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[告白まで編]
12話 挫折の直前
しおりを挟む日中は特に変わった様子は無いが、放課後の図書館にハヤトが現れることが無くなった。
あまりにも突然なので、オリビアはハヤトに理由を聞きたくなったが、直接聞く勇気は出ない。
(……まぁ、別に来て欲しい訳じゃないし、いいか)
オリビアは、そう自分に言い聞かせた。
***
クリスマス直前に、オリビアに試験結果が届いた。結果は、やはり2位。普通なら喜ばしい事だが、オリビアは落胆した。周りの生徒は、もう成績の事は忘れてクリスマスの話題で盛り上がっている。
テスト前に、風の噂を聞いた。ハヤトに彼女が出来たみたいだった。これでようやく納得がいく。ハヤトが来なくなった理由は、自分に興味が無くなったからだろう。
しかし、オリビアは思う。あの日々はなんだったのだ、と。ハヤトに心を許し始めた時だっただけに、オリビアは心に傷をつけた。
──私だけが振り回されて、バカみたいね。元々彼は遊び人だって噂だし。やっぱり、私もからかわれてただけなのね。そもそも自分のライバルな訳だし、本気で好きになる前で良かった………
オリビアはそう思い勉強に励んでいたが、今回のテストでも、結局ハヤトには勝てなかったのだった。
クリスマスの過ごし方も、オリビアは悩んでいた。パーティーにも誘われたが、そういった場所は苦手なので断った。じゃあ、どうしよう。恋人もいないし、だったらやっぱり、図書館で勉強するか。
「…私らしいな」
オリビアは自分に呆れながら、マフラーを巻き直した。
今年のクリスマス・イヴは、休日だ。オリビアは昼からやってきたというのに、図書館には誰もいなかった。皆、それぞれ華やかにクリスマスを楽しんでいるのだろう。それでも読書テーブルの目の前には、大きなクリスマスツリーが飾られていた。
この時間は司書もいるはずだが、「ご用がある方は電話を鳴らしてください」と書かれたメモがカウンターに貼ってある。なるほど、司書までもクリスマス休暇という訳だ。
オリビアはツリーを見上げていた。雪だるまの形をした飾りもある。よく見ると、その隣では、小さなサンタクロースとトナカイもいた。
「可愛いなぁ。どこにプレゼントを届けるのかしら」
オリビアは1人呟き、窓際の席へ座る。今日は寒かった。この様子だと、夕方には雪が降るだろう。
さっそく、勉強道具を広げた。しかし、すぐにグレーの羽根ペンを置く。集中出来ない。
あの、ツリーのせいだ。先程までうっとり見上げていたが、すぐに憎くなる。あんなに綺麗に輝いて主張なんかしているから、今日が何の日か嫌でも思い出すんだ。テストも終わったばかりだというのに、私はこんな日にまで、一体何をしているんだろう。ここまで頑張って、果たして結果は出るのだろうか────順位表ではもう見慣れた数字の「2」が、オリビアに無駄だと叫んでいるようだった。
憎きライバル、ハヤトは今ごろ彼女とデートだろう。きっと楽しげにしているに違いない。オリビアは悔しく思ったが、羨ましくもあった。
「いいなぁ………………………?」
──羨ましい?何が。彼女と遊ぶハヤトが?それとも、ハヤトと過ごす彼女が…………?
オリビアは、自分に問いかけたが、答えは分からなかった。
なんとか気を取り直して、ペンを持つ。
(この羽根ペンも大分使ったなぁ…)
また思考がどうでもいい事に逸れる。
少しずつ勉強する手が進み始めたその時、背後で物音が聞こえた。ドアの方だ。誰かが複数人、入ってきたようだ。
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