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騎士隊長と黒髪の青年
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目を覚ました莉人は、ゆっくりとベッドから起き上がった。
俺·····気ぃ失ったんだっけ······
窓からはオレンジの光が差し込み、今が夕刻だと言う事が窺える。
莉人はベッドから立ち上がると、部屋の中を見渡した。
簡易的なシャワー室が備わってはいるが、ベッドと小さな机が置かれただけの殺風景な部屋。宿舎を案内されている時に説明された自室か····。
莉人はドアの付近にあるポールハンガーに隊服の上着が皺にならないようにかけられている事に気づいた。
倒れる直前、アシュレイの駆け寄る姿が目に入った。自分をここまで運んでくれたのは彼だろうか······と、莉人は考えた。
──── コン コン
不意にドアが小さくノックされた。
ドアを開けると、そこにはリディオが立っていた。
「あ······もう躰は····大丈夫なのか?」
目が合った瞬間顔を逸し、リディオは少し遠慮がちに訪ねる。
莉人はリディオが自分が同じ部隊にいる事を迷惑に思っていた事を思い出し、
「ああ、迷惑かけて悪い」
と、謝罪の言葉を口にした。その言葉を聞いたリディオの躰がピクッと揺れる。
「······あのっ······悪···かったよ」
リディオは目を逸らしたまま小さく呟き、言い過ぎた、と言葉を続けた。
執務室ではあれだけ悪態を吐いていたのに、心配してくれたのか、と思わず口元が綻ぶ。
「······何笑ってんだよ。体調が大丈夫ならさっさと食堂に行くぞ」
「ん?もしかして、食事に誘いに来てくれたのか?」
「······隊長の護衛をつけるって意味分かってんのか?一人で行動するなって事だ!!」
誘いたくて誘いに来たわけじゃない!とでも言わんばかりの勢いでリディオは声をあげた。
それでも莉人が上着を着るまで黙って待っていてくれるあたり、文句を言いつつも面倒を見のいい少年だな···と莉人は思いながら部屋を後にした。
食堂でトレイに自分の食べたい分だけ取り分けて乗せた莉人はリディオの前の席に腰掛けた。
「え······これだけ?」
莉人のトレイの上の食事の量を見るなり、リディオは思わず声を漏らす。それもそのはず、肉やパンの量など、どれもリディオの半分くらいの量しか乗っていない。
「育ち盛りの少年と一緒にするな······」
パンを口に運びながら、こうしてまともな食事を誰かと一緒にとるのは久しぶりだ···と考える。
朝は殆どコーヒーのみだし、昼と夜はコンビニのパンか弁当をデスクで仕事しながら食べていた。たまに取引先の人間と会食をする事もあったが、
·········ロクなもんじゃなかったな
女顔だの、君は誘うような目をしているだの、こちらが取引先してもらう側だと思って強引にでる輩もいた。こっちの世界へ来ると分かっていれば、最後に蹴り倒してやれば良かったと思う面々が浮かぶ。
飯が不味くなるからやめよう······
莉人は苦々しい思いを打ち消し、食事を続けた。
「よう、リディオ」
頭の上から聞こえた声に、莉人は視線を向けた。
「······ライザー」
嫌そうな声でリディオは彼の名を呟いた。
「なんだよ、同期なんだからそんなに嫌そうな顔するなよ」
よほど彼に話しかけられるのが嫌なのか、ますますリディオの顔は険しくなる。
「お姫さんがお姫さんの面倒みてるらしいじゃねえか。第一の隊長さんはお前に飽きて新しいお姫さんを可愛がるんじゃねえの?隊長さんに捨てられたら、俺らの隊で拾ってやってもいいんだぜ?」
「···んだと!自分が第一に選ばれなかったからって変な言いがかりをつけるな。俺が第一に入ったのは実力が認められたからだ!!」
このニ人の会話から察するに、ライザーは第一に入りたかったが入れず、自分が選ばれなかったのにリディオが選ばれるのはおかしい、躰の関係だと下衆な勘繰りをしているのか···。
数時間だが、あの隊長を見た限りそんな俗物的な事で部下を選ぶなどありえない事は見て取れる。リディオの実力で勝ち取った居場所なのだろう。
莉人は二人の会話の行く末を眺めながら、少なくなってきた食事を口に運ぶ。
「捨てられる前に拾ってやるって言ってんだよ。新しいお姫さんはお前と随分タイプが違うんじゃねえの?」
ライザーの視線が莉人に向けられる。下品な薄ら笑いを浮かべながら上から下まで舐め回すように見下ろす視線は莉人のよく知っているものだった。
