ヒナの国造り

第４章・ドーリンの洞窟と若さの効用のルーツ

となり町の洞窟の秘密と怪しい動き③

しかし大変なことが判明した。この日は昼から天気が崩れるということでかなり危険な冒険になりかねないのである。ヒナは今日もやはり諦めるしかないかと思い、旅館の手伝いをしながら自室で仮眠していた時だった。

「ヒナちゃん、お客さんよ！！」

直露の母に呼ばれて目を覚ましたヒナは荷物を持たずに民宿の玄関へと向かった。すると見知らぬ青年の姿があった。

「あのー、猫屋敷さんでよろしかったでしょうか？」

「は……はい。」

「私、束椎木(たばしぎ)といいまして工事現場の仕事をしています。実はあの山を登頂したのがあなたと聞いてお願いがあって来ました。」

「え……どうかされましたか？」

「はい、私の兄が昨日からドーリン洞窟に行ったきりで行方不明になってしまいまして見つからないのです。」

「ええー！大変！」

どうやらヒナが行く予定のドーリン洞窟に訪れた青年の兄が行方不明になったというのだ。

「それで猫屋敷さんに手伝っていただけないかなと思いまして行方を探してここだと分かりました……」

「そうでしたか！！それなら今すぐ手伝いにいきます！！早くいきましょう！！」

そう言うとヒナはそのまま束椎木に着いていくことにしたのであった。束椎木の車に乗せられてドーリン方面へと向かうヒナであった。

「お兄さんが無事だと良いのですが……」

「ありがとうございます……見つかることを僕自身信じてます……」

「お兄さん思いなのですね……」

「そうでもないですがね……」

涙ぐむようなしゃべり方をしていた束椎木だったが、運転中に謎のほくそ笑みを浮かべていたのであった。

「あ、いよいよドーリン洞窟の近くですね！」

ヒナはそう言うと看板が出てきた。左の看板は高速道路の入口で右の看板はドーリンの町である。しかし車は右に曲がらずに左の高速道路に入ったのであった。

「あのー、ここは高速道路の入口ですよ？」

ヒナは束椎木に質問をすると彼はヒナの顔を変な目付きで見つめながら言う。

「しまった！高速道路に入っちゃったね！早く戻るとするかな。」

しかし高速道路に入ると次のインターチェンジまではサービスエリアをひとつ跨いだ先にあり距離は遠かった。しかも普通に間違えるはずはないのだが……とヒナは疑問に思い始めていたのであったが束椎木が一言言ったのである。

「兄のことを考えすぎてしまった。こうしている間にも兄は大変な状況に置かされている……」

それを聞いたヒナは疑って申し訳なかったような顔になった。車を走らせる彼の目は必死であったからだ。だが、ヒナが束椎木の顔から視線を外した時、彼の口が大きくにやついていた。

サービスエリアの入口が見えると車は左車線へと移ったのである。ヒナはこれを指摘したのであった。

「束椎木さん、サービスエリアに寄る暇があるのですか？一刻も早くお兄さんを助けにいきましょうよ！！」

「それは分かってる。まずは兄貴を助けるための工具を購入するんだ。」

「(工具ってサービスエリアにあったかな？)」

少し疑問が再び沸いたヒナだったが彼を信じて同伴することにしたのである。

「猫屋敷さん、降りてください。」

ヒナが車から降りて束椎木と店へと向かうその時だった。突然背後から現れた怪しい男性がヒナの頭部を殴り付けて気絶させたのである。

「兄貴、ナーイス！」

「弟よ、よおやってくれたな！ありがとう！」

どうやら束椎木の罠に引っ掛かったヒナは彼らに嵌められてしまったようである。その時民宿で居眠りしていた直露の夢にヒナが出てきたのである。

「直露くん、助けて！」

直露は目を覚ました。父親から車を借りて妻と共にヒナを探しに行くことにしたのであった。