健気な公爵令息は、王弟殿下に溺愛される。

りさあゆ

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ルーの部屋を出た俺と、公爵とマリウスは別室で、話し合いの為ソファに座る。

「それで、殿下。申し訳ありませんが、ルーカスはしばらくの間お休みさせて頂きたいのですが。」
「あぁ、仕事は問題ない。それと、ルーは王宮で預かる。」
「・・・えっと、何故かと聞いても?」
「ん、検査を受けさせる。」
「えぇ、それはこちらでも出来ますが?」
「私が、ルーの側に居たいんだ。すまないこれは、譲れない。」
「はぁ。」
少し呆れ顔の公爵に、マリウスが、
「まぁ、その方がルーも安心するんじゃないかな?検査もするんだろ?」
「あぁ、王宮の医師団に、カンダス帝国から来た医師がいるから、それに診てもらおうと思う。」
「帝国の医学は、こちらより進んでるからな。」
「そうでしたか。ありがとうございます殿下。ルーをよろしくお願いします。」
「必ずルーは治る。大丈夫だ。」

俺は、自分に言い聞かせるように言う。

明日また来る。
そう言って部屋を出たが、どうしてもルーの顔が見たくて、踵を返しルーの部屋に向かった。

蝋燭の灯りが、ルーの顔を照らす。
そっと近づきルーの顔を覗き込む。

一度自覚すると、ルーが愛しくて愛しくてたまらない。

寝ているルーの額に、口付けを落とす。

「ゆっくりおやすみ。明日来るね。」

そう言い残し部屋から出て、屋敷を後にした。




自分の部屋に帰り、ソファにドッカリと、全身を預ける。
そして、考えるのはルーの事。

不覚にも目の奥が熱くなる。
ルーを失うと思うと・・・・
ルーが産まれた時から、溺愛していた事は自分でも自覚している。
それだけ可愛くて愛しい存在だった。
成長する度に、ますますルーの存在が大きくなっていった。
成人になって、ルーの側に誰かがいる事が許せない。
ルーが俺を見なくなったら?
そう思うだけで、胸が苦しくて辛い。

もう、俺がルーなしでは生きていけない。
だが、それは俺の一方的な想いだ。
押し付ける気はない。

ルーが俺と同じ気持ちなら、もう逃がしてやる事は出来ない。
すぐに求婚する。

まぁ、幸い必ず子を作らなくても、問題はない。
今の兄上には、2人の王子がいるから、将来のこの国は安泰だ。
ルーの所も、マリウスの結婚も決まってるし、大丈夫だろう。
その点は問題ないんだが・・・・


後は、ルーの体調だな。
もしこの国での治療が無理なら、帝国に連れて行くか。
まずは、帝国に行くまでの体力も付けないとな。
幸いな事に、帝国からの医師がいるから良く診てもらって、それからだな。


さて、明日は忙しくなりそうだから、寝るか。

「ルー。おやすみ。また明日な。」







翌日。

俺は、朝早く起きてから、まずは、ルーの治療が出来る部屋を用意するように、俺の自室に近い場所を指示し、王宮の医師団に連絡するよう伝えた。

執務室に移動すると、すぐに医師達がやって来た。

「おはよう御座います。殿下。」
「あぁ、おはよう。今日からルーカスを王宮で預かる事にしたから、そちらで治療の方を頼む。」
「かしこまりました。では、こちらにいらしてから、治療方針を決める事にいたしましょう。」
「よろしく頼む。」
「「御意。」」


あぁ、あれが帝国から来た医師だな。
女だったのか・・・
まぁ、俺を見ても顔色変えないのは、いいな。
だいたいの女は、初めて俺に会うと、媚びを売ってくるか、あからさまに擦り寄ってくるからな。
もう、ウンザリだ。
それが、この医師はない。
職務意識が高いのだろうな。
安心してルーを任せられそうだな。

粗方執務を終わらせて、早速公爵家にルーを迎えに行く。

「おはようルー。体調は?」
「ライ!おはよう。大丈夫だよ。昨日はありがとう。いっぱい迷惑かけちゃったよねぇ?ごめんね?」
「そんな事ないよ。謝らないで。ね?」
「でも・・・・」
「ねぇ?ルー、今日からの事聞いてる?」
「あ、うん。王宮に行くんでしょ?」
「そう。今ね、帝国から医師が来てるんだよ。だから、しっかりとルーの病気の事調べて貰おうな。」
「そうなんだね。ありがとう。ライ。僕も早く病気を治したい。」
「ん、焦らずゆっくり治そうな。」


ルーと一緒に馬車に乗り込んで王宮に向かう。
ゆっくりとした足取りで、俺がルーの為に用意した部屋に案内する。

「ルー。ここがルーの部屋だよ。今から医師達が来るから、来るまでゆっくりしていいからね。」
「ありがとう。ライ。部屋まで用意してもらって。で、でも、ライ?ここって王族の居住区域だよね?いいの?」
「いいに決まってる。ルーは、俺の家族だろう?兄様だもんな?」
「・・・う、うん。えーっと、うん。ありがとう。」
「ん、まぁ、ゆっくりしてて?後で来るからね。」

俺は、ルーの頭を撫で、部屋を出た。



ゔぅーん・・・脈ありか?
いや、いやいやいや。
焦らず行こう。
まずは、ルーの病気を治す事が先だ!
落ち着け、俺!

俺は、急いで医師達のいる所へ向かった。
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