ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第5章・地獄の懸垂と古代都市の復活阻止と成分の正体

地獄の懸垂ダービー⑤

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直露の目から流れ落ちるものがあった……というのも彼はヒナが来る前から行方不明者の捜索に力を注いでいたからである。ヒナと行動していた理由のひとつに行方不明になった人々が見つかるかもしれないというのがあったからだ。

ヒナが直露の前に現れる1年前には当時の捜索活動の仲間であった男性がいた。彼は直露を弟のように可愛がっており、直露も彼と一緒に捜索活動すると一人で捜索活動する日より心強いと周りに言うほど大切な存在であった。

しかし、その男性は突然小屋の近くの道で一瞬の離れた隙に行方不明になってしまっていて現在も見つからないという。

「お前、あの捜索活動していた人はどこへ行ったんだよ!?」

「ああ、あの男か。あれは確かこの前ゲームで敗れたはずだぜ……!!正義感ぶって俺の嫌いなタイプの人間だったからいなくなって良かったぜ。」

直露の顔は青くなった。あの仲間の男性はゲームで敗れた……すなわち死を表していたからだ。直露は崩れ落ちて表情はかたまってしまい人形のようになってしまったのである。

「けっ!正義感ぶって都合が悪くなれば無表情か……!!バカバカしい……ぐっ!!」

小屋の男性を取り押さえていた直露の父親は突然彼の首を腕で締めはじめたのである。無理もない。直露の仲間の男性と直露の父親も面識があったからだ。

「あの子はお前らが死なせたのか!!?許さんぞ!!」

「ぐ……ぐ……や~め……」

直摩が父を制止した。

「父さん!ダメですよ。二人の気持ちは痛いほど分かりますがこいつを殺してしまうのはよくないです。まずヒナちゃんたちがどこにいるのか聞き出さないといけませんよ!!」

「すまんかった……あの子の暖かい顔を思い出す度に怒りが収まらなくなっていた……どこにヒナちゃんをやったか教えろっ!!」

「誰かしらんけどゲーム会場は小屋の奥の扉から下に行けるからそこから行ってくれ!!俺はまだ死にたくないっ!!」

「人の命を奪って“自分は死にたくない”とか自分勝手きわまりない。あなたにはそれなりの後締めが必要ですね……」

「く……!!?」

小屋に入った直露、直摩、父、男性、渋鞍は階段を降りて先へと進んだのである。洞窟はなにやら薄暗さはあったものの崖の下辺りから何かの熱さからか明るく感じられるような状態であった。

「この洞窟はミニホットスポットなだけあるな。」

「ええ、確かに熱いですけど何か明るく感じられますね。」

「…………」

「(兄さん……いつもの表情じゃない。やはりあの人の……)」

そして5人はついにある大きな扉の前にやって来たのであった。
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