騎士隊長と黒髪の青年

朔弥

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眠れない夜

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「·········」
 莉人の部屋の前でドアノブに手をかけたまま、アシュレイはドアを開けかねていた。先程のグレースの『彼も息が詰まってしまうのでは···』と言われた台詞が重くのしかかっていた。


 リヒトの顔が見たかったが····
 もう寝てるだろうから明日にするか····

 
 自分でも気づかないうちに溜息を吐き、隣の自分の部屋のドアを開けた。部屋の灯りを点けようとしたが部屋の中に人の気配を感じ、アシュレイは動きを止める。
「······リヒト?」
 アシュレイは灯りを点けず、ベッドへと近いた。薄暗がりでもよく分かる。この1ヶ月会いたくてたまらなかった。この腕に抱き乱れる彼の姿を何度、思い描いた事か····。
 莉人はアシュレイのシャツを身にまとい、ベッドで横になり静かな寝息をたて眠っていた。大きめのシャツから覗く鎖骨は色気を誘い、シャツの裾からは悩ましげな白い脚がすらりと伸びている。
 莉人はシャワーを浴びた後、アシュレイのシャツを勝手に拝借しベッドに横になっていた。帰ってくるのは明日だ、どうせなら彼の香りに包まれ眠りたいと思い、莉人はそのまま眠りについていた。
「リヒト···」
 そっと声をかけるが、起きる気配はない。
 禁欲的な生活をしていたアシュレイにとってこの状況は耐え難いものがある。
 アシュレイはベッドの脇に腰掛け、莉人の髪に触れた。
「····誘うような格好をしているお前が悪い·····」
 そう呟くと、アシュレイはシャツのボタンをゆっくりと外していった。シャツの前立てから指を忍ばせ、肌を撫でていく。
「ん·····」
 僅かに莉人が身動みじろぐが、まだ眠り続けている。
 アシュレイは指の動きを段々、大胆に動かしていった。立ち上がり始めた胸の突起を指で転がすように刺激した。
「····っ······」
 莉人の吐息に甘い香りが混ざり始め、呼吸が乱れていく。と、同時に莉人の半身が熱を帯び始めた。
「···あ····んうっ·······」
 快楽を感じ喘ぎ声を洩らすと、莉人の瞼がゆっくりと開く。
「···え····な··に·····?」
 莉人は何が起こっているのか分からず混乱した。
 どうしてアシュレイが目の前にいるのか···。そして、ふわふわと心地良い快楽につい先程まで自分は酔いしれていたように感じていたのは······。
「アシュレイ·····って、何やって!」
 胸をまさぐられている事に気づいた莉人は、彼の腕を掴み離そうとした。だが、莉人の力ではどうにもできない。胸をキュッと摘まれ、莉人の躰はビクンと震えた。
「俺のベッドで何をしてた?リヒト···」
「えっ······」
 アシュレイの問いかけに、莉人はギクリと躰を強張らせた。
 さっきまでここで一人で前を慰めていた···などと言える筈もない。
 だが、そんな戸惑いの表情を見たアシュレイは、感良く察した。
 耳元に唇を近づけ、莉人に囁く。


 ───── シテたのか?


「ちがっ·····」
 否定の言葉を口にするが、狼狽えた表情は認めているに等しい。
「どうやって?·······見せてみろ、リヒト」
「·······え?」
 アシュレイは莉人の手を取り、下へと導く。莉人は自身のモノを握らされ、困惑の表情を浮べた。
「待てずに一人で気持ち良くなっていたんだろ?·····どうやってシテいた?」
 重ねられた手は逃れられないように力が込められている。
「ア、アシュレイ···離せよ···」
 上から覗き込み、目を細め笑みを浮かべる彼の表情は悪戯を企む子供のような顔をしていた。
「ほら····指も動かしてみろ」
 莉人の手も一緒に緩々ゆるゆると動かしていく。
「嫌だって·····さっきシタばっかで直ぐにはイけな·····」
 自分で言って、ハッとする。恐る恐るアシュレイを見ると彼は不敵な笑みを浮べていた。


 なら、時間をかけてイかせてやろう····

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