ヒナの国造り

第１１章・新たな武器と過酷な道のり

スーザックの村から

その頃、ゴーザから少し離れたスーザックでは周参見野一族がいた。この日は周参見野貴之(すさみの・たかゆき)と子の勇(いさむ)に孫娘のさくらと愛美(まなみ)が一族の集まりに初参加していたのである。尚、英寛や西村や俊策等はいつも通り健在である。

「おい、竜太さんが結婚したらしいぞ！」

「結婚して名字が変わろうと竜太氏は竜太氏だ。結局、竜太氏は東住吉の一族なのだ。」

俊策が報告をすると英寛は冷静に返したのである。確かに名字が変わろうと先祖が変わるわけではないからだ。

「それよりも竜太氏の仲間らしき女性がゴーザの方にいるらしいと聞く。」

「誰かに置き去りにされたようですね……」

「置き去りにしたのではない。俺がそのままある企みがあってその場に置いていったのだ。」

英寛と俊策がヒナのことに触れると西村は突然ヒナを置き去りにしたのは自分だと主張したのである。

「当然だ。それくらいしないと彼女の動きは読めなくなる。幸いゴーザ駅で居眠りしてくれていたから事がうまく運んだのだが…………」

どうやらヒナの動きを読むために廃校周辺に行動範囲を縛ったという。スーザック村に引き寄せるための計画だと西村はいう。

「時間が来れば彼女を迎えにいく。」

西村は四男の雄光(たけみつ)をつれてきて彼を『周参見野計画』の中心に据えるのである。

「雄光は賢く、計画を一度練ると非常に徹底して計画を描くので彼がシナリオを作れば間違いなく上手くいく！！」

「さすがだな。」

英寛は期待を寄せたがこれに苦言を出したのが周参見野貴之である。

「計画だけではなんでも上手くいくとは限らない。大胆にサプライズ的な要素のある計画も必要だ。」

だがなぜかここで計画は徹底して練るべきと主張する西村とサプライズも必要だと主張する貴之は口論を始めたのである。

「いやいや、計画はじっくり練るべきだ。」

「計画にはないサプライズな行動がなければいけない。」

「なぜ練らないのか？」

「練っても上手くいくとは限らないでしょう。」

「それはしっかりした計画ではないからだ。計画を上手く立てれば絶対成功する！！」

「それは確かに本当だ。だが状況に応じた動きの変更も必要だし、それがサプライズ的なものだとインパクトがある！！」

不毛な？争いは続いていたが、さすがに口論は途中で終わったのである。周参見野家の集まりは何を企んでいるか今は分からないが。