ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第10章・団結に向けて

防衛隊長の正体②

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尚徳は話を聞いていて立派な家庭に生まれた東口に少なからず敬意を示していた。だが東口は自分の人生に不満を感じていた。

「昔から好きなこともまともにできず楽しくない人生だった。防衛隊なんか命の危機にもさらされるのに親に入隊させられてたまったもんじゃない。ましてや隊長になればかなり危険な職務になる……27歳でこんな目に遭うとは……俊策が羨ましい……」

どうやら弟の俊策が羨ましいようである。尚徳は弟のこれまでを聞くと目を輝かせながら東口は語り始めた。

「あいつも最初は辛かったと思います。養父母が早く亡くなって大伯父ら親族に育てられたりしていたようですから。そして元々小さいときから鉄道好きで飽きないのかと思うほど長い時間線路で電車が走るのを眺めていたらしいです。」

「ほお……」

「学生時代は鉄道観察やら勉強やら野球やら何でも楽しんでいたみたいです。なんかめちゃくちゃ賢かったとか。そして過去に野球の全国大会に出たことあるとか……」

「野球の……あっ!高校野球の全国大会に出ていたTL学院の七番打者で一塁の子がそういや『音揃』っていう選手でしたが彼ですか?」

「そうです!その彼です。本人はたまたま怪我人がいたから出れたと言ってましたが楽しそうな人生だなと思いました。僕は彼と同じ年の頃は防衛関係の学校で訓練ばかりしていましたから……」

「それは大変だったね……それで彼はどういう経緯から鉄道会社に?」

「彼は大学時代は野球をやめて鉄道員を育成する特殊な大学に通っていたそうです。その時に友人に誘われて『社会国民党』だったかな……?そこの党に入って今も活動しているようですが、そこの党員の方が鉄道会社に就職されていたようでしてその方が会社に紹介してくださったのです。」

「おお……『社会国民党』は有名なリベラルな党だね。そこで活動しているのか……いつかは政治家になるかもしれませんね。話を聞く限りは人柄も純粋そうな弟さんみたいだね。」

「もしかしたらそうかもしれません。昨年親父と会いに行ったときにそのようなことを言ってましたね。」

俊策は後に鉄道ファンの女性と偶然出会って結ばれたのであったが彼女の兄が同じTL学院の野球部で親交があったためにすぐに家族ぐるみで交流が進んで晴れて結ばれたという。現在は二男一女の父親でもあるという。

「充実感が違いすぎます。僕はずっと重い空気のなかを生きてきた。元々俊策もプラスティア防衛隊に入る予定でしたが彼が争いを嫌うので結局入隊せず親の意向で僕一人が入隊したけど人生全然楽しくなかった…………今も楽しいどころかいつ死ぬか分からない状況です……僕も妻子はいるけど家族を残して死にたくない……」

「…………」

弟と比べると重すぎる人生の東口に尚徳はどう声をかけていいのか分からなかったのだ。
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