─── 人を見下し、値踏みする視線
莉人は最後のスープをスプーンで掬うと、顔を少し上むかせ、スプーンから唇を濡らすように液体を流し込んだ。そして、ゆっくりと嚥下する。
ライザー視線が自分の喉元に釘付けになった事を確認すると、赤く濡れた舌を僅かに覗かせ、チロりとスプーンの先に舌を這わせた。
その妖艶さにライザーが息を飲むのを莉人は見逃さなかった。
食べ終わった食器を持ち、莉人は立ち上がると食器を返却する為に歩き出した。そしてライザーの横を通りかかった瞬間、彼の耳元に唇を寄せ囁く。
「この程度でナニ興奮してんだよ。そんなんじゃ相手を満足させる前にテメェがイくんじゃねぇの?」
「っ······」
顔を真っ赤にしたライザーは、その場から逃げるように駆け出した。
こういうの、脱兎のごとくって言うんだろうな~···なんて呑気な事を考えながら莉人は食器を返却しに向かう。
席に戻ると、顔を赤らめたり青ざめたりしているリディオの前にアシュレイが立っていた。
「聞こえなかったのか?この騒ぎの詳細を報告しろと言ってるんだ」
「···その········」
ますますリディオは俯いてしまっている。
言えるわけないわな······
莉人は二人に近き、
「リディオが同期にセクハラされたから俺がセクハラ仕返してやっただけだよ」
リディオの変わりに話す。
「セク······???」
セクハラは通じないのか、と性的嫌がらせの事だと説明するとアシュレイの表情は固まる。
「そんな事、いたいけな少年に説明させんなよ。それもセクハラだからな」
部屋に戻ろうと歩き出した莉人の肩を後ろからアシュレイにガシッと掴まれ歩みを止められる。
「······独りで行動するなと言っただろ······」
絞り出すような低い声にアシュレイが怒っている事が分かる。
何を怒ってんだ······?
騒ぎを起こした事か?でも、それはライザーとか言う奴が絡んできたからだろうが
それとも、部下の前でセクハラするなとか言ったからか?
莉人はそっと振り返った。
研ぎ澄まされた鋭い光を孕んだ深い藍色の瞳と視線がぶつかる。
端正な顔立ちで凄まれると迫力がある。
「だったらリヒト、お前に説明してもらおう」
アシュレイは腕を掴み、強引に歩き出した。
「ちょ······おい!」
引っ張られ、体制を崩しながらも莉人はアシュレイの少し後ろを歩いていった。
俺·····気ぃ失ったんだっけ······
窓からはオレンジの光が差し込み、今が夕刻だと言う事が窺える。
莉人はベッドから立ち上がると、部屋の中を見渡した。
簡易的なシャワー室が備わってはいるが、ベッドと小さな机が置かれただけの殺風景な部屋。宿舎を案内されている時に説明された自室か····。
莉人はドアの付近にあるポールハンガーに隊服の上着が皺にならないようにかけられている事に気づいた。
倒れる直前、アシュレイの駆け寄る姿が目に入った。自分をここまで運んでくれたのは彼だろうか······と、莉人は考えた。
──── コン コン
不意にドアが小さくノックされた。
ドアを開けると、そこにはリディオが立っていた。
「あ······もう躰は····大丈夫なのか?」
目が合った瞬間顔を逸し、リディオは少し遠慮がちに訪ねる。
莉人はリディオが自分が同じ部隊にいる事を迷惑に思っていた事を思い出し、
「ああ、迷惑かけて悪い」
と、謝罪の言葉を口にした。その言葉を聞いたリディオの躰がピクッと揺れる。
「······あのっ······悪···かったよ」
リディオは目を逸らしたまま小さく呟き、言い過ぎた、と言葉を続けた。
執務室ではあれだけ悪態を吐いていたのに、心配してくれたのか、と思わず口元が綻ぶ。
「······何笑ってんだよ。体調が大丈夫ならさっさと食堂に行くぞ」
「ん?もしかして、食事に誘いに来てくれたのか?」
「······隊長の護衛をつけるって意味分かってんのか?一人で行動するなって事だ!!」
誘いたくて誘いに来たわけじゃない!とでも言わんばかりの勢いでリディオは声をあげた。
それでも莉人が上着を着るまで黙って待っていてくれるあたり、文句を言いつつも面倒を見のいい少年だな···と莉人は思いながら部屋を後にした。
食堂でトレイに自分の食べたい分だけ取り分けて乗せた莉人はリディオの前の席に腰掛けた。
「え······これだけ?」
莉人のトレイの上の食事の量を見るなり、リディオは思わず声を漏らす。それもそのはず、肉やパンの量など、どれもリディオの半分くらいの量しか乗っていない。
