6 / 23
6
しおりを挟む6
ルーの部屋を出た俺と、公爵とマリウスは別室で、話し合いの為ソファに座る。
「それで、殿下。申し訳ありませんが、ルーカスはしばらくの間お休みさせて頂きたいのですが。」
「あぁ、仕事は問題ない。それと、ルーは王宮で預かる。」
「・・・えっと、何故かと聞いても?」
「ん、検査を受けさせる。」
「えぇ、それはこちらでも出来ますが?」
「私が、ルーの側に居たいんだ。すまないこれは、譲れない。」
「はぁ。」
少し呆れ顔の公爵に、マリウスが、
「まぁ、その方がルーも安心するんじゃないかな?検査もするんだろ?」
「あぁ、王宮の医師団に、カンダス帝国から来た医師がいるから、それに診てもらおうと思う。」
「帝国の医学は、こちらより進んでるからな。」
「そうでしたか。ありがとうございます殿下。ルーをよろしくお願いします。」
「必ずルーは治る。大丈夫だ。」
俺は、自分に言い聞かせるように言う。
明日また来る。
そう言って部屋を出たが、どうしてもルーの顔が見たくて、踵を返しルーの部屋に向かった。
蝋燭の灯りが、ルーの顔を照らす。
そっと近づきルーの顔を覗き込む。
一度自覚すると、ルーが愛しくて愛しくてたまらない。
寝ているルーの額に、口付けを落とす。
「ゆっくりおやすみ。明日来るね。」
そう言い残し部屋から出て、屋敷を後にした。
自分の部屋に帰り、ソファにドッカリと、全身を預ける。
そして、考えるのはルーの事。
不覚にも目の奥が熱くなる。
ルーを失うと思うと・・・・
ルーが産まれた時から、溺愛していた事は自分でも自覚している。
それだけ可愛くて愛しい存在だった。
成長する度に、ますますルーの存在が大きくなっていった。
成人になって、ルーの側に誰かがいる事が許せない。
ルーが俺を見なくなったら?
そう思うだけで、胸が苦しくて辛い。
もう、俺がルーなしでは生きていけない。
だが、それは俺の一方的な想いだ。
押し付ける気はない。
ルーが俺と同じ気持ちなら、もう逃がしてやる事は出来ない。
すぐに求婚する。
まぁ、幸い必ず子を作らなくても、問題はない。
今の兄上には、2人の王子がいるから、将来のこの国は安泰だ。
ルーの所も、マリウスの結婚も決まってるし、大丈夫だろう。
その点は問題ないんだが・・・・
後は、ルーの体調だな。
もしこの国での治療が無理なら、帝国に連れて行くか。
まずは、帝国に行くまでの体力も付けないとな。
幸いな事に、帝国からの医師がいるから良く診てもらって、それからだな。
さて、明日は忙しくなりそうだから、寝るか。
「ルー。おやすみ。また明日な。」
翌日。
俺は、朝早く起きてから、まずは、ルーの治療が出来る部屋を用意するように、俺の自室に近い場所を指示し、王宮の医師団に連絡するよう伝えた。
執務室に移動すると、すぐに医師達がやって来た。
「おはよう御座います。殿下。」
「あぁ、おはよう。今日からルーカスを王宮で預かる事にしたから、そちらで治療の方を頼む。」
「かしこまりました。では、こちらにいらしてから、治療方針を決める事にいたしましょう。」
「よろしく頼む。」
「「御意。」」
あぁ、あれが帝国から来た医師だな。
女だったのか・・・
まぁ、俺を見ても顔色変えないのは、いいな。
だいたいの女は、初めて俺に会うと、媚びを売ってくるか、あからさまに擦り寄ってくるからな。
もう、ウンザリだ。
それが、この医師はない。
職務意識が高いのだろうな。
安心してルーを任せられそうだな。
粗方執務を終わらせて、早速公爵家にルーを迎えに行く。
「おはようルー。体調は?」
「ライ!おはよう。大丈夫だよ。昨日はありがとう。いっぱい迷惑かけちゃったよねぇ?ごめんね?」
「そんな事ないよ。謝らないで。ね?」
「でも・・・・」
「ねぇ?ルー、今日からの事聞いてる?」
「あ、うん。王宮に行くんでしょ?」
「そう。今ね、帝国から医師が来てるんだよ。だから、しっかりとルーの病気の事調べて貰おうな。」
「そうなんだね。ありがとう。ライ。僕も早く病気を治したい。」
「ん、焦らずゆっくり治そうな。」
ルーと一緒に馬車に乗り込んで王宮に向かう。
ゆっくりとした足取りで、俺がルーの為に用意した部屋に案内する。
「ルー。ここがルーの部屋だよ。今から医師達が来るから、来るまでゆっくりしていいからね。」
「ありがとう。ライ。部屋まで用意してもらって。で、でも、ライ?ここって王族の居住区域だよね?いいの?」
「いいに決まってる。ルーは、俺の家族だろう?兄様だもんな?」
「・・・う、うん。えーっと、うん。ありがとう。」
「ん、まぁ、ゆっくりしてて?後で来るからね。」
俺は、ルーの頭を撫で、部屋を出た。
ゔぅーん・・・脈ありか?
いや、いやいやいや。
焦らず行こう。
まずは、ルーの病気を治す事が先だ!
落ち着け、俺!
俺は、急いで医師達のいる所へ向かった。
53
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
【完結】白豚王子に転生したら、前世の恋人が敵国の皇帝となって病んでました
志麻友紀
BL
「聖女アンジェラよ。お前との婚約は破棄だ!」
そう叫んだとたん、白豚王子ことリシェリード・オ・ルラ・ラルランドの前世の記憶とそして聖女の仮面を被った“魔女”によって破滅する未来が視えた。
その三ヶ月後、民の怒声のなか、リシェリードは処刑台に引き出されていた。
罪人をあらわす顔を覆うずた袋が取り払われたとき、人々は大きくどよめいた。
無様に太っていた白豚王子は、ほっそりとした白鳥のような美少年になっていたのだ。
そして、リシェリードは宣言する。
「この死刑執行は中止だ!」
その瞬間、空に雷鳴がとどろき、処刑台は粉々となった。
白豚王子様が前世の記憶を思い出した上に、白鳥王子へと転身して無双するお話です。ざまぁエンドはなしよwハッピーエンドです。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました
多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。
ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。
ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。
攻め
ユキ(23)
会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。
受け
ケイ(18)
高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。
pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる