおやつの為に、新聞配達のアルバイトをしているといっても過言ではない。
では、残りのアルバイト料はどうしているか──実はある計画の為に貯金している。
どんとがこの場所にくるもう一つの理由が、その計画を練る為だ。
だから、蘭のいないところで一人になりたかった。
決して、蘭が嫌いになった訳ではなく、むしろ親子関係は、思春期の始まる中学一年生男子にしては良好だった。
もふもふにっこり…プリンを食べ終わると、容器とスプーンを袋に戻し、リュックから一冊の大学ノートを出して百貨辞典の上で開く。
そこには、今までの経緯と、計画の草案のメモが書かれ、表紙の裏には一枚の写真が貼ってある──小学生の頃、蘭のいない時を見計らって部屋に忍びこみ、偶然見つけた写真だ。
──どんとは表紙の裏を開き写真を見つめる。
刻印されている日付けは、どんとが生まれる一年程前だ。
写真はどこかの観光地で撮られたものらしい。
自動シャッターで撮影したのか、誰かに撮ってもらったのかは定かではない。
そこに写っている蘭は、今よりずっと若く、満面の笑顔で嬉しそうだ。
隣には蘭と同じくらいの年齢の男性が笑顔で写っている──どんとはいつも思う、お父さんに違いない。
一度も会ったことがないが、どことなく自分と似ている…
──お父さんに会ってみたい。
蘭は父親の事はあまり話したがらなかった、だが、苗字は父親のものだし、死に別れたり離婚しているという訳でもないらしい。
しばらく写真を見つめていたどんとは、大学ノートをリュックに戻した。
そして、膝の上の百貨辞典をダンボールに入れると、パイプ椅子を折り畳み、自宅へと帰っていった。
手にビニール袋を下げて、コンクリート階段下の、自分の指定席に戻ってきた。
どんとは本が好きだ、更にお日様の下で読むのは、なんとも言えない開放感があって大好きなのだが、この場所に来るのはもう一つ理由があった。
どんとはいつものようにパイプ椅子を広げて、ダンボールから大きな百科事典を取り出すと膝においた。ダンボールに入っている本のほとんどが、蘭のお店に来るお客さんからの貰い物か、古本屋で二足三文で売っているバーゲン品だ。百貨辞典も置き場に困ったお客さんから貰ってきたのである。
百貨辞典をテーブル代わりに、ビニール袋から和菓子屋十年堂で売っている『あんこのはいったなめらか牛乳プリン』を取り出してのせると、嬉しそうに食べはじめた。
一週間に一度のこのおやつの為に、新聞配達のアルバイトをしているといっても過言ではない。
では、残りのアルバイト料はどうしているか──実はある計画の為に貯金している。
どんとがこの場所にくるもう一つの理由が、その計画を練る為だ。
だから、蘭のいないところで一人になりたかった。
決して、蘭が嫌いになった訳ではなく、むしろ親子関係は、思春期の始まる中学一年生男子にしては良好だった。
もふもふにっこり…プリンを食べ終わると、容器とスプーンを袋に戻し、リュックから一冊の大学ノートを出して百貨辞典の上で開く。
そこには、今までの経緯と、計画の草案のメモが書かれ、表紙の裏には一枚の写真が貼ってある──小学生の頃、蘭のいない時を見計らって部屋に忍びこみ、偶然見つけた写真だ。
──どんとは表紙の裏を開き写真を見つめる。
刻印されている日付けは、どんとが生まれる一年程前だ。
写真はどこかの観光地で撮られたものらしい。
自動シャッターで撮影したのか、誰かに撮ってもらったのかは定かではない。
そこに写っている蘭は、今よりずっと若く、満面の笑顔で嬉しそうだ。
隣には蘭と同じくらいの年齢の男性が笑顔で写っている──どんとはいつも思う、お父さんに違いない。
一度も会ったことがないが、どことなく自分と似ている…
──お父さんに会ってみたい。
蘭は父親の事はあまり話したがらなかった、だが、苗字は父親のものだし、死に別れたり離婚しているという訳でもないらしい。
しばらく写真を見つめていたどんとは、大学ノートをリュックに戻した。
そして、膝の上の百貨辞典をダンボールに入れると、パイプ椅子を折り畳み、自宅へと帰っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる