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第3章 秋
◆農家、ダンジョンを管理する――間引き開始
【虫が苦手な方は本文を読む前にご一読ください】
このエピソードには、コオロギの群れが登場する描写があります。
表現はできる限り配慮しておりますが、
虫が苦手な方は、無理をせず「☆」の位置まで読み飛ばしてください。
くれぐれも、ご自身のペースでお楽しみください。
——————————————————
草むらの奥から、低く、ざわざわとした音が広がってきた。
――カサカサ、ザリザリ。
湿った草と土を踏み荒らす、数え切れない足音と擦り合わせるような羽音。
「……来るぞ」
シヴァさんが大剣を構えた瞬間、草原が割れた。
飛び出してきたのは――
巨大なコオロギの群れだった。
黒褐色の外殻。
太く発達した後ろ脚。
一匹一匹が犬ほどのサイズで、それが波のように押し寄せてくる。
「うぎゃっっっ……」
思わず声が漏れる。
正直、見た目はかなりキツい。
けれど、私は一歩も退かなかった。
深呼吸し、鑑定を発動する。
≪鑑定≫
名称:重鳴コオロギ
状態:繁殖過多/凶暴化
分類:昆虫
備考:間引き推奨
「……やっぱり」
繁殖過多。
しかも凶暴化。
完全に、管理されていない土地の“末期症状”だ。
「ノエル、どうする?」
シヴァさんが剣を構えたまま、こちらを見る。
私は、ポーチに手を伸ばした。
「……間引きます」
取り出したのは、透明な瓶。
中で淡く揺れる、琥珀色の液体。
ノエル特製・害虫駆除ポーション原液。
素材は、強い刺激性を持つ薬草と、特定の昆虫だけに作用する天然抽出液――今回は“バッタ”。
コオロギ、イナゴ、キリギリス…分類学上の“バッタ目”全体に作用する便利な駆除ポーション。
でも、土にも植物にも影響はない。
――特定の虫にだけちゃんと効く、ファーマー兼薬師レベル最大の私が、試行錯誤を重ねて作った畑専用の害虫駆除ポーション!
(普段は希釈して使うけれど…)
私は、瓶を次々放り投げた。
パリン、パリン、パリーンと小さな音。
霧状に拡散した液体が、コオロギの群れを包み込む。
次の瞬間。
――ギィィィッ!!
甲高い鳴き声が重なり、ポンッ、ポン、ポポンと弾けるようにドロップ品へと変わる。
☆ ☆ ☆
「……よし!」
間引き、成功!
私は、胸の奥でそっと息を吐いた。
地面に残ったのは――澄んだ黄金色の油が入った一升瓶らしきもの。
「……え?」
私は思わず駆け寄った。
≪鑑定結果≫
名称:コオ油
種類:調理用油
用途:食用
安全性:良
品質:並
詳細:
麻巣窟固有のドロップ品。
香ばしく焙煎したゴマの香りがする高級油。
加熱しても風味が飛びにくく、炒め物、揚げ物、あえ物など幅広く使える。
少量でも料理にコクと深みを与え、料理の印象を劇的に変える。
酸化しにくく保存性が高い。
ビタミンEなどの抗酸化成分を含み、アンチエイジング効果の他、血管をしなやかに保つ働きがある。
その鑑定結果に思わず瓶を持ち上げる手が震えた。
「こ…これ………ごま油だ!!」
なんということでしょう。こんなところで“ごま油”が手に入るなんて!!!正確にはゴマ油じゃなくて、ドロップ品の“コオ油”だけど、もはやごま油と言っても過言ではない。しかもコオロギから!!
昆虫食なんて無理ッ!って思ってたけど、これは話が違う。
試しにコルク栓をキュッと抜く。
「はぁ~」
この焙煎した強い香り…。特徴的な、それでいて食欲をそそる美味しい匂い。
ぐぅー…。
シヴァさんが恥ずかしそうにお腹を押さえている。
「ほら、俺……嗅覚強いから…」
無理もない。私だってお腹が鳴りそうだ。
「…そう言えば私達、朝から何も食べてませんよね?」
私は、コオ油の瓶を胸に抱えたまま顔を上げた。
「ここを少し整えたら、一旦お昼にしません?」
そう提案すると、シヴァさんはにっと笑って親指を立て、モードさんも頷いた。
「「賛成(や)!」」
さっきからずっとお腹の音を気にしていたのだろう、シヴァさんは少し照れたようにお腹を押さえている。
一方、気配のないジェイさんは――というと。
私の背後で、ぷるぷると震えていた。
(…本当に虫がダメなんだなぁ)
背中越しに伝わってくる緊張感に、思わず小さな闘志が灯る。
(こんなジェイさん、なかなか見られないよね。ここでは私が守らなきゃ!)
