放置した彼女は溺愛彼氏におしおきされたりする

プリオネ

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番外編「おいで、妖精さん」(※)

3話 弱点みいつけた

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あれ?と思ったのもつかの間、ハヤトはすぐに見つかった。
この広い教室の後ろの方にいる。何故か壁にもたれ掛かり、腕を組んでいる。妖精たちをはべらせるどころか、彼の周りには一人として見えない。

「何してるの?」

他の皆は教室中を動き回り、それぞれ狙いを定めて妖精と向き合っているというのに。

「え?いや、何でもないんだ…気にしないでくれ」

私が話しかけても、こちらを見ない。教室中を飛び回る妖精たちから目を離さない。

「…?ねぇ、見て見て。1人と仲良くなれたのよ。可愛い子でしょ」

「あ、ああ、良かったね」

ハヤトは見もしないで言った。背中と頭をぴったりと壁に押し当てて妖精たちの動きを伺っている。その表情はどこか、緊張している様に見えた。もしかして…背後を取られないようにしてる?

まさかね。学年一の天才と呼ばれるハヤトが。喧嘩も強いこの人が。いつもニヤニヤ、自信満々の魔法使いさんが。

「どうしたのよ?ハヤトもしかして、妖精がにが…」

私が冗談を言おうとしたその時、ハヤトの頭上からふわりと1人の妖精が飛んできて、彼の頬をツンとつついた。

「うわっ!」

驚いた彼は反射的に手を払い除ける。彼女はそれをひらりとかわして、どこかへ飛んで行った。

「…………………」

沈黙が流れる。彼は顔をしかめて目を瞑り、頭をかきむしった。

「……ハヤト…あの…」

「……聞かないでくれ」

よっぽど恥ずかしいのか、未だに目を合わせてくれない。

「…ふぅん…」
 
私は全てを悟った。いけない事だとは分かっている。こらえなければ。だけど私は、ニヤける口元を抑えきれない。いつもの余裕たっぷりな態度はどこへ行ったのかしらね。

「へぇ、ハヤト、妖精が苦手なの…こんなに可愛いのに…」

そう言って、私は手の上でくつろぐ妖精をハヤトに近付けた。

「うっ…!オ、オリビア、頼むから止めてくれないか」

情けない声を出して壁に張り付く。こんな姿、普段の彼からは想像もつかない。
私の胸にゾクゾクと何かの感情が沸いた。

「妖精さん、この人は私の大事な大事な人だから、イタズラしちゃダメよ。そうね…くすぐるぐらいにしておいてね」

「!?ちょっと待ってくれオリビア!」

私の言葉を理解したかのように、妖精は彼の元へ飛んで行った。

「っ……!」

小さな手が、彼の首筋をくすぐり始める。

「ハヤト、私のお友達を振り払ったりしないでね?」

「くっ……」

「ふふ…」

ハヤトは苦悶の表情でこわばる。誰よりも背が高いのに、こんなに小さな妖精の攻撃に必死に耐えてる姿が面白くて、つい笑ってしまった。あのハヤトに怖いものがあるなんて。可愛い…いつもはおちょくられる側なのに、今は私が彼を翻弄している。魔法学の授業がこんなに楽しいのは、いつ振りだろうか。

「はい、そろそろおしまい。ハヤトも頑張らないと、評価貰えないわよ」

妖精を肩に呼び寄せると、ハヤトはホッとしたように額の汗を拭った。

「…初めて君のことが憎くなったよ」

「えへへ、ごめんね。ハヤトも可愛いところあるのね」

「勘弁してくれ」

ぷいっとそっぽを向いてしまった。ちょっといじめ過ぎたかな。

そこで先生から終わりの合図が出た。なんと、しっかり手懐けられたのは私1人だったみたいだ。ハヤトを差し置いて、私が1位。信じられない。今日はなんて素晴らしい日なんだろう!

私の気分は最高潮に達した。ハヤトが転校してきて以来の喜びだった。


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