ヒナの国造り

第１４章・日常へ戻る時

解散……そして旅の一時の終焉①

アディーマホテル前……全員が外に出ていたのである。重傷のジェルと護は後程梅原が迎えに来ることとなる。

「皆様、本日はありがとうございました。」

「いよいよ……ですね。」

緊張をする皇帝に話しかけた竜太もまた緊張をしたのであった。

「ええ、私は今まで宮殿で発動させていましたから外の町でするのははじめてです。」

カラードバンの道の上では出雲達が車に荷物を乗せて店を畳んで解散に備えていた。

「いよいよだな…………」

出雲は呟いた。そして他の町や村でも解散に備えて騒がしくなっていた。

「わー、“解散”だぁ～っ！！」

ある海上では……

「せっかく苦労してここまで来たのに“解散”かよ！！チクショー！！」

ある海賊がせっかく順調だった旅の終わりを危惧してか苛立っていた。しかし……

「船長！！先程のホテルに“残留名簿”がありましてそこに私が皆の名前を記入いたしました！！」

「お前！！やるじゃないか！！ありがとう！！お前、これから副船長の次を任せる！！」

「は、ありがとうございます！！」

船長は部下を抱き締めて感謝をしたのである。この“残留名簿(ざんりゅうめいぼ)”とは“解散”してもその名簿に記入した場所に戻ることが出来るというものである。大体は遠い旅や険しい道を乗り越えた先で記入することが多い。しかしアディーマホテルにはそれは無い。

「これで皆と決別……つまり“サヨナラ”では無いよね……」

「サヨナラなんかじゃないさ……また来ることになるだろうよ。」

「ほんとかな……？」

「ああ、本当さ！！来世じゃない。必ず近いうちに会えるようになるさ！！」

「ありがとう！！」

別れが寂しいヒナは竜太の言葉を信じて胸を張って帰る覚悟を決めたのであった。どうやらヒナは解散となれば地元の世界に帰ることを薄々予想していたのである。

「竜太くん、直露くん……皆……ありがとう。」

「こちらこそありがとう！！また会おうね～！」

直露が再会を期待してくれていたのはヒナも分かったのである。するとルミはヒナに声をかけたのである。

「あなた、いつ異世界に戻りたい？」

「いつでも……」

「どこに最初に戻りたい？」

「個人的には……どこでも構いませんが。」

「なら……懐の石を私に貸してくれないかしら？」

「これですか？」

昔、ヒナが拾った石である。光る特殊な石であったがルミはその石を手に持つと口の近くに石を持ってきて何かを呟いたのである。

「ぶつぶつ……」

「？」

すると、石をすぐ返してきたのである。

「これであなたはまたこの世界に帰って来れるわ。」

「ありがとう……ございます……」

目が潤んだヒナにルミは言う。

「私達ともまた会おうね！姉にも再会を伝えておきますね！」

「はい、ありがとうございます！！」


そして皇帝の目の前に全員が整列した。いよいよその時である。

「では皆様、またお会いしましょう。では……」

「……」

「解散(ディソリューシャン)！！！」

ホテルの回りを白い光が囲み、ヒナの視界の中も光で真っ白に染まったのである。


気がつくとヒナはある家のベッドの上にいたのである。どこだろうと思った瞬間、ある人が部屋にやって来たのである。

「おかえり、ヒナちゃん！！」

「尚徳お父さん！！」

異世界で会った尚徳は本当の尚徳だったのだろうかとヒナは考えていたが、再会した尚徳に涙を流して抱きついたのである。

「ただいま……帰ってきました。」

「おかえり、ここは私の自宅だ。娘の部屋だったこの部屋は今日から君の部屋にするよ。ゆっくりしていってね……」

「うん、ありがとう！！」

二人は再会を喜び、ともに嬉し涙が流れていた。冒険を共にした光る謎の石は部屋の窓際に置かれていたのであった。