新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~

ネコ軍団

文字の大きさ
278 / 303
第4章 深い森に迷う二人の姉

第278話 早く帰れば

しおりを挟む
 壁の前にいたクレアは右腕の袖で壁のゴミを払った。埃の中から壁に描かれた絵が出て来た。壁に描かれた絵は炎の下に巨大な森の絵があり、横にはドラゴンのような生物が描かれていた。

「なんだろうな…… これ?」
「さぁ。わかりません。絵の横に文字が書かれていますね」

 絵を指すクレアだった。森や炎の絵の下には古代文明の文字が書かれていた。グレンは彼女が指す文字を見て小さくうなずいた。

「やっぱりキティルを連れてくるしかないか」
「ですね」
 
 二人は遺跡にキティルを連れてくることにした。振り向いて部屋全体を眺めたクレアは入り口を指さした。

「一旦戻ってジャスミンさん達と合流しましょう」
「わかった……」

 歩き出そうとするグレンだったが、途中で動作を止めクレアに顔を向けた。

「何か持って帰ろうか?」
「いえ…… 下手に触って遺跡が起動しても良くないですからね。なるべく動かさないでおきましょう」
「そうか」

 首を横に振るクレアにグレンはうなずいた。二人は歩き出して部屋を出て行った。通路へと出たグレン達は来た道を戻り石階段を上り地上へと出た。すぐに森に身を隠しジャスミンたちと別れた場所へとやって来た。

「さて……」

 上を向いて地面を蹴って浮かび上がるグレンとクレアだった。木の上でジャスミンとメルダは枝に乗り家の監視を続けていた。ジャスミンは枝に腰かけメルダは幹に手をかけ立って居た。グレンとクレアは彼女達がいる反対側の枝の上に乗った。
 メルダが視線を横に向け笑った。
 
「あら早かったじゃない? どうだった?」
「古代遺跡の部屋に本と絵を見つけました。でも、私達だけじゃ何もわかりませんでした」
「そう…… じゃあキティルを連れていかないとダメね」

 視線を地下階段に向けるメルダだった。続いてグレンがメルダに口を開く。

「そっちはどうだ?」
「ダメね。家の出入りはなし…… さすがに暇すぎて疲れたわ。ふわあああああ」

 ディーアの家に人が出入りすることなく彼女が一人にならずに二人は接触できなかったようだ。監視をするだけで何もできなかったメルダは暇そうに背伸びをしたのだった。

「そうですか…… 昨日一人にしたから今日は動きがないかもですね……」
「どうする?」
「少し早いですが今日は引き上げましょうか。メルダさん。ジャスミンさんいいですか?」

 クレアは体を少し前にだしメルダとジャスミンに確認する。

「そうでござるな」
「うん。しょうがないわね…… 帰りましょう」

 二人はクレアの言葉にうなずいて返事をした。今日の調査を切り上げ四人は帰還することにした。木から下りた四人はダグオンがキャンプを張っていた野原へと戻り、ガエロの怒りの断崖を超えてツリーローダーへと戻ったのだった。
 四人がツリーローダーに戻ると正午を過ぎた辺りだった。

「今…… 昼時よね…… あたしが戻るとよくないわね」
「じゃあ拙者と冒険者ギルドに行くでござるよ。拙者の仕事を少し手伝ってほしいでござる」
「わかったわ。じゃあね。クレア、グレン」

 昼食を取る福音派との鉢合わせを避けるため、メルダはジャスミンに付き合って冒険者ギルドへと向かうのだった。
 グレンとクレアはグレゴリウスが屋台を営業している広場へやって来た。

「うわぁ…… 混んでるな」
「えぇ。みんな福音派の人達です」

 広場の入り口に並ぶフードを被った福音派の男性が列を作って並んでいた。列の横にはルドルフが立っており二人に気づいた。

「グレン……」
「おう。悪いなちょっと通してもらっていいか?」
「あぁ。かまわんぞ」

 ルドルフは体を横にした。二人は列の横を通り過ぎて屋台の前へと移動した。

「いらっしゃいま…… あれ!? グレンさんにクレアさん…… 早いですね」
「あぁ。今日はもう仕事が終わったんだ。忙しいみたいだから俺達は端にいるな」

 キティルが二人に気づいて声をかけた。右手をあげキティルに返事をしたグレンは屋台の裏へとひっこんだ。屋台の裏ではグレゴリウスが洗い場で皿を洗っていた。彼の後ろには皮を向きかけの芋が籠に入ってころがっている。
 
