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第一章 彼氏の悩み
1話 変態なりの苦悩
しおりを挟む───おかしいよ。もっと触らせて欲しい。
ハヤト・ヤーノルドはくるくるとペンを回して、壁の掲示物を眺めた。とっくに覚えた生活魔法の念じ方とその効果の一覧を、はたから見れば熱心に頭に叩き込んでいるように見える程、真剣な顔をして睨みつける。
彼は納得いかないまま、悶々としている。
***
ようやく念願叶ってオリビアを自分の恋人に出来たというのに、2年の終わりのホウキレース大会で気持ちを確かめ合ったあの日以来、彼女の態度が付き合う前から変わってくれない。
以前も素っ気なかったが、普通、付き合い始めたらもう少し一緒にいるものじゃないのか?
オリビアは、僕の部屋にも来てくれない。デートすら行こうとしない。相変わらず放課後に、図書館で黙々と勉強しているだけだ。僕は、もっと彼女と一緒に過ごしたい。
きっと、あれのせいだ。彼女は僕と付き合いだしてから成績が落ちた。僕はたいして勉強しなくても常に首席だが、彼女は違う。
あの2位という輝かしい順位はしっかり勉強に励み、頭に叩き込んでこその結果だったのに、その時間を僕が奪い出してからはガクンと下がった。
確かに少し、邪魔をし過ぎた。図書館で勉強するオリビアに触るのを今までは我慢出来ていたが、もう遠慮しないと決めた。
誰もいない時に後ろから抱きついてみたり、横顔にキスをした。そうすると僕は止まらなくなるから、オリビアはその度に羽根ペンを置く羽目になる。何回か繰り返した結果10位にまで順位を落としたオリビアに物凄く怒られて、それ以来は勉強の邪魔がタブーとなった。彼女の目標は1位である僕を超えることなのだから、当然といえば当然だ。
思うに、彼女は基礎の理解が今ひとつ足りていないのだ。効率良くやれば、そんなに時間をかけなくても良い結果を残せるだろうに。僕がそれを指摘するとすぐにふてくされる。相変わらず僕はライバルらしい。勉強なら僕が教えるのに、彼女はやり方を変えない。
反対に実技はぐんぐん上達した。僕が横から口を出すからだ。オリビアは嫌がるけど話は聞こえているらしく、怒りながらもしっかり従うためだ。
そして上手くいくと、オリビアは大喜びする。見て、見てと楽しそうに繰り返す彼女は本当に可愛らしい。
ただし、教えたお礼を貰おうとすると怒られる。この間も、頬に一発熱いのをくらった。求めすぎだと言われたが、たかだかキスマークを2、3個貰うことの何が悪いのか。全く理解出来ない。10個欲しいところをまけてあげているんだ。しかも僕はどうでもいいが、オリビアは外ということをかなり嫌がっていた。気にしすぎだ。むしろ見せつけた方が楽しいじゃないか。
そういえばひとつだけ、変わった事がある。
僕がホウキの2人乗りが出来ると知ると、オリビアは目の色を変えた。
放課後、彼女の飛行訓練に付き合った後に、たまに後ろに彼女を乗せた。普段自分ではここまで高く飛べないから、景色が珍しいのだろう。僕の後ろで楽しそうにはしゃぐオリビアの声を聞くと、心の底から嬉しく思う。
しかし、それさえも長くやっているとだんだん悔しくなってくるようだから、あまりに技術を見せつけてしまうといけない。本当に難しい人だ。負けず嫌いな僕のオリビア。だがこれも惚れた弱みだ。そこが好きなのだから、仕方ない。
だけど……それだけじゃ足りない。もっとオリビアとイチャイチャしたい。僕の恋人なんだと、世界中に見せびらかしたい。いや、普通にデートへ行くだけでもいい…何より、もっと彼女の笑顔が見たい。
僕を放置した罪は重いよ…………オリビア。
ハヤトが不敵に微笑んだとき、彼の肩に手が置かれた。
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