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第3章
鬼王神社の夏祭り 17(祭り当日)
しおりを挟む御神輿が鳥居をくぐったのは午後二時頃だった。
この時ばかりは、お祭り会場に鳴り響く太鼓も盆踊りの曲も静まる。
櫓の上のジョニーとボブは手を休め御神輿を見つめた。
「さあ、御神輿が入ってきましたぁ」運営のスピーカーから響く。
──うわああああああ!
どよめく、会場を埋め尽くした観衆。
「ハラショー」
「ブラボー」
「スージー」
「ももー、さくらー、頑張れや」
「ウイシャ、ウイシャ、ウイシャ」
「オップラー」
「セイヤ、せいや」
やはり多国籍な掛け声がかけられると、グラグラ揺れる御神輿が石畳の参道を進む。広場に満員の観衆の全ての視線が御神輿に注がれた。
そいや! そいや! そいや!…
ピィーひゃらら、とん、とん、とととん、ピィーぴゃらぴゃらら…
「みこし、止まれ! 」
『せいや、せい! 』
ボブの掛け声で御神輿は鎮守の森の石階段の前で止まった。二段目の隅にはボスが座り、御神輿を見つめていた。
「よく頑張りました」
「うん! 楽しかった」
「あはは、そうか…」
後ろの乗り台からさくらを肩車して下ろすと、そのまま御神輿の正面に回り込む茂。
そこには、ひょっとこのお面をとったごんちゃんと先回りしたすみれとかえでが見守っていた。
──パチン!
まだ乗り台に乗っているももは、扇子をたたむと右手に握り締めた。
担ぎ手は御神輿を担いだまま、息を整える。
テキ屋三人衆の屋台はこの場所のすぐそばだった。左の一番外れという場所が幸いして、親分には全てがありありと見えていた。
ペチン! ペチン!
必死にカルメラ焼きを作っている一と二のカンカン帽を叩いた。
「いってーなんすか親分」
「ほんと、なんだってんだ」
「見ろあいつら、どっかで見た事ないか? 」
親分が言った。
「あいつらって? 」
「あの神輿に乗ってる小学生と、肩車されてる小さいやつだよ」
「どれどれ…」
『あーあいつら』一と二の声が揃った。
「そうだ、あの時の、変な手品を使うガキどもだ」
親分はそういうと隣の出店の親父に聞いた。
「お忙しいとこすんませんが、あのお嬢たちはなにもんで? 」
「かーお前らそれも知らんのか」
「へぇ」
「ごんちゃんの孫娘、小学四年生のももと幼稚園児のさくらだよ」
「え、あの大金持ちの神馬権三の孫ですか? 」
「あったりめぇだ、この町自慢の小町姉妹だ、覚えとけ! 」
「すんません、ありがとうごぜぇます」
と、親分は自分の出店に戻ると、一とニと顔を付き合わせる。
「聞いたか」
「へぇ」
「しっかりと」
「こりゃぁ面白くなってきやがった」
『うへへへ』不気味な笑顔を浮かべる三人。
テキ屋三人衆は盗っ人三人衆の顔に戻った。
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