放置した彼女は溺愛彼氏におしおきされたりする

プリオネ

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第二章 彼女の悩み

6話 忘れられた約束

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翌朝オリビアは、ハヤトのベッドの上でぼんやりしていた。体中が痛いが、目隠しと両手の拘束は外されている。時計を見ると、まだ朝の5時だった。

──昨日、ハヤトに襲われて…途中から記憶が無い…また気絶させられたんだ。

オリビアは、ハッとして布団をめくった。自分の体を見下ろすと、やはり赤い痣が大量についている。きっと、首の辺りも凄い事になっているだろう。鏡を見るのが怖い。

「あぁ……もう……」

ため息をつく。ハヤトはオリビアにキスマークを付けるのが好きだった。

(あれだけ見える所にマークをつけるのはやめてって言ってるのに…!)

自分が気を失っていれば何をしてもいいと思っているのかしら───オリビアは苛立ちを抑えられない。

ハヤトは部屋にいなかった。オリビアには分かっていた。彼は、毎朝ゴブリンのいる森へ狩りに行っている。そうやって強すぎる魔力を発散させないと、制御出来なくなると言っていた。

(ほんっと、変な人…!その魔力、私にも分けてくれないかしら)

ハヤトのベッドで横になる。今日も授業があるが、体がだるく動けない。

(ハヤトのせいで疲れてるんだからね!)

枕を抱き寄せて、ハヤトへの文句を言う。

彼に抱かれること自体は嫌いではない。しかし、ハヤトの行為はあまりにも激しいため、毎回疲れ果ててしまう。体力が持たないのだ。

(本当はハヤトとゆっくり話したりしてから、少しずつそういう雰囲気にしていきたいのに…!!)

それなのに、あの男は隙あらば襲ってくる。行為の最中にいくら抵抗しても、彼はそれをねじ伏せて強引に事を進める。
昨日だってそうだ。ハヤトのペースに乗せられて、めちゃくちゃにされてしまった。

(しかも!!ハヤトは自分を放置したおしおきだとか何とか言ってたけど、何が我慢よ……!我慢なんてした事ないじゃない!!)

「あんな人だと思………!!思わ………いえ、分かってたことだわ…」

オリビアは独り言ちる。
付き合う前からハヤトはオリビアに対して遠慮が無かった。後輩レイとの一件で怒られあれだけ落ち込んでいたのだから、少しは反省したと思っていたのだが、大誤算であった。

「あの時確かに約束したはずよね?これからは加減を覚えるって」

付き合ってからの登下校はもちろんのこと、昼食や休み時間まで、ハヤトは常にオリビアと一緒にいたがる。しかも、彼女が少しでも笑顔を見せたり優しく接すると、すぐに調子に乗ってベタベタしてくる。

周りに人がいればまだ良い方で、放課後の図書館で勉強する時は、必ず横から触ってくるから集中出来ない。誰もいないのをいい事に、いつの間にか服の中に手を入れて来るし、キスしようとする。
もちろんそんなことをされたら拒否するのだが、それをほったらかされたと勝手に勘違いして、ハヤトは更に激しく求めてくる。

「魔法を使うのもナシって言ってるのに…!!」

自分の才能を遺憾なく発揮して有利に事を進めるハヤトに勝てないのも悔しい。絶対、嫌がると分かっていてやっている。

そんな理由で、ハヤトには少し冷たくするぐらいで丁度良かった。

「そりゃあ、私もしょっちゅう図書館に行ってるのは申し訳ないけど…。常に一緒にいるじゃない!何が放置よ。もう2ヶ月経つんだから、ちょっとは落ち着いてよ!」

オリビアは枕に顔を埋めた。

「あのバカ!」

悪態をついていたその時、部屋の扉が開いた。

「あ、起きたんだね。おはよう」

ハヤトが部屋に入って来て、驚いて起き上がった。

「お、おはよう…」

ふぅ、とハヤトが疲れたようにベッドにどっかりと座った。

「今日は5匹だったよ」

("匹"って…まるで小動物でも数えているみたいに……)

「……お疲れ様」

「どうしたの?」

「別に…」

オリビアはプイッと顔を背けた。

「ゆうべの事、怒ってるのかい?」

「………ええ」

実はゴブリンを容易く倒せる事への嫉妬も含まれているとは言えない。

「ごめん。だって…君が全然させてくれないから」

「あのね、何回も言ってるけど、毎日は無理なの。あなたは少し、加減を覚えた方がいいって言ったじゃない」

「忘れたよそんな事」

「…………」

謝りつつも開き直るハヤトに拳を握りしめていると、彼は急に弱々しい声を出した。

「君がいつも冷たいから、僕から離れてしまうんじゃないかと思うと、寂しくて…」

──もう、仕方ないわね。

ハヤトの不安げな表情に、オリビアは眉を下げて笑った。いつも自信満々な態度のハヤトだが、自分の事となると心配性になるようだ。

「大丈夫よ。離れないから、少しは安心してちょうだい」

「ああ……!」

ハヤトは途端に嬉しそうに顔を明るくさせた。

「あぁ……やっぱり君は優しいな」

オリビアに近づき、抱きつく。オリビアも抱き締め返そうとしたが、ハヤトの雰囲気がおかしい事に気が付いた。優しい抱擁ではなく、細身だが引き締まった体で自分を力強く包み込んでいく。

「ちょっと……」

「大好きだよ」

「だからすぐそうなるのを……んっ!」

文句を言おうとすると頬に手を添えられ、口づけで黙らせられる。

「オリビア……なんでまだ服着てないの?」

「えっ……」

そういえば、今この体を隠しているのは薄い毛布だけだ。

(しまった…………!!!)

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