新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~

ネコ軍団

文字の大きさ
188 / 303
第3章 灼熱の砂海を渡る一輪の花

第188話 都合の良い話はない

しおりを挟む
「シーだよ。オリビアちゃん」
「コク。わかった」

 口に指を当て静かにするように小声で指示をするキティルにオリビアはうなずく。腰をかがめた二人の視線の先には燃え盛るファイアウォールの炎が見えていた。ロックに気づかれないように二人はファイアウォールに近づいていた。二人の後ろには同じように身をかがめてあるく巨大な炎の魔人が続く。
 グレゴリウスをロックから解放しようと四人は行動を開始していた。

「あははは…… 近づいてから呼べばよかったかな」

 巨大を揺らしてファイアウォールに近づく、炎の魔人を見て苦笑いをするキティルだった。

「大丈夫。君のファイアウォールは強力だ。外から影響を受けない代わりに中から外の様子はわからない」
「そっか…… ありがとう。よし行こう!」
「あぁ」

 笑顔で炎の壁を指して進むキティルにオリビアと炎の魔人が続く。壁の手前までくるとキティルは振り向いた。

「もうちょっと…… 右みたい」

 振り向いたキティルが小声でつぶやく。彼女の視線先には二十メートルほど後方に立って手で指示を送るクロースが立って居た。クロースの横には矢を口に咥えたメルダが下を向いて弓の弦を確かめていた。

「あそこでよろしいですか?」
「うん!?」

 顔を上げたメルダが右目をつむり左目だけでファイアウォールを見た。クロースの目が紫に光り色が抜けた視界に紫のフィルターがかかった。ファイアウォールの中にいるロックはグレゴリウスの座らせ彼の首に剣を突きつけていた。右手に持つ剣が逆転しない様子からメルダたちは二人の背後に回り込んでいるのが分かった。

「大丈夫…… 準備するから待って」
「かしこまりました」

 うなずいたクロースはメルダに頭を上げると前を向いた。両手を前にだしてキティルとオリビアに待機するように指示をだした。
 メルダは矢をセットしなち状態の弓を確かめるように弦を引いて構えた。彼女は緊張しているのか普段と違い弦を持つ手が震えている。

「ふぅ……」

 不安を打ち消すように息を吐くメルダだった。彼女の背後にそっとクロースが近づいて来た。

「大丈夫ですわ…… あなたの力を信じて」
「えっ!? えぇ。ありがとう……」

 弦を引く右手の上にそっとクロースは手を置いて声をかける。振り向いてメルダにほほ笑むクロースの顔が見えた。彼女の顔を見たメルダからスッと緊張が消えていく。メルダは恥ずかしそうに頬を赤くして顔をした向けクロースから背けて礼を言うのだった。

「もう大丈夫。行くわよ」
「はい。かしこまりましたわ」

 顔を上げたメルダが真剣な表情でクロースに口を開いた。クロースは彼女の右手から手を離し笑顔でうなずき少し離れるとキティル達に両手を振って合図を送った。メルダは咥えていた矢を持ってつがえた。

「はい。これでちょっとの間だけ炎の影響を受けないよ」
「悪いな」

 オリビアの両手にキティルが炎の加護を付与できる薬を塗った。オリビアとキティルは立ち上がった、オリビアは炎の魔人とその場に残りキティルは下がっていく。
 振り向くオリビアは視線をクロースへと向けた。クロースは彼女の横に居るメルダへ視線を向ける。矢をセットした弓の弦を引いて構えたメルダが大きくうなずいた。
 クロースは右手をあげると勢いよく振り下ろす。

「行くぞ」
「お願いね」

 オリビアの声のキティルが答える。直後に炎の魔人とオリビアは両手をファイアウォールと突っ込んだ。燃え盛る炎のなかじりじりとオリビアに炎が照り付ける。彼女は手探りでファイアウオール内の金属の棒を両手でつかんだ。顔を炎の魔人へと向けた。

「せーの!!!」
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 必死な形相で両腕を引っ張ってファイアウォールをこじ開ける炎の魔人とオリビアだった。ファイアウォールの一部が縦に数十センチほど亀裂のように開いた。
 メルダはパッと目を大きく見開いた。彼女の視界の先は自身に背中を向けたロックの姿が見えた。息を止めメルダが全身に力を込めると、わずかに揺れていた弓が止まる彼女は目を大きく見開いた。

