騎士隊長と黒髪の青年

朔弥

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騎士隊長と黒髪の青年

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 大した怪我もしていないし、一人で歩けると言ってもアシュレイは聞き入れず、莉人を抱き抱えたまま騎士団宿舎のアシュレイの部屋へと戻ってきた。部屋へ辿り着くまでに何人かとすれ違い、恥ずかしい事この上ない。
 ベッドに腰掛けるように降ろされ、ようやくホッと息がつけた。
「リヒト····」
 アシュレイの手がそっと手首に触れる。莉人の白い肌に残る拘束具で擦れた傷は痛々しく、アシュレイはやり切れない表情をした。そして、手首の傷に優しく口づけた。
「もう誰にも傷つけさせない·····」
 顔をあげ、今度は少し赤みの残る頬に触れた。
「ここも少し赤いな·····叩かれたのか·····」
 嫌な記憶を消してくれるような優しい口づけを頬にもされる。

 ───── ああ···やっぱり

 ルーベルトに触れられた時はあれほど嫌悪したのに、アシュレイに触れられても平気だ。
「リヒト?辛いのか?」
 黙っている莉人に心配したアシュレイは声をかけながら顔を覗き込む。
 莉人はアシュレイの襟首に手を伸ばし掴んだ。
「····平気だったのに·······」
 低く絞り出すような声で呟く。
「リヒト?」
「撫で回されるくらい平気だったのに····アイツに触られただけでおぞましくて····」
 思い出すだけでも声が慄える。
「リヒト·····。俺が触れるのも嫌か?リヒトが嫌がる事はしない·····」
 悲しい瞳だが、莉人を思い遣る温かな光がそこにはあった。
 莉人は違う、と首を横に振る。
 嫌じゃないから困るのだ。
 アシュレイ以外の奴に触れられたくなくなかったこの躰は······。
 莉人は額をアシュレイの胸元に当てた。
「お前が消してくれよ····アイツに触られた嫌な記憶を····」
「リヒト····」
 アシュレイは莉人の背に両腕を回し優しく抱きしめると、莉人の首筋にそっと唇を落とす。
 愛おしく何度も口づけ、時折、軽く歯をたてきつく吸い、白い肌に朱を散らしていく。
 莉人に羽織らせていた隊服を脱がせると、シャツ一枚で裾から覗く太腿に手を這わせた。
「この前みたいに止めないぞ」
 いいのか?と、アシュレイは莉人の耳元で囁いた。
「俺にお前の事、好きにさせてみせるんだろ?」

 きっと······
 もう好きになってるんだろうけど···

 莉人は穏やかな笑みを浮べた。
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