「育ち盛りの少年と一緒にするな······」
パンを口に運びながら、こうしてまともな食事を誰かと一緒にとるのは久しぶりだ···と考える。
朝は殆どコーヒーのみだし、昼と夜はコンビニのパンか弁当をデスクで仕事しながら食べていた。たまに取引先の人間と会食をする事もあったが、
·········ロクなもんじゃなかったな
女顔だの、君は誘うような目をしているだの、こちらが取引先してもらう側だと思って強引にでる輩もいた。こっちの世界へ来ると分かっていれば、最後に蹴り倒してやれば良かったと思う面々が浮かぶ。
飯が不味くなるからやめよう······
莉人は苦々しい思いを打ち消し、食事を続けた。
「よう、リディオ」
頭の上から聞こえた声に、莉人は視線を向けた。
「······ライザー」
嫌そうな声でリディオは彼の名を呟いた。
「なんだよ、同期なんだからそんなに嫌そうな顔するなよ」
よほど彼に話しかけられるのが嫌なのか、ますますリディオの顔は険しくなる。
「お姫さんがお姫さんの面倒みてるらしいじゃねえか。第一の隊長さんはお前に飽きて新しいお姫さんを可愛がるんじゃねえの?隊長さんに捨てられたら、俺らの隊で拾ってやってもいいんだぜ?」
「···んだと!自分が第一に選ばれなかったからって変な言いがかりをつけるな。俺が第一に入ったのは実力が認められたからだ!!」
このニ人の会話から察するに、ライザーは第一に入りたかったが入れず、自分が選ばれなかったのにリディオが選ばれるのはおかしい、躰の関係だと下衆な勘繰りをしているのか···。
数時間だが、あの隊長を見た限りそんな俗物的な事で部下を選ぶなどありえない事は見て取れる。リディオの実力で勝ち取った居場所なのだろう。
莉人は二人の会話の行く末を眺めながら、少なくなってきた食事を口に運ぶ。
「捨てられる前に拾ってやるって言ってんだよ。新しいお姫さんはお前と随分タイプが違うんじゃねえの?」
ライザーの視線が莉人に向けられる。下品な薄ら笑いを浮かべながら上から下まで舐め回すように見下ろす視線は莉人のよく知っているものだった。
─── 人を見下し、値踏みする視線
莉人は最後のスープをスプーンで掬うと、顔を少し上むかせ、スプーンから唇を濡らすように液体を流し込んだ。そして、ゆっくりと嚥下する。
ライザー視線が自分の喉元に釘付けになった事を確認すると、赤く濡れた舌を僅かに覗かせ、チロりとスプーンの先に舌を這わせた。
その妖艶さにライザーが息を飲むのを莉人は見逃さなかった。
食べ終わった食器を持ち、莉人は立ち上がると食器を返却する為に歩き出した。そしてライザーの横を通りかかった瞬間、彼の耳元に唇を寄せ囁く。
「この程度でナニ興奮してんだよ。そんなんじゃ相手を満足させる前にテメェがイくんじゃねぇの?」
「っ······」
顔を真っ赤にしたライザーは、その場から逃げるように駆け出した。
こういうの、脱兎のごとくって言うんだろうな~···なんて呑気な事を考えながら莉人は食器を返却しに向かう。
席に戻ると、顔を赤らめたり青ざめたりしているリディオの前にアシュレイが立っていた。
「聞こえなかったのか?この騒ぎの詳細を報告しろと言ってるんだ」
「···その········」
ますますリディオは俯いてしまっている。
言えるわけないわな······
莉人は二人に近き、
「リディオが同期にセクハラされたから俺がセクハラ仕返してやっただけだよ」
リディオの変わりに話す。
「セク······???」
セクハラは通じないのか、と性的嫌がらせの事だと説明するとアシュレイの表情は固まる。
「そんな事、いたいけな少年に説明させんなよ。それもセクハラだからな」
部屋に戻ろうと歩き出した莉人の肩を後ろからアシュレイにガシッと掴まれ歩みを止められる。
「······独りで行動するなと言っただろ······」
絞り出すような低い声にアシュレイが怒っている事が分かる。
何を怒ってんだ······?
騒ぎを起こした事か?でも、それはライザーとか言う奴が絡んできたからだろうが
それとも、部下の前でセクハラするなとか言ったからか?
莉人はそっと振り返った。
研ぎ澄まされた鋭い光を孕んだ深い藍色の瞳と視線がぶつかる。
端正な顔立ちで凄まれると迫力がある。
「だったらリヒト、お前に説明してもらおう」
アシュレイは腕を掴み、強引に歩き出した。
「ちょ······おい!」
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