「今!!!!」

 叫ぶと同時にメルダは矢を放つ。弓から放たれた矢が一直線にロックへと向かって行く。オリビアと炎の魔人は苦しそうに顔を歪ませながらファイアウォールの穴を左右から必死に押さえていた。

「ダメだ……」
 
 二人の手が離れてしまった。こじ開けたが穴が一気に戻っていく……

「うん!? なっ!?」

 異様な気配を察したロックが振り向いた。彼は振り向くと同時に左手を前に突き出した。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ロックの叫び声が部屋に響いた。同時にファイアウォールが上からかき消されていく。ファイアウォールがなくなるとうずくまるロックと座ったまま彼を呆然と見つめるグレゴリウスが立っていた。ロックの剣は床に転がり彼は右手で左肘の辺りを押さえてうずくまっていた。

「ああああああああああああああ!!!!!!!!!! わっ私の腕が!!!! 腕ガアアアアアアアアア!!!!」

 顔をあげて声をあげるロックだった。彼の左腕の手首と肘のちょうど間をメルダの矢が貫いていた。矢の穴から亀裂が広がりひび割れていく。
 メルダの矢はロックの心臓を捉えていた。振り向いたロックはとっさに左腕を前にだし矢の直撃を避けたのだ。

「クソ!!! このままで!!!!」

 右手を伸ばし剣を拾い立ち上がるロックだった。視線をグレゴリウスに向け彼を睨みつけた。ロックの残された手段はもう一つだけだ。この窮地を脱するには近くにいる弱気料理人を再度人質にとることだけだった。しかし……

「おっと!!! 私の大事な旦那様に手を触れないでくれるか!」

 ロックの背後から猛スピードでオリビアが駆けてきていた。彼女は途中で背負っていたメイスを引き抜いており、ロックに近づくと地面を這わせるようにして彼の両足を左から払う。

「うわああああ!!!」

 足を払われ横に回転しながら倒れるロック、倒れた衝撃でまた彼の剣が地面へと転がった。オリビアは素早くロックに近づき頭の横でメイスを背中まで振り上げた。

「やめろ!!! 僕が悪かった!! 降伏する!!! だから!!!」
「もう遅い!!! 君は排除だ…… 永遠にな!!

 メイスを振り上げ自分を見下ろすオリビアに必死に命乞いをするロックだった。オリビアは彼を睨みつけメイスを振り下ろした。鋭く伸びてくるメイスは的確にロックの顔を捉えた。

「ヤメロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!! ブギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 グチャっという音と共にロックの頭が破裂し血が吹き飛ぶ。グレゴリウスは目をつむり顔を背けるのだった。帝国第三統合軍副司令官ロック上級中尉はここに散ったのだった。
 オリビアはメイスから両手を離しすぐにグレゴリウスの元に行きしゃがんで声をかける。

「グレ!? 怪我は?」
「大丈夫…… ありがとう。オッちゃん」
「よかった」

 目に涙を浮かべたオリビアは最愛の夫であるグレゴリウスを強く抱きしめる。キティルはその様子を見てホッと撫で下ろした。彼女は振り向いて的確な仕事をこなした相棒に労いの声をかける。

「やったね。メルダ」

 笑いながら両手を振るキティルにメルダは恥ずかしそうに右手をあげて答えた。彼女は弓をしまって視線を下に向け自身の両手を拳を握って見つめる。

「これであたしも特殊能力を……」
「あら!? そんな都合よくありませんわよ」
「へっ!?」

 驚いて振り向いたメルダにクロースはあきれた顔で答える。

蒼眼の発掘人ブルーアイズスカウトの効果で今回は一回だけお試しで特殊能力が使えたんですのよ。だからあなたはまだは使えませんわ」
「えっ!? ちょっと! 何よそれ!!!」
「当たり前ですわよ。特殊能力が開花するには努力だけじゃダメですからね」

 背伸びをしたクロースは指を立てメルダの鼻を軽く押してウィンクをした。

「そんな…… はあああ」
「うふふふ。精進なさいなさい」

 がっくりと肩を落として息を吐くメルダにクロースは優しくほほ笑むのだった。ふとクロースは顔をあげ心配そうに上を向いた。寂しく静かな薄暗くかすかに見せる石造りの天井は黒ずんていた。

「後は…… クレア…… あなた達ですわよ」

 クロースは天井に向けてつぶやくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...