ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第10章・団結に向けて

神の時代~ある箱の正体~①

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本を読んでいると竜太はある文章を発見したのである。

「時代の流れに影響したとある箱の存在を長一族は代々、村の人々に伝えていた。それを快く思わぬ悪政の神々により一族の当主を辺境とされし無の世界へと飛ばした。」

どうやらある箱の存在がこの世の流れを大きく変えたと言う。その流れは今の世の中を作り出したと言う。さらによく読むと竜太すら知らなかったとある事実が記されていたのである。

『堵厘(どりん、※1)の地に住む住民が丁度2800年前にある家族を残して全員が異世界に飛ばされた。原因は不明だが“パドゥンラ”と呼ばれる箱(※2)がこれに携わるとされる。そして家族の一人息子の元に時空の歪みで異世界からやって来た少女が現れて夫婦の養子となり、後に一人息子と少女は結婚してそこから子孫は繁栄した。なお、少女の出自は彼女の話によるとある大洪水で神の指示により方舟を造り危機を免れた家族の子孫(※3)とのことである。』

※1……現在のドーリンのこと。
※2……パンドラの箱か。
※3……方舟伝説か。

竜太はこの文章を全てメモに記したのである。老夫婦の夫はメモをしている彼に話しかけたのである。

「この世界にお前がやって来たのは自身の本来の世界に伝えるべきことがあることを知らせるためであるのだよ竜太くん。」

竜太はその言葉に頷くしかなく、返事を出せなかった。

「(ここまで落ちぶれた男のはずの俺が大事な役割を担っているなんて……しかも知らない歴史を知ることができて……)」

自分の状況を理解した竜太はさらに本を読み続けたのである。

『これは中世の予言士が自身の著に記した予言である。ある異世界からやってきた少女が歪みつつある国を建て直して、新たなる希望の国を造り世界を救う。その時に苦の道を歩み続けた者が彼女を救い、その子孫達も世界を良くするために国を造るであろう。』

これもメモしたが『苦の道を歩み続けた者』というのは誰かは分からなかった。だが何かを示すと直感したのかその部分も漏らさず記入していたのである。

「竜太くん、お前の世界にいる助けたい子にそれを見せてやると良い。その記録はその子が世界を変えるきっかけになるじゃろう。」

「おじいちゃん……やっぱり“これ”は……」

「ああ。お前の世界から消えた『真実の古文書』じゃよ。竜太くんはこれを伝える義務があるからここに来たのだよ。」

「このことを知らない人は決して少なくない。事実を知ってもらうために世間に広めていきたい。」

竜太はそう語るとメモを続けていると老夫婦の夫は同じ本を持ってきた。

「竜太くん、メモは不要じゃ。ワシの増殖能力で本を増やした。この8冊は必ず竜太くんの世界で必要な情報だから必ず彼女に見せて研究家の人間にも委ねてほしい。」

「分かりました。必ずこの本を見せるべき人に渡します。ありがとうございます!!」

竜太はお礼を述べると男性は笑顔を彼に向けたのである。
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