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第二章 勇者ああああとバレンタインの魔女
2-9 一労永逸はレバーの味
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「はー、いい気分だねー。ほらほら! 草原の景色が素晴らしいったら何の!」
旅立ちの直前、ヒリアさんは大きく体を伸ばして自らの行く先に指をさす。
「これから始まるのね――――私たちの旅が」
人差し指の先にあるのは希望の未来か、絶望の最後か。彼女は強い決意を胸に真っすぐと見据える。
すると後ろからお兄ちゃんがやってきて、聖剣を天へと掲げる。
剣は浮力を与えられたかのようにゆっくりと浮かび上がり、剣先はその草原とは反対方向を向く。
――――すると突如、剣から一直線に光が放たれた。
光は次第に放物線を描き、この角度からは見えない場所へと落ちる。
……そこが次の目的地。
「……外れましたね、ヒリアさん」
「…………いやいや違うって! 別に一言も目的地はあっちだとか言ってないし!」
恥ずかしそうにしている彼女をちょっとだけ面白がっていると、後ろから知らない男の人の声がかかる。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
若い男性。様子から察するに、この宿の従業員のようだ。
でも昨日は、あのへんな女将さんの姿しか見えなかったような……
「あれ、昨日の女将さんはどうしたの?」
「それでしたら昨日解雇させました」
え、まあそれも当然だとは思うけど……この企業にだけは就職しないでおこう。
そんな会話に耳も傾けず、そのようなもの必要ないと背中で語るようにお兄ちゃんは歩き出す。
「ヒリアさん! 行きますよ!」
「うっし、これからいっぱい歩くぞ~!」
ヒリアさんはそう言うと、そそくさとお兄ちゃんの横に立ち腕に絡みつく。
「あ、相変わらずですね……惚れ薬はとっくに切れてると思うんですけど……」
「ここまで来たら薬とかどうでもいいのよ! ……ってこの方向ってもしかして」
彼女は開き直ったかと思ったら急に黙り込む。何か考え事を始めたようだが、もしかしてこの先に何があるのか知っているのだろうか。
「何か心当たりでも?」
「いや、まあね。知り合いの家が近いかなーって」
知り合い。どんな人だろう。でもヒリアさんのことだから、やっぱり彼氏いない仲間なんだろうか。なんだかそういう人としか友達になったことないらしいし。
街からずいぶん離れ、もうウィッチ街がおもちゃできた箱のようにも見えるくらい歩いていた時、私はあることを思い出した。
「そうそう、ヒリアさんってピーマン食べれますか?」
「ピーマン? まあ食べれないこともないけど」
そうなんだ! なら……
おもむろに袋からあるものを取り出し、ヒリアさんへと差し出す。
「これ食べるとレベルアップできるんです!」
「マヂ? 頂戴頂戴」
一瞬、お兄ちゃんが物欲しそうにこちらを見たような気がしたが、あんなにいっぱい食べたから大丈夫だろう。
ヒリアさんは木の実を手に取り、ワイルドに一齧り。
「ブフェッ!?」
思いっきり噴出した。
「ダッ、騙したね、いーちゃん! これブラウンオークの肝臓の味と一緒じゃない!?」
「え!? そんなはずは……」
……も、もしかしてピーマンとブラウンオークの肝臓は同じ味? でもヒリアさんピーマンは食べられないこともないって言ってたし…………
「なんだか勘違いしてたみたいですいません……」
謎が謎を呼ぶ。この生命の木の実についてはまだまだ考察の余地がある様だ。
「……まっ、いいってことよ。君のお兄さんに免じて許してあげましょう!」
そう言って今度は私に飛びついてきて抱き着いてくる。
ああ、今日の良い日差しもあってか何とも暑苦しい。
「やめてくださいー」
「変なもの食わせたいーちゃんの罰よ、おらおらおらおら」
ぽこすかと突いてくるヒリアさん。まるで新しい友達ができたようで、そのうっとうしさも半減される。
きっとこの旅で友達のような存在は大切になってくるだろう。旅は孤独だ。でもそれを補ってくれる人が入れば変わってくる。
