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第3章 灼熱の砂海を渡る一輪の花
第196話 もう一つの鉄槌
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「とにかく! 待って下さい!」
必死な様子のティラミスが自身の机から身を乗り出している。ここはサンドロックの冒険者ギルドにある彼女の執務室だ。
机の前にはアーラ、グレン、クレアの三人が並んでいる。アーラが彼女をなだめるように声をかける。
「ティラミス様…… お気持ちはわかりますがこの混乱の責任は彼にあります」
「わかってます! だからまずは話をしないと! お願いします」
右手をアーラの前に出して必死に懇願するティラミスだった。黙ったまま二人の様子を見ているグレンの横でクレアが淡々と机の上に置かれた書類を指して口を開く。
「鎧の不正利用への加担に…… 資金提供…… 暴力行為の黙認…… 全ての証拠がそろってます。排除しても問題はないと思いますが」
淡々と話すクレアをジッと見つめるティラミスだった。
「でっでも…… レリウス司祭はそんなこと…… きっと事情が……」
声を震わせて首を横に振るティラミスの顔は今にも泣きそうである。四人はサンドロックの行政官であるレリウスに”天使の涙”を実行するか議論をしていた。ティラミス以外はレリウスの排除に賛成であり、彼女は必死に三人を説得しようとしていた。
食い下がるティラミスにクレアは静かに口を開く。
「おそらく本国からの圧力があったのでしょう。事情はわかりますが…… ここはノウレッジで彼は司祭という立場です。許される行為ではありません」
アーラとグレンが小さくうなずいた。ティラミスはうつむき泣きそうになりながら必死に考えていた。レリウス司祭はティラミスがノウレッジに配属された頃に面倒を見ており、右も左もわからなかった彼女は彼にすごく助けられた。ティラミスはレリウス司祭を慕っており、彼が過酷なサンドロックへ派遣されて際には志願してついて来たほどだった。
「それでも…… 私は…… えっ!? どうぞ!」
顔を上げ涙を流して何かを言おうとしたティラミスだったが、扉をノックする音で彼女の言葉は遮られた。ティラミスは話を止め涙をぬぐって扉の外へ声をかけた。三人の視線は扉へと向けられた。
「タミーです。申し訳ありません。今…… レリウス司祭がいらしてまして…… ギルドマスターに会わせてほしいと」
「えっ!? わっわかりました。すぐに通してください」
執務室の扉を開けタミーがレリウス司祭の訪問を告げた。タミーはティラミスの返事を聞いて扉を閉めた。クレアとグレンは顔を見合せた。
「命乞いか……」
「でしょうね…… アランドロが行方不明になったと伝わっている頃でしょうし」
「さすが帝国の貴族さんだな……」
二人はレリウス司祭が自分達の動きを察して命乞いに来たと考えていた。しばらくして扉が開く。扉を開けたタミーの横に穏やかな表情のレリウス司祭が立っていた。
「では私はこれで……」
「ありがとう」
タミーに優しくほほ笑み頭を下げるレリウス司祭だった。扉が閉じられると彼はゆっくりと四人の元へと歩き出す。
「いいですか? 私がお話をします。皆さんは席を外して……」
「構いませんよ。そのままで」
三人を外そうとするティラミスをレリウス司祭は止めた。クレア、グレン、アーラの三人はティラミスの机の横に壁を背にして並ぶ。机の前に来たレリウス司祭は深々とティラミスに頭を下げた。
「レリウス司祭様……」
顔を上げたレリウス司祭はニコッとほほ笑みティラミスに右手をあげた。横を向き並ぶ三人にも彼は微笑んだ。
「アーラさん…… それにこちらはテオドールの冒険者支援課のクレアさんにグレン君だね。私はレリウス。主よりサンドロックの行政官を任されています」
「クレアです」
「グレンだ」
レリウス司祭はクレアとグレンにも頭を下げた。
「さすがキーセン…… 良い人物を雇っている…… 私にも君達が…… いればな」