そんなことを考えながら、私は他のドロップ品にも目を向けた。
コオロギの腱――しなやかで強靭。
「弓や楽器の弦とかに使うのかな?」
次に拾い上げたのは、音袋。
「衝撃を与えると猛烈な爆発音を発する器官…」
(これは何に使うんだろう?)
小首を傾げていると―
「それは投擲用の音玉やな」
背後から、モードさんの落ち着いた声がした。
「小型の魔物なら、まとめてスタンさせられる」
「なるほど…」
(でも……投擲用かぁ。私ではとても使いこなせそうにない)
私は音袋をガチャ丸に差し出した。
「ガチャ丸はこれ使いたい?」
「ギャギャッ!!」
元気のいい返事。
嬉しそうに私とお揃いの収納ポーチへ音袋を入れた。
(そう。お揃い、なの)
箱庭ショップで買った課金ポーチ。
ちょうど“ブラックフライデー”の時期で、「お揃いにしたいな」なんて軽い気持ちで購入したけれど――
(過去の私、グッジョブ!)
今となっては、心の底から感謝している。
一通り、ドロップ品を収納し、改めて、周囲を見渡してみる。
草、虫、薬草、虫、虫、虫。
素材として見れば、まさに宝の山。
――でも、だからこそ。
(このまま放置しちゃ、ダメだ)
「……次、行きます」
私はそう宣言し、別の瓶を取り出した。
透明なガラス瓶の中で揺れる淡い緑色の液体。
「姫ちゃま、この桶に水をお願い」
「(ブンブン♪)」
姫ちゃまが水魔法で、木桶いっぱいに澄んだ水を満たす。
私はそこへ、ポーションを静かに注いだ。
——————————————————
≪週2回、土・日更新+金or月不定期≫
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
虫ダンジョン編が続き、苦手な方には心苦しい展開かと思います。
それでも読んでくださることに、まず感謝を。
私自身は田舎育ちで、虫はむしろ身近な存在でした。とはいえ、必要以上に生理的な描写をするつもりはありません。
世界観としての「虫」と向き合う章として、読み進めていただければ幸いです。
明日のエピソードは
「◆農家、ダンジョンで昼休憩――虫の巣が資源畑になるまで」
です。
もし少しでも
「この時間、好きだな」
「続きも覗いてみたいな」
と感じてもらえたら、そっと “♡” や “応援” をもらえると励みになります。
この物語が、今日のあなたの癒しのひとつになりますように。
では、また。
このエピソードには、コオロギの群れが登場する描写があります。
表現はできる限り配慮しておりますが、
虫が苦手な方は、無理をせず「☆」の位置まで読み飛ばしてください。
くれぐれも、ご自身のペースでお楽しみください。
——————————————————
草むらの奥から、低く、ざわざわとした音が広がってきた。
――カサカサ、ザリザリ。
湿った草と土を踏み荒らす、数え切れない足音と擦り合わせるような羽音。
「……来るぞ」
シヴァさんが大剣を構えた瞬間、草原が割れた。
飛び出してきたのは――
巨大なコオロギの群れだった。
黒褐色の外殻。
太く発達した後ろ脚。
一匹一匹が犬ほどのサイズで、それが波のように押し寄せてくる。
「うぎゃっっっ……」
思わず声が漏れる。
正直、見た目はかなりキツい。
けれど、私は一歩も退かなかった。
深呼吸し、鑑定を発動する。
≪鑑定≫
名称:重鳴コオロギ
状態:繁殖過多/凶暴化
分類:昆虫
備考:間引き推奨
「……やっぱり」
繁殖過多。
しかも凶暴化。
完全に、管理されていない土地の“末期症状”だ。
「ノエル、どうする?」
シヴァさんが剣を構えたまま、こちらを見る。
私は、ポーチに手を伸ばした。
「……間引きます」
取り出したのは、透明な瓶。
中で淡く揺れる、琥珀色の液体。
ノエル特製・害虫駆除ポーション原液。
素材は、強い刺激性を持つ薬草と、特定の昆虫だけに作用する天然抽出液――今回は“バッタ”。
コオロギ、イナゴ、キリギリス…分類学上の“バッタ目”全体に作用する便利な駆除ポーション。
でも、土にも植物にも影響はない。
――特定の虫にだけちゃんと効く、ファーマー兼薬師レベル最大の私が、試行錯誤を重ねて作った畑専用の害虫駆除ポーション!
(普段は希釈して使うけれど…)
私は、瓶を次々放り投げた。
パリン、パリン、パリーンと小さな音。
霧状に拡散した液体が、コオロギの群れを包み込む。
次の瞬間。
――ギィィィッ!!
