丘の上の雑貨屋と魔王モール

toseki.yunomi

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ep.22 思いつきでやったほうがうまくいくときもある

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数分後、俺の焼き上げスキルで、即席の土器の屋台を作っていた。材料の粘土はペッカが召喚してくれた。

「おやつに、レンガパンはいかがっすかー? スロウタウンのレンガパンっすよー! 今なら60ゲル引きの220ゲル! 素敵なゴーレムが焼いたレンガパンですよー!」

身長の高いスコリィが客寄せをしてくれる。推し活で鍛えたらしい良い声で販売してくれる。私情がどこか入っているような気がしたが、聞こえないことにする。

ペッカに木材を召喚させ、火を付けさせ、火の番をしてもらい、俺の作った即席の立体かまどで、イゴラの練った小麦でパンを焼く。
「お、いい匂いだね。1つおくれ」
「こっちは2つ」
「俺には3つ!」

広場での実演販売の許可はすでに取っていた。
「ありがとうございます! 水もどうぞー」

俺はひと工夫をした。飲料用の水場の見える位置で販売を始めたのだ。
パンを食べるとどうしても水分が欲しくなる。本当はミルクが最高に合うんだけど。

「コップはご自由に。使うのは無料です! 使ったらこちらへお返しくださいー」

噴水の近くには、人が飲める用の小さな水場があり、俺はその近くに自分の作った焼き物のコップを並べていた。
こういう販売戦略はよくみる。器が余っていたからとっさに考えたけど、まあまあうまくいっている。

「旅費はこの感じでいけばどうにかなりそうっすね」
「油断大敵だけどな」

今までの売上の資金は、村を出る前になくなった。レンガパンの支払いとマリーさんへの支払いですっかりなくなってしまったのだ。何ヶ月も返ってこれないかもしれないから、近いうちに支払い義務のあるものだけ支払った。
まあ10億の借金と比べれば些細なものだ。

俺達は夕食時まで売り続け、初日は60個すべて売れて、220*60=13200にもなった。

一番頑張ったのはイゴラくんだが、捏ねるのをスコリィが手伝ったりしてなかなか楽しそうだった。
いや、スコリィは捏ねるふりをしながら小さなゴーレムを鼻の下を伸ばしながら見ていた。これも気が付かないふりをした。大事なのは調和だ。

俺はこのまま三日くらいここでパンを売ろうと考えた。それだと、徒歩ではなく馬車などの移動手段にもなり得るだろう。

次の日も、俺たちは意気揚々と売り始めた。
――だが、パンが売れることはほとんどなかった。
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