陽あたりのいいパティオ 〜ももとさくらは人類最強です〜

あかぎ さわと

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第5章

嵐の後の学校公開 5

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 ──水曜日

 夕方になって日が陰ってきた頃を見計らい、盗っ人三人衆は動き出した。今日はビル街の方へ歩いて行った。裏道の存在などこの三人は知る由もなかったので、大きな通り沿いにしか歩いていない。
 伸さんのホストクラブを右手に通り越して、仁さんのキャバクラも通り越して右に曲がると町役場の建物が見えてきた。
「ここ受付した町役場だ」
「そういやどうしてお祭りの事分かったんでやんすか? 」二が聞いた。
「かー俺らの職業はなんだ? 」
「悪さすることです」
「アホ、それは裏稼業、表はなんだ」
「テキ屋っす」
「職業意識をしっかりと持て馬鹿、最初に来た時電車に乗っただろ、駅のホームにポスターが貼ってあったろうが! 」
「あーそうか、ありやしたねぇ、さすが親分目利きだ」
「アホ目利きじゃねぇだろ、目ざといだろ」一が言った。
「さすが一あくがくで」
「博学だ! 」
「アホかお前ら、行くぞ」
 駅前の有料パーキングには、乗ってきた軽のワゴンを停めっぱなしだ。
 盗っ人三人衆は町役場を通り越して駅前の有料パーキングに行った。
 調理道具以外はここに置いてある。
 車に着くと着替えを取り出す。
「親分、今度の学校公開はどんな格好で行きますか? 」一が言った。
「そうだな目立たない服装がいいだろうな」
「じゃあこれっすね」二は服を持った。
「そうしとくか、汚すなよ」
『へえっ、土曜日まで着ません』
「俺もそうする」
「汚れ物は持ったか? 」
『へぇ』
「じゃあいくぞ」

 三人はビル街にあるコインランドリーに向かった。
「しかし、子どもの姿を見ねえな」
 歩きながら親分が言う。
「へぇ、人っ子一人見当たりません」
「お祭りじゃあれだけ子どもがいたのに変だ」
「どうなってんでしょう、秘密の抜け道でもあるんでやんすかね」中々鋭い一だ。
「そうっか、夕方だしビル街だからです」胸を張って大きな声で二が言った。
「なるほどな、たまには鋭いこと言うじゃねぇか二」一が言った。
「へへたまにはね」
「まあいい、小学校さえ見つけりゃいいんだ」
 盗っ人三人衆はコインランドリーで、洗濯物を洗濯機にぶち込むと、洗濯を始めた。そして、丸いパイプ椅子に座り込み出来上がりを待っている。

 ──ぐるぐるぐるぐる…洗濯機は乾燥まで済ませてくれるコースだ。
 残り時間120分と表示される。
 そこに、学生らしき若者が一人入ってきて洗濯をはじめた。
 そして三人の横のパイプ椅子に座ると、漫画本を読み始めた。
 若者を見て親分は閃いた。
「ちょっと情報収集だ」
 親分は隣の若者に声をかけた。
「すみません、にいさんはこの町にお住まいで…」
「はあ、そうですが…」
 漫画本から目を上げて親分を見る。
「にいさんは学生さんで…」
 親分はニコニコ笑っている。
「大学生ですが…何か? 」
「そりゃぁ将来有望ですな、何を勉強してるんですか? 」
「…」
 うざったそうな若者、関わりたくなさそうだ。
 ──親分はしめたと思った。
「いやね、孫が行ってる小学校の場所がわからなくて、困ってるんです、今度学校公開があってね、突然行って脅かそうと思ってるんですが、どこにあるか知りませんかね」
「小学校ですか…鬼王神社のそばにありますが…」
 若者はつっけんどんに答えた。
「鬼王神社ですか…はて」
「有りますよ、アーケード街の方の広場の横に! 」
 如何にも面倒くさい若者。
「いやいやこれは助かりました、明日行ってみることにします、では失敬」
 座っていた場所に戻る親分。
 若者は再び漫画を読み出す。
「親分さすがっすね」小声で一が言った。
「ああいうのは面倒くさがるんだよ、だから早く一人になろうと簡単に口を割る、伊達に長い事人見て悪さしてないぜ」
「親分さすが目ざとい」二が言った。
「でも鬼王神社のそばに小学校なんてあったか? 」
「最初に行った時は鳥居に真っ直ぐ続く表参道を通ったし、お祭りの時は車だったし、ぜーんぜん覚えてません」一が言った。
「そうだよな」
「あーっあの時、表参道で食べた鬼もち最高に美味かった、口でとろけましたね! 」二が大声で言った。
「たーしかに! 」一が同調した。
『あー腹減ったぁ』二人が声を揃えた。
「確かに腹減ったな、洗濯はあと何分で終わる」
 親分が言った。
 二が洗濯機を見に行く。
「八〇分程で…」
「よっしゃ、向かいの中華屋で飯食うぞ」
 と、コインランドリーを出て、向かいの中華料理屋に入った。とりあえずで生ビールを頼むと、調子にのって止まらなくなる盗っ人三人衆。
 エビチリに酢豚に餃子に焼売…。
 この町は名店と呼ばれる食べ物屋さんを町づくりの一環として招致してきた経緯から、どのお店に入っても平均点以上の美味しさなのだ。
 ビールもガンガンお代わりすると、続けて紹興酒をボトルで飲み干し、締めのラーメンを食べる頃はベロンベロンだった。

 ──今日もこれで終わりらしい。
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