騎士隊長と黒髪の青年

朔弥

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後日談

謹慎明け編1

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「··········」
 莉人は自分の部屋の前に立ち、ドアノブを凝視していた。
 アシュレイの謹慎が今日で解ける。あの日、莉人がアシュレイにお預けを食らわせて以来、彼が莉人の前に現われる事はなく、大人しく自室で謹慎処分を受けているようだった。大人しくしている事が逆に怖い。

 ·····絶対、お預け食らった事怒ってるだろ

 怖い程の笑みを浮かべ、『おやすみ』と言いながら部屋を出ていったアシュレイを思い出すだけで、莉人は背筋が凍るようだった。
「部屋に居ませんように!」
 祈るようにドアをそっと開け、部屋の中を覗いた。誰も居ない事を確認すると、ホッと胸を撫で下ろす。
 部屋の鍵をかけてしまえば今日もゆっくりと眠れそうだと、部屋へ入ろうとした莉人の肩に手がかけられた。
「リヒト、誰の確認だ?」
「っ!!」
 恐る恐る振り向くと、満面の笑みを浮べたアシュレイが立っていた。
「······何で俺が部屋に戻る時間が分かるんだよ。監視でもしてるのか?」
「ドアに触れた事が分かる感知魔法がかけてある。また拐われないとも限らないからな」
「·········」

 もっともらしい事を並べているが、絶対に俺が部屋に戻ったのを知る為だろ····

 莉人は呆れた表情でアシュレイを見る。そんな莉人の視線を知ってか知らずかアシュレイは部屋の中へと入り、ベッドへ腰掛けた。
「どうした?入ってこないのか?」
 促され、莉人は部屋のドアを閉める。
「上を脱いだらどうだ?今度は手伝わずに見ていてやろう···」
「·····根に持ってんだろ····」
「まさか」
 唇の端を上げて笑うが、瞳は扇情的せんじょうてきな視線を向けている。その視線に、隊服を脱ごうとした手の動きが鈍る。
 視線だけで愛撫されているようで、莉人は躰の中にむず痒い熱が生まれるのを感じていた。
 ゆっくりと隊服を肩から滑り落とすと、ポールハンガーにかけ、莉人はアシュレイに近づく。
「どうしたい?リヒト。前回はお預けを食らったからな···お前の好きにさせてやる」


 やっぱ根に持ってんじゃねぇか····

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