「グレンさん! クレアさん! ちょうど良かった」
「へっ!?」

 洗い場で振り向いて二人が居るのを見てグレゴリウスは嬉しそうに笑った。彼は洗い場から出てグレンに向かって積み上がった皿を指す。

「はい。じゃあグレンさんは洗い物をお願いします。クレアさんは野菜の皮むきをお願いします」
「えっ!? 俺達も手伝うのかよ?」
「当たり前です! 営業中で忙しいんですよ!!」
「「はっはい! やります!」」

 作業を手伝うように言われ驚くグレンを、グレゴリスは眉間にシワを寄せフライ返しを突きつけるように前に向け叱りつけた。グレゴリウスはいつになく気迫が溢れ、グレンとクレアは思わず返事をした。
 鼻息荒く洗い場からグレゴリウスは調理場へと戻るグレゴリスだった。

「なんかすごい迫力だったな…… さすが皇子だ……」
「えぇ」
 
 グレンとクレアは顔を見合せ困惑した表情を浮かべる。屋台の向こうで三人のやり取りを見ていたオリビアが笑った。
 
「はははっ。グレは料理に対しては真面目だからな」
「オッちゃん! 手を止めない!」
「わっわかった」

 フライ返しでオリビアを指し注意するグレゴリスだった。オリビアは慌てて屋台から客席へと向かって行った。グレンとクレアは昼食の混雑が終わるまで屋台の手伝いをするのだった。
 十三時を過ぎると福音派の男性が徐々に少なくなっていった。

「さて…… 全席に料理でましたね」

 屋台から客席を見渡し嬉しそうに笑うグレゴリスだった。客席を埋めた福音派の男性たちに料理が届いているのをグレゴリウスは確認したようだ。
 ちなみにグレゴリウスは背が低く地面に立っただけでは屋台のカウンターから外を覗けない。彼の足元にはカウンターの上に顔を出せるように木製の踏み台が置かれている。

「じゃあちょっと行きましょうか……」

 踏み台から下りたグレゴリウスは、屋台の作業台の下へと体を突っ込んだ。腰を突き出した姿勢でスカートの裾がまくれグレゴリウスの青い下着が覗いている。

「あったあった」

 作業台の下から真新しい白いコックコートとズボンを取り出した。
 彼はエプロンを外して作業場に置くと、コックコートとズボンを持って洗い場の近くへとやってきた。ズボンを
 
「ちょっ?! 何しているんだ?」
「えっ!?」

 グレンは背後で動くグレゴリスの気配を感じて振り向いた。そこにはワンピースの上からズボンを履こうとしているグレゴリスが見えた。

「何って着替えているだけですよ」
「まぁそうだけど…… いきなり近くで着替えるなよ」
「えぇ!? 良いじゃないですか!? グレンさんと僕は男同士ですし…… クレアさんの近くとかだと気まずいですよ」
「そりゃあそうだけど…… おい!」

 話しながらグレゴリスはワンピースを脱ぎ、グレンは慌てて目を逸らした。ズボンを履き上半身は真っ白なシャツ一枚になった、グレゴリスの体は薄っすらと透け、胸にはピンクの小さい丸が浮いていた。

「ちょっと行って来ます」
「えっ!? あぁ」

 グレゴリウスがほほ笑みグレンに手をあげた。コックコートを着て髪をコック帽の中に押し込んだ彼は、作業台に置いたエプロンを締め直し屋台から出て行った。
 ささっと着替えて出て行ったグレゴリウスは呆然と見送るグレンだった。グレンの横にすっとクレアが近づいて来て冷たい目を彼に向けた。

「エッチ! 着替えなんか覗いて」
「なっなんだよ! 勝手にあいつが着替えたんだろ!」

 グレンは出て行ったグレゴリウスを指した叫んだ。グレンの言葉を聞いたクレアは不満げに口を尖らせるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...