顔をあげ二人を見たレリウス司祭は優しい笑顔のまま口を開いた。二人はまっすぐ前を見て彼の言葉には反応しなかった。
レリウス司祭はアーラに頭を下げるとティラミスに顔を向け自分の胸に手を置いた。
「帝国第三統合軍による事件の責任は全て私にある。どんな処分も甘んじて受ける」
「そっそんな……」
まっすぐティラミスを見て自らの罪を認めるレリウス司祭だった。クレアとグレンは彼が命乞いに来たと思っていたため驚いた顔をしていた。
ティラミスは慌てて彼を問いただす。
「レリウス司祭様は帝国からの命令でしょうがなかったんですよね?」
「あぁ。私は陛下の臣下として彼らに協力した」
「だったらあなたは…… だって帝国にはあなたの家族が……」
全てを帝国の責任にし、レリウス司祭を救おうとするティラミスだったが、彼は首を横に振って否定する。
「どんな理由があろうと主に仕え政を任された以上、全ての責任は私にあります。だから処罰を受ける必要があります」
「そんな……」
口に手を当て悲し気に瞳を潤ませるティラミスだった。レリウス司祭は心配そうに彼女を見て静かに視線を横に向けた。
「ただ……」
レリウス司祭はクレアをグレンに顔を向け頭を下げた。
「ノウレッジ大陸の玄関口であるテオドール管理する冒険者ギルドに一つお願いしたい」
頭を下げたまま二人に頼みがあるというレリウス司祭だった。二人は真剣な表情で彼を見つめていた。ゆっくりと顔をあげレリウス司祭は右手を胸に当て話を続ける。
「アランドロと私が行ったことは帝国民のあずかり知らぬことであり。彼らに責任はない。全責任は私とアランドロにある。移住してくる帝国民が不当な扱いを受けぬように最大限にご配慮を賜りますようお願いいたします」
再び頭を下げるレリウス司祭だった。彼がここに目的はノウレッジへと移住してくる帝国民が、不当な扱いされぬように自身の責任を果たすことであり命乞いではなかった。
「レリウス司祭様……」
両手を口を涙を流すティラミスだった。クレアはレリウス司祭の前に立って肩に手を置いた。顔をあげクレアの方を向くレリウス司祭に彼女は微笑む。
「わかりました。テオドールの全ての冒険者ギルドの職員に徹底させるようにします」
「ありがとう…… これで私の行政官としての責務は終わりだ」
クレアの言葉にすがすがしい表情をするレリウス司祭だった。アーラはそんな彼を見て首をかしげる。
「それはどうでしょうか…… ねぇ? クレアさん」
「そうですね……」
「えっ!?」
にっこりと微笑みアーラはクレアに話を振った。考え込むクレアにティラミスは驚いた顔をする。
「あなたの処分はフィーリア様に任せます…… 我々が手を下すべき人ではないようです。良いですね? グレン君。アーラさん」
「そうだな……」
「わたくしもそう思います」
うなずいて返事をするグレンとアーラだった。クレアはティラミスへ顔を向けた。クレアは”天使の涙”の執行をせず、処分は教会を束ねる聖女フィーリアへ委ねることになった。これでレリウス司祭がノウレッジから排除される可能性はほぼなくなった。
「では、お手数ですがティラミスさん。聖都へ連絡と報告をお願いします」
「はっはい! 任せてください」
クレアから話を受けたティラミスは涙を流しながら嬉しそうに胸を叩いた。彼女は書類に向かっていつになくやる気になっていた。
「感謝する……」
驚いていたレリウス司祭だったがティラミスの様子を見て我に返り、クレアに礼を言って右手を差し出した。しかし…… クレアは握手をせずに首を横に振って静かにつぶやく。
「ガルバルディアの人があなたのような方ばかりならよかったのに……」
「……」
まっすぐにレリウス司祭を見つめ静かにつぶやくクレアだった。レリウス司祭は黙って彼女に頭を下げた。グレンがそっとクレアの肩に手を置いた。
「ねっ義姉ちゃん……」
「行きましょう。グレン君。皆が待ってますよ」
「あぁ。そうだな。おっおい!? じゃあまたな!」
