騎士隊長と黒髪の青年

朔弥

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後日談

謹慎編

「遅かったな、リヒト」
 自分の部屋のドアを開けた瞬間、ベッドに腰掛けたアシュレイが莉人に声をかけた。
 第一騎士団の事務仕事に慣れた莉人は、つい遅くまで仕事に集中してしまい、今日もグレースにいい加減に部屋に帰るよう言われ、ようやく部屋に戻った所だった。
「·····何で俺の部屋に居るんだよ。謹慎処分中だろ」
 莉人は少し嫌そうな声を出す。
 先の莉人が拐われた件で、アシュレイとジェラールは仲良く揃って一週間の謹慎処分を殿下に言い渡されていた。
「俺の部屋でも、リヒトの部屋でも変わらないだろ?」
 ベッドから立ち上がったアシュレイはそう言いながら莉人に近づく。
「·····謹慎の意味分かっているのか?大人しく部屋に戻れよ」
 莉人はアシュレイから距離をとるように、ゆっくりと後ずさりするが、背中にドアが当たる。ドアノブに手をかけようと、そっと手を伸ばすが、その前にアシュレイに距離を詰められ、剰あまつさえ鍵をかけられてしまう。
「リヒト····なぜ逃げようとする?」
「·········」

 その理由をお前が聞くか? 

 公爵家から助けられた後アシュレイに抱かれたが、足腰が立たなくなるまで求められ、翌日は一日ベッドから起き上がれないくらいだった。そんなアシュレイの体力で、仕事で疲れた躰で付き合わされては、身が持たない。しかも謹慎中で一日中、部屋の中にいて体力が有り余っているかと思うと尚更だ。
 腰に手を回してくるアシュレイから逃げようとしながらも、別に···と莉人は答える。
「それより、前から聞いてみたかったんだけど、何でジェラール団長は第一騎士団を目の敵にしてんだ?」
 なるべく、抱かれるそういう雰囲気にならないような話題を考え、話しを振ってみた。
 ジェラールの名を耳にした途端、嫌そうな表情を浮かべたアシュレイは莉人の躰を抱き寄せる動きをピタッと止めた。
「奴と俺は幼なじみだ。俺に突っかかってくるのは昔からだな。俺も奴が気に食わんからお互い様だが。まあ···第一を解体させたいのは、別の理由だけどな···」
「別って?」
「···奴はリディオに惚れている。騎士に志願して来た時に一目惚れして、自分の隊に入れたかったが、リディオが志願したのは俺の隊だったからな····リディオは実力もあるし、別に断る必要もないから、うちに入隊させたんだが···。うちを解体させてリディオを引き抜きたいんだろう。第一を解体させたいのは、そういう理由だ」
「·········仕事に私情を挟むなよ」
 それがなければ、自分が拐われる前にジェラールがジョルジュの計画を耳にした時点で止められていた筈だ。
「だが、そのお陰でリヒトは俺を好きになってくれただろ?」
「え?」
 アシュレイの言葉に甘い雰囲気が混ざり始め、しまった、と莉人は顔を引きらせる。
 しっかりと腰に回された腕は莉人の力では振りほどけない。
「離せよ···俺は疲れてるから早く休みたいんだよ」
「ならば、早く隊服を脱いで着替えたらどうだ?」
「っ·····」
 含みのある笑みを浮かべるアシュレイを莉人はジロリと見据える。
「脱ぐのを見られるのが恥ずかしいなら、俺が脱がしてやろうか?」
 耳元に唇を近づけ、わざと羞恥心を煽るように囁やき、そのまま耳朶じだに軽く歯を立てた。
 ピクッと微かに莉人の躰が揺れる。
 莉人の反応を見たアシュレイは口元に笑みを浮かべ、隊服を脱がせにかかった。
「ちょっ···明日起きれないとか無理····」
「俺は着替えを手伝っているだけだが?何を想像したんだ?リヒト」
「なっ·····」
 まるで自分だけが望んでるかのように言われ、莉人は顔を赤らめる。


 ·····この野郎

 わざと煽るような言い方しておいて


 莉人は蟀谷こめかみに怒気を浮かべながら、まだ脱ぎかけだった隊服を乱暴に脱ぎ捨て、アシュレイの襟元を掴んだ。莉人の頭にはこの余裕の笑みを浮かべている奴が狼狽うろたえる様を見てやりたいと浮かんでいた。
「へぇ····そうかよ。だったら、さっさと部屋に戻れよ。おやすみのキスしてやるから」
 そう言うなり、莉人はアシュレイに口づける。彼の口腔内に舌を滑り込ませ、誘うように舌を動かすが、アシュレイの舌が絡みつこうとすると、するりと逃げる。それを繰り返すうちに、焦れたアシュレイは莉人に深く口づけようと舌を押し入ろうとした所をで、莉人はアシュレイから離れた。
「おやすみのキスだって言っただろ?」
 莉人は艶めいた笑みを浮かべ、言葉を続けた。


 ───── 謹慎が解けるまでお預けな

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