ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第10章・団結に向けて

防衛隊長の正体①

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すると男性は突然自分の正体を語り始めたのである。

「僕の父の父方祖父はドーリンの東口(ひがしぐち)家、父方祖母はトルドマーク島のドライン支流村の渡連間(とれま)家、母方祖父は尚徳さんの住む地域から北の地域の音揃(おんぞろ)家、母方祖母はウェアー大陸の理小国(りおぐに)家の4つのルーツがあります。内、母方祖父のルーツは尚徳さんの住む場所から北の方の場所に曾祖母のルーツはあります。」

「北の方は人工島の空港のある地域だね。」

「そうですね。その場所になります。僕の弟……つまり東口家の7男の俊策(しゅんさく)は音揃家の曾祖父の養子になっています。元々弟は僕達の世界からも尚徳さんの世界に行く方法があまり知られていなかった頃に音揃家の地域内で生まれてずっと僕達の世界に行かずに育ってきていますから。曾祖父の母方が僕達の東口家とは違う音揃家と同じ国の別の東口家の方とも聞いてます。俊策は跡継ぎが不在の音揃家の当主になり、今は鉄道関係の仕事に就いています。」

「僕と同じ跡継ぎだったのですね。」

「ええ。僕は父方祖父が国会議員だったのでその政治の世界に向かうために東口家から出ることはありませんでした。今は防衛隊長を勤める27歳の若手、東口純一(ひがしぐち・じゅんいち)が僕です!!」

突然お互いに一人称が『私』から『僕』に変わったと思うと男性は自身の正体を尚徳に伝えたのである。東口は元々ドーリンの出身であったが弟の俊策は東口の世界に訪れたことはないという。

「そもそも父の話によると『お袋の親父(東口の曾祖父)は小さいときに洞窟に入ってそのまま異世界(東口達の出身の世界)に来てしまって困っていたらウェアー大陸の理小国家の人に家に案内されてそのまま養子に入ってそこの娘さんと結婚したらしい』と言うことです。」

この時、東口の父方祖母は一人娘であったために兄弟の多い父方祖父が養子入りも考えられたが祖母が『東口』姓を気に入り、家系的にも跡継ぎの必要が無かったのも幸いしてか祖母は東口家へとやって来たのだ。

「いつのまにか迷って(異世界(東口達の世界)に)やって来たのか。」

「はい。それから異世界を行き来できる方法を祖父は知ってから両親達に再会できたと聞きます。母の裕子(ゆうこ)は浜田京家出身でこちらは異世界にルーツはありません。」

意外と複雑な東口のルーツではあるが尚徳は関心を示していたのかしっかりと聞いていた。この頃、電車はいまだトンネルを走り続けていた。


東口家はドーリン地区でも名のある古い家柄で代々ヒナの世界でいう庄屋をつとめていたとのことで東口の父方叔母が日紙家に嫁入りしたために松浦や直露(現議員)とも親戚である。奥深い東口の家系に実は隠れ家系マニアの尚徳は興味深く話を聞いていたのである。
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