「また旅の仲間が増えるといいな……」
そう小さく呟きながら、賑やかに歩を進めるのであった。
旅立ちの直前、ヒリアさんは大きく体を伸ばして自らの行く先に指をさす。
「これから始まるのね――――私たちの旅が」
人差し指の先にあるのは希望の未来か、絶望の最後か。彼女は強い決意を胸に真っすぐと見据える。
すると後ろからお兄ちゃんがやってきて、聖剣を天へと掲げる。
剣は浮力を与えられたかのようにゆっくりと浮かび上がり、剣先はその草原とは反対方向を向く。
――――すると突如、剣から一直線に光が放たれた。
光は次第に放物線を描き、この角度からは見えない場所へと落ちる。
……そこが次の目的地。
「……外れましたね、ヒリアさん」
「…………いやいや違うって! 別に一言も目的地はあっちだとか言ってないし!」
恥ずかしそうにしている彼女をちょっとだけ面白がっていると、後ろから知らない男の人の声がかかる。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
若い男性。様子から察するに、この宿の従業員のようだ。
でも昨日は、あのへんな女将さんの姿しか見えなかったような……
「あれ、昨日の女将さんはどうしたの?」
「それでしたら昨日解雇させました」
え、まあそれも当然だとは思うけど……この企業にだけは就職しないでおこう。
そんな会話に耳も傾けず、そのようなもの必要ないと背中で語るようにお兄ちゃんは歩き出す。
「ヒリアさん! 行きますよ!」
「うっし、これからいっぱい歩くぞ~!」
ヒリアさんはそう言うと、そそくさとお兄ちゃんの横に立ち腕に絡みつく。
「あ、相変わらずですね……惚れ薬はとっくに切れてると思うんですけど……」
「ここまで来たら薬とかどうでもいいのよ! ……ってこの方向ってもしかして」
彼女は開き直ったかと思ったら急に黙り込む。何か考え事を始めたようだが、もしかしてこの先に何があるのか知っているのだろうか。
「何か心当たりでも?」
「いや、まあね。知り合いの家が近いかなーって」
知り合い。どんな人だろう。でもヒリアさんのことだから、やっぱり彼氏いない仲間なんだろうか。なんだかそういう人としか友達になったことないらしいし。
街からずいぶん離れ、もうウィッチ街がおもちゃできた箱のようにも見えるくらい歩いていた時、私はあることを思い出した。
「そうそう、ヒリアさんってピーマン食べれますか?」
「ピーマン? まあ食べれないこともないけど」
そうなんだ! なら……
おもむろに袋からあるものを取り出し、ヒリアさんへと差し出す。
「これ食べるとレベルアップできるんです!」
「マヂ? 頂戴頂戴」
一瞬、お兄ちゃんが物欲しそうにこちらを見たような気がしたが、あんなにいっぱい食べたから大丈夫だろう。
ヒリアさんは木の実を手に取り、ワイルドに一齧り。
「ブフェッ!?」
思いっきり噴出した。
「ダッ、騙したね、いーちゃん! これブラウンオークの肝臓の味と一緒じゃない!?」
「え!? そんなはずは……」
……も、もしかしてピーマンとブラウンオークの肝臓は同じ味? でもヒリアさんピーマンは食べられないこともないって言ってたし…………
「なんだか勘違いしてたみたいですいません……」
謎が謎を呼ぶ。この生命の木の実についてはまだまだ考察の余地がある様だ。
「……まっ、いいってことよ。君のお兄さんに免じて許してあげましょう!」
そう言って今度は私に飛びついてきて抱き着いてくる。
ああ、今日の良い日差しもあってか何とも暑苦しい。
「やめてくださいー」
「変なもの食わせたいーちゃんの罰よ、おらおらおらおら」
ぽこすかと突いてくるヒリアさん。まるで新しい友達ができたようで、そのうっとうしさも半減される。
きっとこの旅で友達のような存在は大切になってくるだろう。旅は孤独だ。でもそれを補ってくれる人が入れば変わってくる。
「また旅の仲間が増えるといいな……」
そう小さく呟きながら、賑やかに歩を進めるのであった。
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