甲高い鳴き声が重なり、ポンッ、ポン、ポポンと弾けるようにドロップ品へと変わる。
☆ ☆ ☆
「……よし!」
間引き、成功!
私は、胸の奥でそっと息を吐いた。
地面に残ったのは――澄んだ黄金色の油が入った一升瓶らしきもの。
「……え?」
私は思わず駆け寄った。
≪鑑定結果≫
名称:コオ油
種類:調理用油
用途:食用
安全性:良
品質:並
詳細:
麻巣窟固有のドロップ品。
香ばしく焙煎したゴマの香りがする高級油。
加熱しても風味が飛びにくく、炒め物、揚げ物、あえ物など幅広く使える。
少量でも料理にコクと深みを与え、料理の印象を劇的に変える。
酸化しにくく保存性が高い。
ビタミンEなどの抗酸化成分を含み、アンチエイジング効果の他、血管をしなやかに保つ働きがある。
その鑑定結果に思わず瓶を持ち上げる手が震えた。
「こ…これ………ごま油だ!!」
なんということでしょう。こんなところで“ごま油”が手に入るなんて!!!正確にはゴマ油じゃなくて、ドロップ品の“コオ油”だけど、もはやごま油と言っても過言ではない。しかもコオロギから!!
昆虫食なんて無理ッ!って思ってたけど、これは話が違う。
試しにコルク栓をキュッと抜く。
「はぁ~」
この焙煎した強い香り…。特徴的な、それでいて食欲をそそる美味しい匂い。
ぐぅー…。
シヴァさんが恥ずかしそうにお腹を押さえている。
「ほら、俺……嗅覚強いから…」
無理もない。私だってお腹が鳴りそうだ。
「…そう言えば私達、朝から何も食べてませんよね?」
私は、コオ油の瓶を胸に抱えたまま顔を上げた。
「ここを少し整えたら、一旦お昼にしません?」
そう提案すると、シヴァさんはにっと笑って親指を立て、モードさんも頷いた。
「「賛成(や)!」」
さっきからずっとお腹の音を気にしていたのだろう、シヴァさんは少し照れたようにお腹を押さえている。
一方、気配のないジェイさんは――というと。
私の背後で、ぷるぷると震えていた。
(…本当に虫がダメなんだなぁ)
背中越しに伝わってくる緊張感に、思わず小さな闘志が灯る。
(こんなジェイさん、なかなか見られないよね。ここでは私が守らなきゃ!)
そんなことを考えながら、私は他のドロップ品にも目を向けた。
コオロギの腱――しなやかで強靭。
「弓や楽器の弦とかに使うのかな?」
次に拾い上げたのは、音袋。
「衝撃を与えると猛烈な爆発音を発する器官…」
(これは何に使うんだろう?)
小首を傾げていると―
「それは投擲用の音玉やな」
背後から、モードさんの落ち着いた声がした。
「小型の魔物なら、まとめてスタンさせられる」
「なるほど…」
(でも……投擲用かぁ。私ではとても使いこなせそうにない)
私は音袋をガチャ丸に差し出した。
「ガチャ丸はこれ使いたい?」
「ギャギャッ!!」
元気のいい返事。
嬉しそうに私とお揃いの収納ポーチへ音袋を入れた。
(そう。お揃い、なの)
箱庭ショップで買った課金ポーチ。
ちょうど“ブラックフライデー”の時期で、「お揃いにしたいな」なんて軽い気持ちで購入したけれど――
(過去の私、グッジョブ!)
今となっては、心の底から感謝している。
一通り、ドロップ品を収納し、改めて、周囲を見渡してみる。
草、虫、薬草、虫、虫、虫。
素材として見れば、まさに宝の山。
――でも、だからこそ。
(このまま放置しちゃ、ダメだ)
「……次、行きます」
私はそう宣言し、別の瓶を取り出した。
透明なガラス瓶の中で揺れる淡い緑色の液体。
「姫ちゃま、この桶に水をお願い」
「(ブンブン♪)」
姫ちゃまが水魔法で、木桶いっぱいに澄んだ水を満たす。
私はそこへ、ポーションを静かに注いだ。
——————————————————
≪週2回、土・日更新+金or月不定期≫
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
虫ダンジョン編が続き、苦手な方には心苦しい展開かと思います。
それでも読んでくださることに、まず感謝を。
私自身は田舎育ちで、虫はむしろ身近な存在でした。とはいえ、必要以上に生理的な描写をするつもりはありません。
世界観としての「虫」と向き合う章として、読み進めていただければ幸いです。
明日のエピソードは
「◆農家、ダンジョンで昼休憩――虫の巣が資源畑になるまで」
です。
もし少しでも
「この時間、好きだな」
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