恋愛知らずな生き様

市川 雄一郎

文字の大きさ
16 / 54
②はじめての恋愛……だが……

一か八かの秀太の一発芸

しおりを挟む
 さて、何をしようか迷っていると司会の男性が秀太に声をかけたのである。


 「何か曲でも流してみます?」


 少し考えた秀太はあることに気づいたのか“ハッ”として司会の人に言った。


 「ヒップホップを流してくれませんか?」


 司会の男性は笑顔で秀太のリクエストを承諾したのである。


 「ええ、流しましょう。」


 そして司会の男性が洋楽のヒップホップを流すと秀太は突然踊り始めたのである。動きにキレがあるわけでもなく、カッコいい外見でもなく勢いのある顔つきでもないダンス……最初は客席から嘲笑が漏れていたのだが……


 「なあ、でも楽しそうに踊っていないか彼?」


 客席の一人が呟くと皆の目付きが変わり、嘲笑は全く聞こえなくなったのだ。そればかりか皆が手拍子で秀太の不器用なダンスを盛り上げる。


 「(なんやかんやでダンス楽しいわ!!)」


 元々身体を動かすのは好きではないが、無性に踊りたくなるときがある。ヒップホップを流すと彼は突然踊りたくなり、ブレイクダンスを意識した躍りをするのだ。


 「唱子さん!!」


 「秀ちゃん?」


 「俺は、俺は、君のことを思いながらこのダンスを踊っているんだ!!」


 「!?」


 「君と出会えて色んな経験して……ホンマ、楽しい!!出会いって本当に人生を変えてくれる!!」


 「秀ちゃん……!!」


 皆が聞くなかでの秀太の発言に唱子の目から涙が流れていた。感動していたのである。客からの激励も聞こえてきたのである。


 「二人とも!!幸せになれよっ!!」


 「ありがとう!!」


 激励に踊りながら応える秀太。体力があまりないためか息切れや吐き気も少し催したりしたが、踊るのは大好きだし皆に……そして唱子に見てもらいたい思いから曲が終わるまで踊り続けたのである。


 「最後に、キメ(のポーズ)!!」


手と足を横に広げてキメた秀太に大きな拍手が飛んだのである。いつものこのステージでの一発芸はお笑い要素が強いのだが、この日ばかりは唱子のバイオリンと秀太のブレイクダンス(?)に感動と興奮の一発芸となったのであった。


 「ふぅ……」


 「秀太さん……お疲れ様……!!」


 秀太の疲れを理解していたのか誰もアンコールはしなかった。だが秀太はその気持ちを理解したのか客席に手を振った。それもちょっとだけではなく司会者に声をかけられるまで両手を振りつづけたのであった。


 「お二人とも、ありがとうございました!!」


 司会者の感謝のメッセージが二人に伝えられると彼らはステージを降りたのであった。自分達の席に向かう途中も客席の人たちからたくさん声をかけられたのであった。


 「ええの見せてもらったわ!」


 「このステージには頻繁に来てるけど君達の一発芸は……ほんまに感動しました!!」


 「お疲れさん、ありがとう!!」


 二人は次々に声をかけてくれた人に頭を下げて感謝する。そして席に着くと近くの席の男性が二人に声をかけた。


 「君らならええ夫婦になれるで。」


 二人はほほを赤くしたのである。男性は二人を見て豪快に笑う。


 「ガハハハハ、ワシも若いときに戻りたいのお!!」


 二人はこの言葉を聞き、若いうちに何でもしようと思ったのであった。今しかできないことがたくさんあるからこそ……今、色々と経験しようと思ったのであった。そしてステージは終わり、二人はまた別のアトラクションを探し始めたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...