クレアはレリウス司祭とアーラとティラミスに、右手を上げると肩に置かれたグレンの左手を掴んで引っ張って去っていく。グレンは引っ張らながら振り返りアーラ達に右手を上げるのだった。
必死な様子のティラミスが自身の机から身を乗り出している。ここはサンドロックの冒険者ギルドにある彼女の執務室だ。
机の前にはアーラ、グレン、クレアの三人が並んでいる。アーラが彼女をなだめるように声をかける。
「ティラミス様…… お気持ちはわかりますがこの混乱の責任は彼にあります」
「わかってます! だからまずは話をしないと! お願いします」
右手をアーラの前に出して必死に懇願するティラミスだった。黙ったまま二人の様子を見ているグレンの横でクレアが淡々と机の上に置かれた書類を指して口を開く。
「鎧の不正利用への加担に…… 資金提供…… 暴力行為の黙認…… 全ての証拠がそろってます。排除しても問題はないと思いますが」
淡々と話すクレアをジッと見つめるティラミスだった。
「でっでも…… レリウス司祭はそんなこと…… きっと事情が……」
声を震わせて首を横に振るティラミスの顔は今にも泣きそうである。四人はサンドロックの行政官であるレリウスに”天使の涙”を実行するか議論をしていた。ティラミス以外はレリウスの排除に賛成であり、彼女は必死に三人を説得しようとしていた。
食い下がるティラミスにクレアは静かに口を開く。
「おそらく本国からの圧力があったのでしょう。事情はわかりますが…… ここはノウレッジで彼は司祭という立場です。許される行為ではありません」
アーラとグレンが小さくうなずいた。ティラミスはうつむき泣きそうになりながら必死に考えていた。レリウス司祭はティラミスがノウレッジに配属された頃に面倒を見ており、右も左もわからなかった彼女は彼にすごく助けられた。ティラミスはレリウス司祭を慕っており、彼が過酷なサンドロックへ派遣されて際には志願してついて来たほどだった。
「それでも…… 私は…… えっ!? どうぞ!」
顔を上げ涙を流して何かを言おうとしたティラミスだったが、扉をノックする音で彼女の言葉は遮られた。ティラミスは話を止め涙をぬぐって扉の外へ声をかけた。三人の視線は扉へと向けられた。
「タミーです。申し訳ありません。今…… レリウス司祭がいらしてまして…… ギルドマスターに会わせてほしいと」
「えっ!? わっわかりました。すぐに通してください」
執務室の扉を開けタミーがレリウス司祭の訪問を告げた。タミーはティラミスの返事を聞いて扉を閉めた。クレアとグレンは顔を見合せた。
「命乞いか……」
「でしょうね…… アランドロが行方不明になったと伝わっている頃でしょうし」
「さすが帝国の貴族さんだな……」
二人はレリウス司祭が自分達の動きを察して命乞いに来たと考えていた。しばらくして扉が開く。扉を開けたタミーの横に穏やかな表情のレリウス司祭が立っていた。
「では私はこれで……」
「ありがとう」
タミーに優しくほほ笑み頭を下げるレリウス司祭だった。扉が閉じられると彼はゆっくりと四人の元へと歩き出す。
「いいですか? 私がお話をします。皆さんは席を外して……」
「構いませんよ。そのままで」
三人を外そうとするティラミスをレリウス司祭は止めた。クレア、グレン、アーラの三人はティラミスの机の横に壁を背にして並ぶ。机の前に来たレリウス司祭は深々とティラミスに頭を下げた。
「レリウス司祭様……」
顔を上げたレリウス司祭はニコッとほほ笑みティラミスに右手をあげた。横を向き並ぶ三人にも彼は微笑んだ。
「アーラさん…… それにこちらはテオドールの冒険者支援課のクレアさんにグレン君だね。私はレリウス。主よりサンドロックの行政官を任されています」
「クレアです」
「グレンだ」
レリウス司祭はクレアとグレンにも頭を下げた。
「さすがキーセン…… 良い人物を雇っている…… 私にも君達が…… いればな」
顔をあげ二人を見たレリウス司祭は優しい笑顔のまま口を開いた。二人はまっすぐ前を見て彼の言葉には反応しなかった。
レリウス司祭はアーラに頭を下げるとティラミスに顔を向け自分の胸に手を置いた。
「帝国第三統合軍による事件の責任は全て私にある。どんな処分も甘んじて受ける」
「そっそんな……」
まっすぐティラミスを見て自らの罪を認めるレリウス司祭だった。クレアとグレンは彼が命乞いに来たと思っていたため驚いた顔をしていた。
ティラミスは慌てて彼を問いただす。
「レリウス司祭様は帝国からの命令でしょうがなかったんですよね?」
「あぁ。私は陛下の臣下として彼らに協力した」
「だったらあなたは…… だって帝国にはあなたの家族が……」
全てを帝国の責任にし、レリウス司祭を救おうとするティラミスだったが、彼は首を横に振って否定する。
「どんな理由があろうと主に仕え政を任された以上、全ての責任は私にあります。だから処罰を受ける必要があります」
「そんな……」
口に手を当て悲し気に瞳を潤ませるティラミスだった。レリウス司祭は心配そうに彼女を見て静かに視線を横に向けた。
「ただ……」
レリウス司祭はクレアをグレンに顔を向け頭を下げた。
「ノウレッジ大陸の玄関口であるテオドール管理する冒険者ギルドに一つお願いしたい」
頭を下げたまま二人に頼みがあるというレリウス司祭だった。二人は真剣な表情で彼を見つめていた。ゆっくりと顔をあげレリウス司祭は右手を胸に当て話を続ける。
「アランドロと私が行ったことは帝国民のあずかり知らぬことであり。彼らに責任はない。全責任は私とアランドロにある。移住してくる帝国民が不当な扱いを受けぬように最大限にご配慮を賜りますようお願いいたします」
再び頭を下げるレリウス司祭だった。彼がここに目的はノウレッジへと移住してくる帝国民が、不当な扱いされぬように自身の責任を果たすことであり命乞いではなかった。
「レリウス司祭様……」
両手を口を涙を流すティラミスだった。クレアはレリウス司祭の前に立って肩に手を置いた。顔をあげクレアの方を向くレリウス司祭に彼女は微笑む。
「わかりました。テオドールの全ての冒険者ギルドの職員に徹底させるようにします」
「ありがとう…… これで私の行政官としての責務は終わりだ」
クレアの言葉にすがすがしい表情をするレリウス司祭だった。アーラはそんな彼を見て首をかしげる。
「それはどうでしょうか…… ねぇ? クレアさん」
「そうですね……」
「えっ!?」
にっこりと微笑みアーラはクレアに話を振った。考え込むクレアにティラミスは驚いた顔をする。
「あなたの処分はフィーリア様に任せます…… 我々が手を下すべき人ではないようです。良いですね? グレン君。アーラさん」
「そうだな……」
「わたくしもそう思います」
うなずいて返事をするグレンとアーラだった。クレアはティラミスへ顔を向けた。クレアは”天使の涙”の執行をせず、処分は教会を束ねる聖女フィーリアへ委ねることになった。これでレリウス司祭がノウレッジから排除される可能性はほぼなくなった。
「では、お手数ですがティラミスさん。聖都へ連絡と報告をお願いします」
「はっはい! 任せてください」
クレアから話を受けたティラミスは涙を流しながら嬉しそうに胸を叩いた。彼女は書類に向かっていつになくやる気になっていた。
「感謝する……」
驚いていたレリウス司祭だったがティラミスの様子を見て我に返り、クレアに礼を言って右手を差し出した。しかし…… クレアは握手をせずに首を横に振って静かにつぶやく。
「ガルバルディアの人があなたのような方ばかりならよかったのに……」
「……」
まっすぐにレリウス司祭を見つめ静かにつぶやくクレアだった。レリウス司祭は黙って彼女に頭を下げた。グレンがそっとクレアの肩に手を置いた。
「ねっ義姉ちゃん……」
「行きましょう。グレン君。皆が待ってますよ」
「あぁ。そうだな。おっおい!? じゃあまたな!」
クレアはレリウス司祭とアーラとティラミスに、右手を上げると肩に置かれたグレンの左手を掴んで引っ張って去っていく。グレンは引っ張らながら振り返りアーラ達に右手を上げるのだった。
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